シベリア鉄道で茶旅する2016(17)夜中に時刻が変わる国

また列車でクラスノヤルスクまで

午後1時、列車はほぼ定刻にホームに入ってきた。これがシベリア鉄道本線か。これまでのモンゴルルートはある意味で支線の位置づけであろうから、ここからが本番なのである。今回は4人部屋、コンパートメントだ。クーペと言っていた。もう一人は来ないので3人で使えるから、今朝よりはかなり快適ではある。だが、何しろやることはない。S氏からまた資料を借りて読み始めた。万里茶路、というよりは、帝国主義、資本主義のすさまじさが何となく伝わってくる。お茶は完全な戦略物資であり、金儲けの最大の機会だった。

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清末には陸路だけではなく、ロシアは海路でも茶葉を運ぼうとしている。しかも中国が混乱したこともあり、インドやスリランカの安い茶葉をロシアに持ち込もうとするのだがから、なんとも壮大な海路だった。私もこの旅が終わったら、次は海のルートを、コロンボやカルカッタから黒海のオデッサや極東のニコライエフスクの旅を敢行したい、そんな気持ちになっていた。列車は着実に進んではいるが、まるでそれを感じさせないほど、車窓に変化がない。

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充電は通路でできた。ロシア人もスマホを使うから、常に誰かが充電しているが三等車に比べれば十分に余裕はある。私もスマホでもいじっていないとやっていられないとばかりに充電を始めた。S氏のシムカードはすでに使えなくなったという。これは何を意味するのか、使い過ぎでお金が無くなったのだろうか。メッセージが来ているがすべてロシア語で解読不能だ。いずれにしても列車の中にいる限り、どうすることもできない。

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4時間ぐらい乗っていると、お茶が飲みたくなる。車掌のところへ行き、チャイと叫ぶとティバッグとカップをくれる。35㍔。このカップがロシア鉄道特製で、なかなか格好がよい。お茶自体はかなり安い紅茶だったが、のどを潤すには十分だった。このカップを一度確保すると下車するまで使えるので、それ以降は自分の茶を飲むことができた。タラタラお茶をすすっていると、突然部屋にお掃除がやってくる。ホンのお気持ち程度の掃除だが、確かにこれは重要かもしれない。中国ならモップもったおばさんは常にやっているような気もするが。

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何となく大きな川を渡る。これがロシア三大大河の1つ、レナ川なのだろうか。バイカル湖から流れ出す、世界で10番目に長い河。中学の地理で習っただけだが、何となくそんな気がした。そういえばレーニンという名称は『レナ川の人』という意味だと聞いたことがある。なぜそんな名前を自らに付けたのだろうか。完全に凍結しており、水が流れているようには見えなかった。茶葉を運ぶ馬ぞりはこの凍結した河を越えて行ったのだろうか。

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夕方、どこかの駅に着いた。皆が一斉にホームにおり、ある人はタバコを吸い、ある人はホームを走っていた。運動不足解消だろうか。天気が良いのは良いが、雪が解けてかなり滑りやすい。因みにシベリア鉄道車内では、禁酒禁煙だ。私のようにどちらも嗜まない者にとってはどうでもよいことだが、タバコを吸う人にとっては切実だろう。S氏も車両の連結部分で辛うじて吸っているが、その隙間風の寒さは相当に堪えるようだ。酒もいつの頃からか禁止となったらしい。車内でやることがないとつい飲み過ぎてしまい、色々とトラブルが起こるのだろうとは容易に想像された。

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駅の売店で、ピロシキのようなものを買い込む。これが今日の夕飯なのだ。シベリア鉄道は食事にも困る。カップ麺を食べるか、このような売店の食べ物を食べるか。選択肢は殆どない。1-2食ならそれでも良いが、数日乗っている場合、どうするのだろうか。Nさんは隣のロシア人と仲良くなっている。車内に戻ってきた彼は懐にビールを忍ばせていた。『ロシア人が売店の店員に目配せしたら、ちゃんと酒が出てきた』というのだ。蛇の道は蛇?すでに何人かのロシア人が車内でかなり酔っぱらっている光景が目に入っている。

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それからシベリアの大地を走っているうちに、外も暗くなった。S氏とNさんはコンパートメントのドアを閉め、ちびちびやりながら、時間をつぶす。私はやることもなく、だらだらしている。兎に角何も考えずに前に進むのみ、という感覚は十分に身についてきた。夜8時過ぎに駅に着いたが、ちょっと外へ出ただけですぐに引っ込んだ。一晩寝れば街に着くんだ、と言い聞かせている自分がいる。早々に布団をかぶって寝る。ミャンマーのように揺れる訳ではないので、寝るのにさほど不自由はない。

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3月14日(月)

夜中に何度か起きた。朝早く列車は下車すべきクラスノヤルスクに着くのだから、何となく緊張している。時計を見るが、今が何時なのかはよくわからない。スマホでは自動的に時間帯の設定がされており、タイムゾーンが変われば、時計も動く仕組みではあったが、クラスノヤルスクとイルクーツクの時差は1時間。実際どこで時間が1時間ズレるのか、皆目わからなかった。しかも列車の時刻は全てがモスクワタイム。全くロシアの時間は困ったものだ。朝何時か分らない中、再び16時間の列車旅を終えて、クラスノヤルスク駅に着いたときはまだ暗かった。

1 thought on “シベリア鉄道で茶旅する2016(17)夜中に時刻が変わる国

  1. シベリア鉄道の旅と言うと、停車駅の少ない直行急行便しか頭にありませんが、この様に途中下車して鈍行乗り継ぎの旅もあるのですね。同一方向へ各便を合わせて一日何便くらい走っているのでしょうか?

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