ナムサン茶旅2016(10)多彩な街 ナムサン

ティボーから1時間半ぐらい行くと、立派な橋が見えてきた。この川を渡るとナムサン地区だという。橋を越えたところに兵士が銃を持って立っている。とても緊張感がある。Tさんによれば、前回来た時には誰もいなかったので、何かあったのかもしれないと。取り敢えずカメラ撮影を控え、様子を伺ってみたが、誰も車を停めるようとする動きはなく、車は山道を登り始めた。

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その後も湾曲する道をクネクネ行くと、所々に兵士の姿が見えたが、大体一人か二人で歩いており、我々に気を止める気配はない。何があったのだろうか。何しろここナムサンは何十年もの間、原則外国人の出入りが禁止されていた場所であり、少数民族と政府の戦闘があり、また少数民族同士の諍いも度々起こっていると聞く。Tさんによれば、昨年から日中の外国人立ち入りが許可なしで認められたということで、今回訪ねることになったのだが、前途多難な様相。尚ナムサンに宿泊するには今も特別の許可が必要。これが後で効いてくる。

因みに後に街で聞いたところによれば、当日の朝、少数民族同士の小競り合いが発生していたようで、その警戒のため、ミャンマー政府軍の兵士が見回りをしていたらしい。ちょうど政権が交代するこの時期は、反政府活動や利権争いなどが起こりやすい状況であり、スーチー政権も少数民族問題、シャン州問題では、前途は多難であることを身をもって感じた。

ナムサンの街

突然街が見えてきた。いや、予兆はあったのかもしれないが、突然に見えたように見えた。細い道の両側に建つ古い町並み。思わず降りて写真を撮りたかったが、Tさんは迷わず、進んでいく。声を掛ける間もなく、車は大きな建物のあたりで停まった。『道が狭いので車はここに駐車して、あとは歩いて行きましょう』と言われて、こっくり頷く。望むところだった。

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ただ歩く方向は今来た道ではなく更に先へ。そちらに更に本格的な街があった。細い道の両側にきれいな建物が並ぶ。100年ぐらいは経っていると思われるものもある。大きな棚を何人もが洗っている。よく見ると豆腐屋さんで、すでに今日の仕事は終わったのかもしれない。豆腐はこの辺の必需品。乾物屋に入って見ると、そこにはお茶が袋に入って置かれていた。店の人は片言の中国語を話した。『これは酸茶だ』という。ちょうど出来立てで、これから出荷するらしい。

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ナムサンといえば、昔は紅茶が有名だったと聞いていたが、ここでも前回訪れたミョーテイ村同様、ラペソーを食べずに乾かした酸茶が作られていたのだ。この辺の事情を聴こうと別の乾物屋に入ると、そこのおじさんが笑顔で椅子を勧めてくれ、お茶まで出してくれた。そのお茶はいわゆる緑茶だった。おじさんが言うには『この辺では季節によって作るお茶が違う。今の時期は作っておいたラペソーを干して作る酸茶、4月頃は緑茶、それが終わると紅茶の季節だ』と説明する。さすが茶処と言われるナムサンだけあり、茶の種類が豊富だ。

おじさんはナムサンの生まれ。父親が雲南省からここにやってきた華人だった。『ナムサンは全部で500戸ぐらいの街だが、その5戸の1戸は華人だろう』という。中国語は子供の頃から習っており、華人はみなある程度はできるようだ。他にはパラウン族など山の民族がおり、そしてインド系の顔をしたムスリムもいる。この山の中がなぜそんなに多彩なのか、とても不思議だ。

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売っているものを見ても中国から沢山の物資が入ってきている。ビールもあれば、お菓子もある。旧正月が近いので正月飾りもある。これがあのムセの国境を通り、ここに来るのだろうか。それとも別に彼らの秘密ルートがあるのだろうか。興味津々だが、これはすぐには分らないだろう。

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おじさんに礼を言って別れ、街を散策した。ここは特に何があるわけでもないが、外国人がほとんど入っていないことが幸いし、何か落ち着きがあり、昔の風情がある。今日は風もさわやかで気持ちがよい。それほど広いわけではないが、道はかなり長細く、端まで歩くとかなりある。少し疲れたのでティミックスを飲みに店に入った。トイレを借りるのが目的だった。

それから一旦車まで戻り、少し離れた場所にある大きな工場へ向かった。ここはプレハブが主の茶工場だったが、かなりの規模を誇っている。1月は茶作りの季節ではなく、門は閉ざされていたが、門番が一応中には入れてくれた。と言っても工場内を見学することはできず、外から眺めるだけだった。何しろこんなに広い敷地内に、誰一人いないのだから、仕方がない。

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工場の名前はロイカーンとなっていたが、貼ってあった広告を見て納得。ここはミャンマーの二大茶業者の1つ、ナガピョンというブランドを持つ企業の工場だったのだ。道理で大きいわけだ。もう一つのメーカーは南シャン州が拠点と聞いているので、ここが北シャン州最大の茶工場かもしれない。

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