トルコの茶畑を訪ねて2012(8)トラブゾン 黒海沿岸の街で

夜のバスターミナルと黒海の朝焼け

ホテルに戻り、ロビーでネットを使う。このホテルも親切で、ゆったりと席に着き、作業に没頭できた。そしてバスターミナルへ向かう。先ずは地下鉄ウルス駅の付近のバス停でターミナル行きのバスを探すが、なかなか見付からない。するとちょうど走り出したバスに乗れ、という声がしたので、慌てて乗り込む。本当にこれでよいのだろうか。

街は暮れなずんでいく。帰宅時間なのか、人がどんどん乗って来て身動きが出来なくなる。バス料金も乗客の手渡しで支払う。昨日行ったバスターミナルだから分かるだろう、と思っていたが、何だか不安になる。そしてとうとう暗くなる。益々どこが何処だか分からない。だが聞くすべもない。ちょうどバスが停まり、少し大きな荷物を持った人が「ここでいいのか」と聞きながら降りていった。ここに違いない、と咄嗟の判断でバスを降りる。向こうの方に大きな建物が見えた。やはりここで降りて正解だった。てっきりバスターミナルに入って停まると思っていたので、危なかった。

ターミナルは広いが、時間を潰すところが無い。レストランでWifiが繋がるか聞くと、どこもないという。階上にネットカフェがあると聞き、上がって行ったが、何故か今は繋がっていないとの答え。諦めてじっと待つ。

8時半発のバスだが、8時を過ぎても現れない。イスタンブールの悪夢が蘇ったが、ここは始発。少し気分が楽だった。直前になりバスが入線。2階建てだ。乗客は定員の半分ぐらい。ゆったりとスタートした。そしてまた規則正しく3時間ごとにサービスエリアで休息。私も慣れて来たので、スープとパンで夕食を取るなど余裕が出てきた。チャイは欠かさずに飲んだ。

バスはアンカラから一路黒海を目指して進んだ。そして3回目の休憩の後、サムソンのバスターミナルだろうか、そこから海岸線に出た。バスの窓から見事な朝焼けが見えた。あー、これを見るために私はこのバスに乗ったんだな、と直感した。

4. トラブゾン1   9月27日(木)   ホテルでトラブル

黒海沿岸の大きな都市、トラブゾンに到着した。実に11時間のバスの旅。気分は爽快だった。バスターミナルから街へは無料のミニバスで運んでくれるが、その出発は非常にゆっくり。慣れた人は公共バスなどで行ってしまう。本日私には全く予定が無いので、ゆっくりと待つ。

ミニバスで10分ぐらい行くと、降りろと言われて降りる。そこは旧市街地、石畳が良い。今回突然お世話になることになったトラブゾン在住日本人Kさんが予約してくれたホテルも直ぐに見つかった。

いつもの私の旅からするとかなり立派なホテル。夜行バスで疲れているので朝8時過ぎだがチェックインを頼むと「部屋は満室。12時にまた来い」とすげなく言われる。一室ぐらい空いていないのか、と聞いてみたが、フォロントの女性の態度は変わらなかった。まあ正規のチェックイン時間ではないので諦める。

そして11時半頃再度ホテルへ行き、チェックインする。ところがKさんが予約してくれたはずのシービューの部屋は満室だと言われる。先程のすげない対応もあり、私もここは譲らずに、「予約を受けたのに部屋が無いとは何だ」、と少し語気を荒げた。夜行バスでかなり疲れていたのだろう。するとフロントの若い女性も突然声を荒げて「私は嘘つきではない。あなたに嘘つき呼ばわりされる覚えはない」と涙目になり言い出す。これにはこちらがビックリ。私も中国に居るような感じでクレームしてしまったようだが、それにしてもホテルでこんな対応は初めて見た。

彼女と話しても埒が明かないと思い、Kさんから聞いていた旅行会社の社長に電話して事情を説明。彼は分かったとだけ言い、電話を切る。すると奥からマネージャーらしき女性が出て来て、丁寧な態度で「本当に申し訳ないが、今日チェックアウト予定のお客が延泊してしまった。ついては1泊だけ、別の部屋に泊まってもらえまいか」と聞いてきた。このような態度に出られると、対応しない訳にはいかないが、何となく釈然としなので、「部屋が違うのに料金が同じなのは納得できない」と言ってみると、「部屋代は旅行社と相談するが、何らかの割引をする」というので、こちらも収まる。

部屋は隣のビルの壁が見えるだけのビューだったが、非常に疲れていたので、シャワーを浴び、直ぐに寝入る。起きた時には既に夜で、ビューはどうでもよくなっていた。やはり相当に疲れていたようだ。

因みに翌日海がきれいに見えるシービュールームへ移動。景色も雰囲気も全然違った。3日後にチェックアウトする時には約束通り、1泊目を30%オフにしてくれた。これもKさんのお蔭だ。

トラブゾン散策

午前中仕方なく荷物を預けて、街へ出た。先ずは腹ごしらえで、近くのレストランで朝ごはん。店頭に並んだおかずから、鶏の煮込みとさやいんげんをチョイス。パンは食べ放題。店からハミだした路上のテーブルで食べていると、気分はヨーロピアン。味もまずまずで、眠気も吹っ飛ぶ。

そして歩き出す。私がトラブゾンという街の存在を知ったのは、沢木耕太郎の深夜特急。彼はトルコでアンカラ、イスタンブールを訪ねているが、もう一つ、ここトラブゾンにも寄っている。40年前のトラブゾンは、田舎の港町と描かれており、坂が多いとあった。実際に歩いてみると確かに黒海から直ぐに丘が連なり、平地は極めて少ない。その坂道を海と平行に歩いて行く。

40分ほど、歩き続けると、丘の上にアヤソフィアが見えてきた。イスタンブールでもその存在感が抜群のアヤソフィア。ここトラブゾンでは、相当小型であるが、やはり光を放っていた。基本的には教会であったが、今は博物館という名前で公開されている。建物の中には随所に宗教壁画が残されており、往時を偲ばせる。

トラブゾンは紀元前にギリシャ人の南下で作られた街。その後東ローマ帝国時代にキリスト教が入り、このアヤソフィアが教会として作られた。オスマントルコ時代にはモスクとして使われ、20世紀に入り、博物館となる。

外にはカフェがあり、観光客がチャイを飲んでいる。私もチャイを注文し、座る。実にゆったりとした時間が流れている。いや、一瞬時が止まったかのような錯覚を起こす。午前中の暖かな日差しが心地よい。チャイクル、というテーブルクロスに書かれた文字が、いよいよ茶畑が近づいてきていることを告げている。

帰りもまた歩く。相当に疲れていたが、モスクあり、サッカー場あり、公園ありで、楽しく歩く。この街は古い建物が多いが、比較的整備されており、きれいに見える。黒海床山に挟まれた狭い敷地に住む人々、皆が陽気に見えた。




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