ある日の埔里日記2018その2(13)大禹嶺経由で

4月10日(火)
大禹嶺経由で

昨晩はかなり涼しかった。いや寒かったと言ってよい。ここは標高2300m前後、4月とは言えかなり冷え込むのだ。ジャグジーに入り、ゆったり、などとはとても考えられず、早々にベッドに潜り込む。ベッドには電気毛布が敷かれており、暖かかったのだ。昼間との寒暖の差、これもよいお茶を作り出す要因だろう。

 

朝食のために食堂に向かうと、昨日は開いていなかった売店が開いていた。朝夕の短時間だけ営業しており、茶葉を買うことができた。と言っても、皆が欲しがる缶入りの高価な茶葉は見本のみ。ティバッグが買えるだけだ。この売店の店員もトミーの知り合いだという。何とも狭い世界だ。

 

高原のさわやかな朝。ご飯は食堂でビュッフェ。場長たちもお客と一緒に食べている。私はお粥を頂く。今や福壽山農場はちょっとした高級リゾート地。60年前の開拓農場ではない。何だか私には場違いかな、とも思ってしまう。場長に挨拶してチェックアウト。早朝の心地よい農場を後にした。

 

トミー達は天池に行ったことがないというので、まずは登って行ってみる。途中昨日も見た茶畑があったので、もう一度写真を撮る。夕方と朝では少し違ってみる。ここには鉄観音種も植わっていると聞いたので、探してみるも、どれだかわからない。他の武夷種もあるらしい。

 

天池は蒋介石が好み、滞在した場所。今も小さな池があり、そこに休息所が建っている。ただ特に面白みはない。4年前は雨に濡れていたが、今日は天気だけは良い。その近くには天池の茶畑が見られた。そう広くはない畑が斜面にある。今は福壽、天池など、その地名で茶葉が売られている。ここは福壽より若干標高が低いらしい。

 

ついでに華崗にも行ってみる。トミーはジョニーと仲がよいが、華崗の工場には行ったことがなかったらしい。私は過去2回訪れており、道案内できると思っていたが、既に記憶はあいまいで道に迷ってしまう。最後はジョニーに電話して、何とか辿り着くも、この時期茶作りは行われておらず、従業員は誰もおらず、中に入ることは出来なかった。ただこの付近、茶畑はどんどんなくなり、高原野菜が中心になっているのは何を意味しているのだろうか。

 

いよいよ山を下ることになった。とは言ってもまだ午前中。どこかに寄ろうかとの話になり、取り敢えず途中にある大禹嶺付近を散策することにした。車で約1時間、90kなどという表示が見え、ここが大禹嶺の入り口だと分かる。正直に言うと、大禹嶺とか梨山とか、それは一体どこからどこまでを指すのか、その定義を知らない。茶業関係者でもはっきり言える人は多くはないらしい。

 

この辺には民家もなく、車も殆ど走っておらず、バスも殆ど来ない。昔訪ねたことがある105kは、既に茶樹が伐採され、茶の生産は行われていない。この辺が大禹嶺、梨山一帯で最も早く茶樹が植えられた場所であり、歴史の観点からは重要なところなのだが、今や見る影もない。

 

他の場所もほぼ同じ状況らしい。これはこの付近の土地がいわゆる国有地であり、茶農家への土地リースを停止したことによるというが、土地を貸さないからといって、茶樹を伐採しなければならない理由はよくわからない。土砂崩れとの関連なのか、それともやはり噂されているような、何らかの利権絡みなのだろうか。そうは言っても、茶のマーケットでは今でも大禹嶺茶が売られているのも又怪現象だ。

 

このまま昨日来た道を埔里に向けて帰っていく。所々で道路工事が行われている。4年前、私も道路陥没を経験している。今日もまたいい天気だ。こんな気候が続くなら、この辺に住みたいぐらいだが、車を運転しない私にとっては全く食べ物が得られない環境でもある。ランチを取りたかった我々だが、食事をする場所も見付けられず、若者は腹を空かせていた。

 

結局清境農場まで戻って、ようやく昼飯にありつく。以前は旅行センターがあった場所に、なぜか紙の博物館が出来ていた。たしかここは日月潭にもあったはずと思っていると、日月潭を閉めてこちらに移転したらしい。紙の汽車などが置かれており、子供が喜んでいる。奥のレストトランも子供向けに出来ており、男4人にはかなり違和感がある。

 

ドリンクのコップは勿論、食器などの他、椅子も紙で出来ていた。ここで紙のプレートランチを食べる。何となくお子様ランチを思い出し、懐かしく食べる。決して安くはないので、週末の家族連れを狙った戦略なのだろう。日月潭よりこちらの方が観光客は多いのだろうか。

 

夕方ようやく埔里に戻った。何しろ遠かった。こんな大変な山道を運転して連れて行ってくれたトミーにはただただ感謝しかない。今回は高山茶の歴史について、重要な情報を手に入れることができ、また現状についても少し理解できたのは有り難い。後はどこへ行けばよいのだろうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です