NHKテレビで中国語コラム『アジアで中国語を使ってみた』2013年6月号第3回『シンガポール』

第3回『シンガポール』

便利でクリーンなイメージのある南国、シンガポール。東京23 区ほどの面積に500 万人強が暮らしており、人口の約75%は中国系で公用語にも英語と共に中国語が採用されています。最近はカジノも作られるなど、観光業にも一層力を入れており、日本人観光客も多く訪れる国ですね。

まずはチャンギ国際空港のインフォメーションデスクで市内への行き方を中国系の女性職員に中国語で聞いてみたのですが、何と返ってきた答えは英語でした。でも彼女は筆者の中国語を完全に聞き取っており、的確な回答でした。中国でも時々外国人に対しては英語を使おうとする人がいますが、そんな風にも見えませんでした。

市内へ向かう列車の中で、若いカップルの話に耳を傾けると、一方が中国語を使い、もう一方は英語と中国語が半々などという会話に出会います。シンガポールでは常に複数の言語を使っているため、その場の状況と相手に合わせて言語を使い分けているという人もいます。例えば、オフィスで交わすビジネスの会話は英語でも、一度ランチの話になればそこで言語が中国語に切り替わる、我々から見ると実に不思議な、そしてその高い語学能力を羨ましく思います。

シンガポールは約75%が中国系と書きましたが、福建系、広東系、海南系、客家など実はさまざまな人々が混在しています。ですから、家庭で、また同じ地域の出身者同士ならその母語を使いますが、例えば福建系と広東系の人が話す場合は、共通言語として中国語を使っています。この切り替えがまた実に見事なのです。

最近は中国からの新たな移住者も非常に多くなってきています。彼らにとってシンガポールは、物価や不動産が高くても、何よりも中国語が普通に通じる国として、便利だと言っていました。中国人観光客も増加しており、中国語を聞く機会が増えています。ただ中国人と同じようにアラブ系、インド系、マレー系も増えており、シンガポールはますます多言語国家になっているようにも見えました。

チャイナタウンも相当に変貌を遂げていました。昔の少しさびれたような雰囲気は全くなく、今では一大観光地となっています。もちろんここでは、普通に中国語が話され、観光客慣れもしていますので、お土産を購入する際など、皆さんが日頃習得した中国語を使う絶好の機会かと思います。またプチホテルなどもたくさんありますので、ここに泊まり、付近のフードコートで中国各地の料理を味わうのも一興ですね。

シンガポールに滞在して思うこと、それはこの国の国民が多様化しており、言語的には国民全体の共通言語が英語、華人の共通言語が中国語、となっていることでした。ここは人種のるつぼであり、その活力が経済発展を生み出していることをひしひしと実感しています。

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