香港・深圳茶旅2023(4)恐ろしい中国入境の顛末

ちょうど係員がいたので、無言でスマホを差し出すと、彼も無言でパスポートを見ながら打ち込んでくれた。これは助かった。周囲にはどうしてよいか分からない外国人や高齢者が多数立ち止まっている。私はそこをすり抜け、取得したQRコードをかざして、機械ゲートを通り抜けた。

その先に行くと、あれ。何と入国審査ゲートに出てしまった。驚いて係員に聞くと『ああ、ここにはビザオフィスはないよ。外国人が良く間違えるんだ』と笑いながら言う。この瞬間、私の立ち位置は大いにぐらつく。どうするんだ、と聞くと、『戻るんだよ、香港に』と一言。そこから今来た道を懸命に戻る。途中係員に誰何されても、気にせずに戻る。確かに福田の地下鉄という表示が見える。

ついに香港出国審査の手前まで来た。ここで係員に誘導され、事務所へ入る。そこには数人の同じ境遇の人々がいた。ただその多くは香港人で、回郷証が失効していたために入国を拒否されていた。もう一人日本人の若者がいたが、彼は普通話をまくしたてていたので、深圳に住む駐在員だろうか。

20分ほど待って解放されたが、私はどうしたらよいのだろうか。とにかく一度ここを離れ、羅湖を目指そうか。係員に聞くと『落馬洲-皇崗の間にビザオフィスはあるよ』と教えてくれた。そこへ行く方法はバスかタクシーらしい。取り敢えず駅から地上へ降りてタクシーを探した。かなりの雨が降っており、濡れながらタクシー乗り場へ行くと、緑のタクシーは『ここからは落馬洲も羅湖にも行けないよ』と素っ気ない。

ならばとMTRの駅へ行こうとしたが、なぜかそこに辿り着けない。工事中らしいが、今電車に乗ってきたのに、なぜだろうか。もう一度イミグレに戻ると、係員に文句を言っている香港人がいた。彼に連れられ、駅を目指した。だがどの表示に従っても駅へ行けない。香港人の彼は怒りだした。『香港はいつの間にこんなに劣化したんだ』と。

結局工事中、通行止めの印を無視して、階段を歩いて上がると、そこに駅があった。ここは中国ではなく、香港だろう、と叫びたい気持ちになったが致し方ない。香港も中国になったのだ。何とも言えない気持ちを抱えて、上水で乗り換え、羅湖で降りた。ここは慣れ親しんだ辺境なので、ゆるゆる進む。

そして再度健康チェックがやってきた。私は先ほど既に入力済みだったが、それがどこに保存されているのか、わからなかった。どうしようかと悩んでいたが、ちょうど端っこにデスクがあったので、そこへ進み事情を話し、スクショしたQRを提示したら、そのまま通してくれた。こちらではスマホ操作が出来ない人向けに『人工道』が作られており、何とか抜けることが出来るようだった。それにしても今も中国はコロナ禍なのだろうか。

次にビザ申請に向かう。何時間も立って並ぶことを想定していたが、ここは一つの部屋になっており、外国人が座って待っていた。目測で十数人。まずは外の機械で自分の写真を撮る。順番の番号札を機械から取り、そして申請書を書いて待つ。その間窓口に全く動きはない。ただ番号は表示されているので、いつかは順番が来るだろう。

10分ほど待つと番号を表示され、申請は難なく受け取られた。その後ヨーロッパ人の一団が、ビザを受け取り、費用支払いに呼ばれて人が減る。聞いてみると彼らは午前中から2‐3時間待っていたらしい。午後着いた私の後に来る人はほぼいない。狙い目は午後だったか。落馬洲での出来事も無駄ではなかった。

1時間ほど待ってようやく支払いに呼ばれた。私の前にフランス人が並び、ビザカードを出したが、何故か反応せずにはねられた。彼は人民元の現金を持っていたが、ここでは微信支払、支付宝しか役には立たない。何と彼は係官から『香港へ戻れ』と言われ、すごすご帰っていく。恐ろしい世界だ。

私はかなり緊張したが、スマホに支付宝が入っているので安心していた。ところが昨日トミーが直してくれたシムカードがやはり作動しない。おまけに辺境のため、Wi-Fiが弱く、機能しない。結構焦ったが、代わりにビザカードを差し出すと、何とか反応を見せ、無事ビザ取得となった。このビザは深圳のみ5日間有効の特別ビザで必要は168元だった。

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