いつもなら1周して各店の様子などを伺うのだが、今回は最初から李さんの店を目指していき、店が開いていることを確認してホッとする。もうすぐ25年の付き合いになる李さん、あんまり変わらないので驚く。今回は単叢を購入するという仕事があり、どれがいいか選んでもらう。

李さんの実家も鳳凰鎮にあることは知っていたが、今回訪ねて地理が分かっており、理解が深まった。先日会った林一族はやはりあの鎮の有力者だった。李さんの旦那が戻ってきてまた色々と話す。私は潮州料理が好きだというと、湖南料理もいいぞ、という。彼は湖南出身なのだ。因みに深圳にも潮州料理はあるが、美味しい所はあまりないともいう。

なんだが急に腹が減って、引き留める李さん夫婦に別れを告げて外へ出た。だが何を食べたらいいのか分からない。これまで順徳・広州・潮州では、地元の名物を探していたが、深圳名物には残念ながら、全く思いつかない。目の前に牛肉麺の店があったので、まるで名物の呪縛から解き放たれたように、入ってしまった。シンプルな牛肉刀削麺、とっても美味しく感じられる。これからは自らの赴くままに食べて行こう。部屋に戻ってバスタブに浸かり、疲れを癒す。

3月21日(金)深圳散歩
何だかかなり疲れてしまい、元気が出ない。朝食は付いていないので外へ出て何か食べようと思ったが、どうも食欲がない。やはり中国で10日以上の旅は体に堪えるらしい。宿の近くを歩いていると銀行があった。何となく眺めると「広東語、香港人専用」などの文字が見えた。
25年前にここに通い始めた頃は、香港人と香港ドルは歓迎されていたが、その後中国の勢いが増し、香港がどんどん小さくなっていった。またその関係に変化があるのだろうか。そういえば「最近香港の物価が高いので、香港人が週末深圳に大挙して買い物に来る」との話が出ていた。この地域にはある種のバロメーター機能がある。

ATMで人民元を下ろしてみようかと眺めていると係員が「ATMより窓口の方が早いですよ」という。その昔では考えられない言葉だが、今や銀行に来る中国人は本当に少ないと感じる。言われるままに窓口へ行ったら、何と「この銀聯カード、期限が切れています」というではないか。その対処法はと聞くと「カード無し口座にすればよい」だったので、更に驚く。海外でも使うのでカードがいると食い下がると、何とか新しいカードを発行してもらえ、現金も手元に入った。それにしても銀聯カードに期限があったとは。
気を取り直して近所で朝ご飯を探した。飲茶したいなと思ったが、どうも適当なところが無く、次の駅まで歩いてきてしまい、結局地下鉄に乗って深圳博物館まで行ってしまった。ここも初めて来る場所だったが、実に立派で驚く。展示室もかなり充実しており、見ごたえはあった。ただ深圳の歴史、どこまでの規模だったのだろうか。改革開放前はほんの小さな村だったと香港では何度も聞いていたが、本当のところはどうなんだろうか。


地下鉄駅まで戻ったが、もうどうにも腹が減って動けない。地下鉄駅直結の食堂街に迷い込み、香港在住時大好きだった鹽焗雞を食べることにした。この料理は客家の物と聞いているが、本当はどうなんだろうか、と最近はなんにでも疑いの目を向けてしまうのは良くない。まあとにかく腹が減っているので、何を食べても美味しい。ちょっとしょっぱいのはいつものことだ。

宿まで帰ってきたが、疲労はピークに達しており、午後は完全休息となってしまった。まあ仕方がない、よく頑張ったと言っておこう。夕方羅湖口岸前のビルへ入ってみた。その昔はブランドバッグや時計のコピー商品販売所、といった感じだったが、今やきれいな店が並んでおり、雑多な感じはあまりない。香港人も最後にここに寄って夕飯のおかずを買っているのが面白い。
