神の島久高を再訪して(8)伊良部 素潜りの刺身

5月21日(水)

びらふやでダラダラ

何だか妙にぐっすり寝た。よく考えてみるとこの大部屋、男は私だけで後は若い女性ばかり。ベッドにカーテンなどはあるが、ちょっと不思議な空間であった。8時前に起き出したが、誰も起きて来ない。島のムード、そのままである。

 

居間に行くとキムニーがいた。彼ともりおさんは個室を使っていた。私は個室があることも知らず、言われるがままに寝ていたわけだ。キムニーは既に朝の散歩を終えていた。そして何と炊飯器を持参しており、持ち込んだ食料を冷蔵庫などに入れて、自分で朝ごはんを作り、食べていた。長逗留する旅人は自炊するのだそうだ。それにしても、荷物を別送で宮古へ送り、レンタカーを借りて運ぶ、バックパッカーなどとはだいぶん意味合いが違う。因みにレンタカー代は20日間で3万円程度らしい。バカ安だ。

 

宿には頼めば朝ごはんが付いてくるが、私は頼んでいなかった。昨晩夕飯の後にたこ焼きまで食べたので、朝食を抜くことにしたのだ。他のメンバーも徐々に起き出し、居間で話し込む。そして別棟にあるシャワーを浴びる。トイレとシャワールームは本当に清潔だ。ここは日本なんだな、と感じる瞬間だ。

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そこへ昨日のランチを一緒に食べたOさんがやってきた。久高で一緒だったHさんも今日は仕事が休みということで姿を見せた。Oさんは自分で焼いたパンを持ってきてくれ、これが朝飯になった。自分でパンが作れる、というのは良いなと思う。もちもちした食感、パンらしいパンだった。そしてOさんは島を離れた。Hさんも用事があると帰って行った。私は静かに取り残された。

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オムそば

昼になったが、居間から動けなくなっていた。何とも表現できないいい風が吹き抜けていくのだ。お茶を飲み、置いてある本に目を通す。ハンモックに寝そべり、ゆらゆらする。ここにはアルバイトの若い女の子がおり、同じようにダラダラしている。自分の子供がダラダラしていると怒りたくなるのだが、この雰囲気で、この環境でダラダラしていると、いいなと思ってしまうのが不思議だ。WIFIも繋がるので、ついついここにいる。

 

雨も降っていなかったので、ついに単独で散歩に出た。行先のあてもない。周囲はサトウキビ畑が広がる。森山良子の歌などを思い出す。5分も行かないうちに村の万屋という感じの店があった。ふと見ると『焼きそば、たこ焼き』などとも書かれていた。昨日もりおさんが買ってきたたこ焼きはここの物だったんだ、と分かる。

 

オジサンが二人、話をしていたので、話し掛けてみる。一人は店のオジサン、島で生まれたが長い間尼崎辺りにいたという。だいぶん歳を重ねたので、また島に戻り、関西仕込みの食べ物を作っているという。『オムそばでも食べるか』というのでお願いした。もう一人のオジサンも関西からの移住組。年金が少ないので、都市での生活はきついという。『ここでは家賃も1万円、食費もあまりかからない。ただ何もないから若い内に住むのは無理だな』という。サトウキビ畑の仕事は1日1万円になるが、炎天下で相当につらいらしい。

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オムそばを持ち帰り、居間で食べる。実に本格的で濃厚、美味い。一人で味わっていると、今日の宿泊者がボチボチやってくる。中にオーストラリア人の旦那と日本人奥さんというカップルがいた。キムニーと意気投合して海へ出掛けるというのでついて行ってみた。場所は渡口の浜、昨日も行ったが、相変わらず人はいない。彼らは本当に驚いていた。オーストラリア人は『メルボルンの田舎で育ったが、こんな美しいビーチに人が誰もない、なんてことはオーストラリアでもないよ』と感嘆の声を上げていた。

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それから牧山展望台へ向かう。ここは島で一番高い所、全体が見渡せる。途中、工事現場があった。伊良部と宮古の島を繋ぐ大橋が出来つつある。来年には完成し、フェリーは廃止になる予定だとか。島の人は『何年も前から繋がると言っているが、本当かね』などと言っている。ただ見る限りかなりできてきているので開通は間違いないだろう。この橋が繋がると伊良部の様相は一変するかもしれない。今の状態の伊良部を見ることが出来たのも幸せかも知れない。

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展望台からは確かに島が一望できた。展望台に行く途中、熱帯の花が咲いていた。草も色々な種類があった。道に迷うと、そこにはお墓があったりもした。道を教えてくれたお巡りさんもいた。どうしてこんなところにお巡りさんがいたのか分からない。何か調査がったのだろうか?

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素潜りの魚をさばく

宿に戻ると疲れから仮眠した。ちょっと寝るともう夕飯だった。昨日と同様にみんなで食べたが、食べるメンバーが変わっているのが面白い。今日来た人もいるし、外に食べに行った人もいた。自然に人が集う、この雰囲気がたまらない。今の日本は『組織化』が進み過ぎ、組織に属するとやたらに規則があり、連帯感を出さないといけないムードがある。これはいい面もあるが、とても危険な感じがする時がある。アジアではそこまで厳しい感じがない。『ゆるい』ムードが良い、それで日本人、特に若者はアジアへやって来る。伊良部も同じだろう。リピーターが多い理由も良く分かる。

 

気になっていたのが、来ると言っていたHさんが姿を見せなかったこと。何か用事でもできたんだろうと思っていると夜9時頃になってやってきた。彼は素潜りで魚を捕る技術を持っているのだが、今日は私の為に、魚を捕りに行ってくれていた。久しぶりだったらしく、つい時間を忘れて潜っていたという。そしてこの時間になってしまったと頭を掻いた。手には鯛が握られていた。

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彼は調理人でもある。早々自分で獲った魚を自分でさばき始める。この辺が豪快で、とても良い。自分のことは自分でやる、自然と向き合って、そこから恵みを得る。Hさんのアジア、いや世界での経験、は確実に生きている。伊良部に来て1年ちょっととのことだが、実に似合っていた。近所からもらったわかめと一緒に新鮮な鯛を頂いた。当たり前だが、身が締まっており、美味しかった。

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