ある日の台北日記2023その3(2)萬華散策

呉さんが連れて行ってくれたお店、建物は新しいが、中身は古そうだった。お客がいたが、我々が入っていくと帰っていく。オーナーは気さくな人で良くしゃべる。私が歴史の話を持ち出すと、自分の店の話より、台湾茶の歴史について色々と語りだす。釣られて聞いて行くとどんどん話が広がっていく。と同時に、様々なお茶も出て来る。

萬華から大稲埕へ茶商が移っていった経緯など参考になる。現在萬華には殆ど古い茶荘は残っていない。また台湾茶の現代史についても、これまで私が話を聞いてきた多くの茶業関係者を知っており、その頃の話も沢山出た。こういう話をしているとつい盛り上がってしまい、結局2時間以上ここに居た。

そこからもう一軒カフェに寄る。呉さんの知り合いが月に3日だけオープンするというレアなカフェだ。場所も極めてレトロな建物の1階を使っている。店には常連と思われる人たちがいた。カフェというよりむしろおしゃれなバーだった。お客同士は交流をはじめ、仲良くなっている。実に不思議な空間が演出されている。台湾の若者文化は目を見張るものがある。勿論コーヒーも本格的で、マスターは1杯ずつ丁寧に淹れている。こんな空間は好きかも。

それでも腹が減り、カフェを後にした。外は完全に暗くなる。呉さんと華西街を歩く。一体何年ぶりだろう。観光客が行くところだと敬遠していたが、昨日は蔡総統が客人を案内してやってきたらしい。立ち寄った店は大賑わいだ。日本の総理も高級料亭に入り浸らないで、積極的に街を回るべきかもしれない。

呉さん一押しの炒羊肉と牛脳湯を注文する。こりゃ何とも旨い。ご飯と共にあっという間に搔き込む。1939年創業と書かれているが、日本時代にこんな店があったのだろうか。更に広州街の方に抜け出すと、昔ながらの大道商人の声が響き、屋外屋台が並んでいる。呉さんが子供の頃から食べていたオアジェンを頂き、大満足。余韻に浸りながら夜市を後にする。

5月1日(月)西本願寺と江浙料理

朝ゆっくり起きる。最近少し疲れがたまっている。それでも朝ご飯を求めて出掛けるが、その店は閉まっていた。仕方なく隣の店でハンバーガーを食べた。新聞が置かれていたので、何気なく読む。以前は新聞を読んでいたが、今は手に取ることは殆どない。バドミントンのアジア選手権で台湾の戴選手が山口茜を破って優勝という記事が大きく取り上げられている。同時にベスト4の4人(他は中国と韓国選手)が並ぶ微笑ましい写真もあったが、何と戴さんのウエアだけに国旗がないことがまた大きく反響を呼んでいたようだ。

夕方出かける。バスで西門町へ。何となく西本願寺を見学する。数年前に復興されたこの寺、何だかどんどん立派になっている。見学者も増えているようで関心も高まっているのだろうか。私は大谷光瑞には関心を持っているが、ここより寧ろ高雄に復活した彼の屋敷が見たい。

今晩は黄さんと食事。江浙料理の店に行く。午後5時半でほぼ満員の昔ながら食堂だ。好きな前菜を自分で取り、後は鍋などをつつきながら、皆一杯やっている。華語より台湾語が多く聞こえる、実に懐かしい感じの店だった。料理が旨いのも特徴だろうか。残念ながらこのような店は台北にはそう多く残ってはいない。貴重なので益々客がやってくる。

黄さんには以前茶旅で色々とお世話になった。彼の方はコロナ禍で色々とあったようだが、今も元気で働いているらしい。特に料理などに詳しいので、潮州料理屋はないかと尋ねたが、伝統的な店はもうないだろうという。話しているとどんどん台湾が複雑に思えてくる。この複雑さは容易には理解できず、そこがまた面白い。

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