NHKテレビで中国語コラム『アジアで中国語を使ってみた』2013年7月号第4回『マニラ』

第4回『マニラ』

フィリピンのマニラへ行くと言うと友人が「あそこは中国語、ほとんど通じないよ」と教えてくれました。あれ、フィリピンも他の東南アジア同様華人がおり、経済的にはかなりの貢献をしているはずなのに。現地の華人事情を探ってみました。

フィリピンへの中国人の渡来は15 世紀頃に始まり、その後のスペイン、アメリカの支配下でも流入が続きました。華人は貿易などに大きな役割を果たし、現在では大手財閥の半数以上は華人系の経営だと言われています。また歴代大統領の多くも華人で、その影響力は相当なものがあり、ある意味フィリピンを支えている存在とも言えます。

ただ、地理的な理由からでしょうか、ほとんどが福建系で占められており、商売でも家庭でも福建語を話しているよで、中国系の顔立ちの人が多い割には私が耳慣れている中国語はあまり使われていません。またフィリピンでは英語、タガログ語などが話されており、かなり同化している華人の若者は中国語まで手が回らないようです。しかし、マニラに住む華人は「中国語ができる人はそこそこいるよ」と言うのです。

マニラ湾にほど近い場所にある海鮮市場。エビやカニ、魚などを自分で買い、横のレストランに持って行って好みの味で調理してもらう、香港などでおなじみのスタイルの店がありました。ここには大陸や台湾などからの観光客が大勢来ており、かなりにぎやかで中国語も飛び交っていました。中国語を使う観光客が増えれば、中国語を使う地元の人も増えてくるというのは経済的な必然でしょうか。

マニラのチャイナタウン、ビノンドに行くと、漢字の看板が目につきます。そして中国人が好きな宝石類などがたくさん売られています。何軒か華人が集中しているマニラのチャイナタウン回りましたが、売り子さんで中国語ができる人はほとんどいませんでした。しかし、オーナーの何人かには、ちゃんと中国語が通じました。

ある店の40 代の男性のオーナーは、「20 年ぐらい前に中国に留学したよ」、またある店の50 歳前後の女性のオーナーは「私は台湾へ1 年行ったわ」と言っていました。中国の改革開放政策が軌道に乗るまでは台湾へ、その後は大陸へ留学に行った人も多かったようです。もちろんフィリピンで華人学
校へ行き、学んだ人もいました。ビノンドの教会の中には中国語での礼拝の時間を定めている所もあります。カトリックの多いマニラで中国語礼拝を聞く、なども得難い体験かもしれませんね。

スペイン人がフィリピン統治の根拠地として作った城塞都市、イントラムロス。現在でも世界遺産に登録されている教会などがありますが、そのそばにある「菲華歴史博物館」では、華人のたどってきた道が説明されていますので、観光の
ついでに立ち寄ってみてはいかがでしょう。マニラの場合、中国語が使える機会は限られますが、話し相手の歴史を知っていることは相手を尊重することになり、相手からも好感をもたれ、会話が大いに盛り上がります。なお、他のアジア
も同様ですが、くれぐれも周囲の安全を確保した上で、旅行をお楽しみいただければと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です