ある日のバンコック日記2020(23)まだあった老舗茶荘

3月19日(木)再会

状況はどんどん厳しくなり、遂にバンコックもロックダウンに入ることとなった。私はあまり難しいことを考えずに、日本に帰る道を選択し、航空券の手配を行った。既にLCCなどの運休が発表され、1週間先の東京行は料金が跳ね上がっていたが、その前であれば、片道4万円ぐらいでタイ航空に乗れるので、それを選んだ。エアチャイナから片道の返金があれば、ある程度カバーできると諦めた訳だ。

事態はそれほどに切迫している。知り合いのMさんは、逆にバンコック籠城を決めたという。彼は住むところもあるし、仕事にも支障がないので、一つの選択だなと思う。確かにこんな稀有な光景を見られることはないだろう。寧ろいまだにオリンピックを開催すると言っている東京の方がどれだけ危険なことか。それでも家族がいるから私の場合は帰るのが原則だろう。

そんな中、2月初めにチェンマイで再会したOさんが、その後チェンマイを離れ、放浪していることが分かった。彼も沖縄へ向かおうとしたが、既に直行便は閉ざされていた。ちょうどバンコックに来たというので、会いに行ってみる。

場所はプロンポーンの蕎麦屋。こんな時期に開いているのかと思ったが、席の間隔が開けられた店に、お客はそれなりに居た。この蕎麦屋の特徴は、1玉でも3玉でも料金が同じということらしい。折角なので、3玉頼んでしまった。更にはかつ丼をセットにするのだから、胃袋もたまらない。バンコックの和食の競争激化は相当なものだ。

お茶会のMさんも加わって、発酵談議に花が咲く。私はお茶の発酵のみに関係があるのだが、お二人は味噌など発酵食品を作っている。東京に戻ったら、改めて小泉武夫の『発酵』という本を読み返したいと思った。タイのミエンももう一度見たいがいつになることやら。

Mさんはご主人が日本へ行っており、既にPCR検査の陰性証明が得られなければ、バンコックに戻れない状況だという。これからは往来が難しくなり、当分の間、全てがストップする。だが日本では、全てを止めずに解決を図ろうとしていた。普通に考えれば無理な話だが、日本を信じて帰るしかない。

夕方先ほどOさんに教えてもらったデリバリーアプリをインストールして、注文する実験をした。タイ語中心のアプリは無理なので、英語アプリを入れ、馴染みのマクドナルド商品を選んでみた。ビックリしたのは、店舗に行くよりかなり安く、しかもデリバリー料金も安い。これは日本ではとてもできないサービスだ。

ところが注文しても、商品が運ばれてこない。スマホで位置関係を確認するとすぐ近くまで来ており、電話が掛かってきたが、当然タイ語なので応対が出来ずにお互い困ってしまった。仕方なくフロントに頼んで連絡してもらい。何とか受け取ることができた。アプリ上の住所が間違っていたらしいが、そこはタイ語だったので私には確認ができなかったわけだ。まあ、このサービスが使えるのであれば、多少の籠城戦は戦えるでは、と思った。

3月20日(金)老舗訪問

実は2週間ほど前に、フラフラと王宮近くを歩いていると、以前も訪ねた例の王有記茶荘の北側に、もう一つ老舗茶荘があることに気が付いた。そこは店の前にドリンクスタンドがあり、暑かったので冷たい飲み物を頼んで、店内で飲んでいた。よく見るとこの店の名が王瑞珍であったので、思わず反応してしまった。というのは、台北とマレーシアのイポーでこの名前の茶荘を見たことがあり、恐らくは親戚であろうと考えられた。そうであれば、ちょっと面白い。

だが店を預かる女性は華人の顔はしているが、華語は全く分からないと頭を振り、通訳してもらっても自らの茶荘の歴史は分からないという。ただ王姓であるから福建の安渓出身であることは分かった。彼女の父親は健在だというので、後日改めてということで、今日の日を迎えた。

日程のアレンジ及び通訳はHさんにお願いして出掛けた。お店に着くと、80歳を越えた王天慶さんご夫妻が迎えてくれた。やはり王さんの祖父は福建安渓西坪堯陽の出身で、タイに渡ってきた人物。台北の王瑞珍も親族が経営していることが分かった。ただマレーシアの店については、親戚はいると思うが、茶荘をやっているとは聞いていないとのこと。

この店は娘さんに任せて、王さんは普段、息子とともに川向うのクディチンに住んでおり、茶工場もそこにあるという。中国やタイ北部から茶葉を持ってきて、この工場で加工して売っているようだ。クディチンと言えば、アユタヤから移住した福建人が多く住んだ場所。何となくこれまでのバンコック歴史散歩が鮮やかになっていく印象がある。今度機会があれば、茶工場にもお邪魔しよう。

王さんの話の中で興味深かったのが、この近くにまだ数軒、老舗茶荘が残っているはずだという証言。言われたとおり歩いて行くと、かなり遠かったが、MRTサナムチャイ駅近くの花市場付近に辿り着く。この辺りは先日も散歩した場所だが、茶荘があったという記憶は全くない。

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