ある日の埔里日記2018その2(12)福壽山農場へ

4月9日(月)
古老を訪ねる

翌日はトミーが福壽山農場へ連れて行ってくれるというので、埔里に迎えに来てもらった。福壽山へは埔里から上って行くので通り道だった。ただ山に入る前に行きたいところがあったので、寄り道してもらった。図書館の陳さんからの情報で、『埔里に95歳の老人がおり、日本時代に日本人経営の茶園で働いていたらしい』というものだった。これは興味深いが、老人は台湾語しか話さない可能性があるので、台湾人に同行してもらった訳だ。

 

陳さんも住所は分からないというので、簡単な地図を描いてもらい、それを頼りに行ってみる。そこと思われる家で聞いてみると『それは隣のお爺さんだろう』と案内してくれた。聞いていた苗字とは違っていたが、その方は家のソファーに座っており、突然訪れた珍客にも『どうぞ』と言って招き入れてくれた。

 

お爺さんは足が悪いようだったが、非常に元気だった。そして流ちょうな日本語を話した。今でも岩波文庫を読んでいるというから驚きだ。お爺さんは日本統治時代に確かに持木茶園で働いていたという。そして九州の宮崎に研修にも行ったというからすごい。だがその研修が生かされることはなく、戦争に突入し、台湾で兵隊に行ったという。そう、紅茶作りが始まるか始まらないかで、魚池地区はこのような状況に見舞われたのだ。お爺さんには次回是非もっと詳しい話を聞きたいと思う。

 

福壽山へ
埔里を離れ、車は昨日も走った霧社への道を進む。あの滝の横を通り、眉渓も通り過ぎ、霧社の上、清境農場で停まる。今日は実にいい天気で気持ちがよい。ちょうど昼時となり、この辺でランチを食べる。この上になると食べる所もなくなるらしい。この辺は台湾のスイスとも言われる場所、ちょっとおしゃれな雰囲気のホテルやレストランが多い。

 

更に登っていくと、本当に素晴らしい景色が広がっていく。とても台湾とは思えない。昆陽という標高3070mの地点には車が沢山停まり、皆がその風景を楽しんでいた。何だかあっという間に3000m越えになっている。高山とは本当に高いところなんだ、今ではいい道があるから簡単に来られるが、昔は大変だったろうな。

 

更にこの付近の最高地点、武陵でもまた停まる。標高3275mとの表示が見える。ここまでは公共バスもあるらしい。自転車でここまで登ってきて、記念写真を撮っている外国人もいる。さすがに風が強い。ここにはなんと日本統治時代の太魯閣戦役に関する看板があった。原住民討伐の司令部がこの近くに作られたらしい。5代総督佐久間左馬太が埔里に2度も来た理由との関連、日本の植民地政策、もっと勉強する必要がありそうだ。

 

今度は少しずつ下っていく。約1時間後、車はようやく梨山に入る。数年前、ここまでバスで登ってきて、梨山賓館を見た。終点にも拘らず、更に先の福壽山までバスに乗せてもらったことを思い出す。このバスが着いたのが福壽山農場だった。あの時は小雨模様で非常に涼しく、携帯の電波が届かなくて焦った。今日はいい天気、そしてここに宿泊するので気持ちはとても楽だ。

 

福壽山農場の敷地は広い。母屋?の建物でチェックインするが、部屋は離れのようになっている建物にあり、何とも優雅。シングルルームなどはないとのことで、何と一人なのにスイートルームに入れてもらった。如何にも高山のリゾートと言った感じで、バスルームにはジャクジーまであった。こんな良い部屋に泊まれるのもお茶のご縁だ。しばしお休み。ゆったりとリゾートライフを満喫。

 

その後車で茶畑に行ってみる。農場の周辺には茶畑は見付からず、リンゴの木がたくさん植えられていた。そこより下にもなさそうだったので、上に登っていくと、農場の製茶工場があり、更に登ってようやく茶畑を発見した。防霜ファンが目立つ。茶畑は山の斜面に作られており、そんなに広いとは思えない。品種は何だろうか。車はほとんど通らない。

 

もう夕方なので引き返し、農場内を歩いて回る。池があり、木々が生い茂る。散歩するには悪くない。この農場とタイ北部の交流の碑がある。ここにもタイから戻った国民党兵士が配置されたのだろう。農場の事務所がある建物の横には、世界中のリンゴの木が集められており、1つの木に接ぎ木され、まとめられているのが凄い。半数は日本の品種かな、リンゴ王、40種類以上あった。梨王というのもある。ここは茶農場というよりは、フルーツ農園のようである。

 

夕飯は農場の巫場長に招かれ、他のお客さんと共にテーブルを囲み、美味しい名物料理を堪能した。さすが農場だ。食後は場長の部屋に伺い、場長自ら焙煎した貴重な福壽山農場の茶を淹れてもらい、ゆっくりと味わう。同時にこの農場の60年の歴史も教えてもらい、勉強になった。流通量の少ないここのお茶、本当に希少らしい。かなり遅くまでお茶を飲み、話が弾んだ。

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