ある日の台北日記2018その3(13)選挙結果、そして日台交流

11月26日(月)
静岡旅行団との夕食

24日夜に厦門から戻って来た。この日は統一地方選挙があり、その開票状況などを見て過ごす。予想以上の民進党敗北、これをどう考えればよいのだろうか。4年前の選挙で中国との関係をノーと言い、蔡英文政権を生み出した台湾民衆をすごいと思い、台湾老人からは『武士は食わねど高楊枝』という言葉まで聞いた台湾だったが、やはり経済悪化は堪えているのだろうだろう。

 

特に中南部の落ち込みは埔里にいる時もかなり感じていた。若者に仕事がない。しかしこの選挙結果はそういうことだけを反映しているのだろうか。蔡総統の失政?中国の選挙妨害(金銭圧力)?台湾の選挙は決して一般人の投票だけで動いている訳ではなく、むしろ何か得体のしれないものに左右されているような気がしてならない。

 

そんなことを考えていても、福建で食べ過ぎたせいか余り腹も減らないので、近所で刀削牛肉麺を食べる。私は牛肉麺が大好きだが、つるつるした丸い麺より、ごわごわした、モチモチ感のある麺が好きだ。刀削麺は北京にいる頃、時々食べたが、台北でも食べられるのは嬉しい。さすが中国料理の宝庫、台北。いや、東京にも沢山あるかな。

 

トミーが台中からやって来た。彼に台中の選挙結果を聞いても『台中の人間も意外に感じている』という。林佳龍市長は、この4年間、色々な政策を積み上げてきたので、市民には一定の評価があったはずだが、思わぬ大敗。国民党候補がよいと思う人が多いとも思われない中、なぜそんな結果が出たのかと、首を傾げる。

 

今晩トミーから呼び出しがあったのは、静岡県日台友好協会の旅行団が来ているからだった。その中に、私もお訪ねしたことがある、和紅茶製造の第一人者、Mさん夫妻が入っており、トミーはどうしても会いたいということで、特別に夕食に入れてもらっていたのだった。

 

トミーは静岡を訪ねる度にM家を訪れ、紅茶談義をしている。今回は私がにわか通訳になって、この二人の会話を聞いていたのだが、内容的には茶の品種、その栽培法、製造法など、かなり専門的な話が多く、とても私では通訳し切れなかった。ただ二人の間では、言葉が通じなくても何となく分かり合える部分が多く、そこがとても面白かった。

 

M夫人は、いつもFBなどで発信をしておられ、私のFBもよく見ていてくれている。突然現れた私に驚き、そして再会を喜んでくれた。一緒に旅に来た人々も、台湾や中国にご縁のある高齢者の方が多く、90歳を越えた湾生の女性が来られていたのには驚いた。実はこの旅行のスケジュールを見ると、台中、台南などを回る強行軍。明日の朝静岡に帰るというので、さぞやお疲れだったろうが、M夫妻は元気にトミーと話しをしてくれた。

 

外交部の関係者も臨席しており、記念品の交換も行われ、日台の草の根交流を大切にしていた。トミーは旅行団全員に自らの茶をお土産として渡していた。まるでM夫妻の台湾の息子と言う感じで、大いに喜ばれていた。こういう交流もあるのだな、と再認識した。

 

11月27日(火)
講演会を聞きに行く

選挙結果について引き続きモヤモヤしていたところ、本日ジャーナリストの野島さんの講演があるというので、聞きに行くことにした。これは旧知のTさんの所属するロータリー主催であり、絶好の機会だった。野島さんとは5年ぐらい前、未だ彼が朝日新聞に在籍しており、台北支局から戻ったばかりの頃、私が主催していた寺子屋チャイナで、台湾情勢のお話をしてもらった、というご縁があった。その後フリーになり、どうやってあれだけの場所、人を取材して、どうやって資料を集め、あんなに沢山の文章を短期間に発信できるのだろうか、と思うような、スーパーマンになっていた。

 

会場は市内中心部で、かなり立派な設備がある。バーなどとしても使える場所らしい。エレベーターを上がると、既に多くの日本人、そして台湾人が詰めかけており、会場入りする野島さんに、チラッと挨拶するのがやっとだった。今や台湾でも超有名人である。会場には、お知り合いも数人きていた。

 

話の内容は、相当細かい選挙分析、それも日本のマスコミが伝えるような中台関係を基本としている物ではなく、台湾内部の問題、蔡政権の問題などを地道な取材の成果から検証しており、豊富なエピソードを交えて語られる内容は興味深かった。選挙終了後僅か3日目だが、以前より相当なシミュレーションを行い、選挙速報を流している感じだった。

 

講演終了後に挨拶しようと思ったが、既に大勢の聴衆に取り巻かれており、出版本のサインに忙しいようだったので、黙って失礼してきた。私はお茶の歴史を学んでいるが、野島さんほどには力を入れて取り組んでいるようには思えない。所詮遊びだと言いながらも、もう少し何とかするべきだ、と自分に言い聞かせながら帰った。

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