茶の源流を訪ねるベトナム茶旅2015(9)釜炒りと包丁談義

その中にちょっと目を引く大きめの葉っぱがあった。『これはアッサミカかもしれない』とY先生が言う。この喬木でちょっと先が曲がったこの葉っぱ、お茶の世界では大葉種と呼ばれるものに近い。えー、ここにも雲南のような大葉種があったんだ、それならタリエンシスを探すより、更にお茶に近いじゃないか、などと思っていると『でもこれはちょっと前に人の手で植えられたもの』と言われてがっかり。自然界に人間は色々なものを持ち込んでおり、それが混ざり合って、林や森が形成されている。それは決して自然な状態ではなく、別の変化をもたらしているということだろう。

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取り敢えず今日の作業を終了して、ホテルに戻ることにした。田舎の道沿いには、ちょっと場違いな近代的な建物が建っていた。よく見ると『幼稚園』と表示されているが、中には誰もいなかった。遊具なども日本と変わらないようだ。きっとどこかの国のNGOあたりが支援で建てたのだろう。いや、小学校を建てたという話はよく聞くが幼稚園まではどうだろうか。モン族の子供たちがここへ通ってくるのだろうか。何だかとても興味をそそられる。

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包丁じいさん訪問

ホテルに戻る。今度はヤオ族を探し、情報を求めることになる。運転手が情報を持ち込み、ホテルのすぐ裏にヤオ族が住んでいると分かり、訪問する。行ってみると、長老は留守だというので、ちょっと待っていると、オートバイに乗ったおじさんが帰ってきた。家は高床式で1階が空いたスペースになっているので、そこに椅子を並べて座り、話を聞くことになった。

 

ところが、この人は長老というほどの歳でもなく、またヤオ族の伝統や、この付近のヤオの歴史については、あまり知らないということが分かる。勿論先祖がお茶を持ってきたかどうかも全く知らなかった。しかしよく見るとこの人、昨日Sさんが市場の帰りに眺めていた包丁を売っていた、何とあのおじさんだったのだ。これには何ともご縁を感じてしまう。

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更にこの家の裏に80歳代の長老が住んでいると教えてくれたが、もう陽が沈もうとしていた。さすがに今日は遅いということで、明日の朝訪問することになった。Sさんはガイドを通訳にして、おじさんと鉈や包丁談義をしている。朝は茶作り、夕方は包丁談義、何という幅の広い人なんだ、と感心する。

 

美酒(茶)に酔う

今晩は揚げ春巻きが出てきた。しかしこれだけ同じ場所で3度3度の食事をすることなどあり得ないだろう。今日はタリエンシスの大輪の花を発見したということで、Sさんが持ち込んだ日本酒で皆さんは乾杯した。これまでは地元のビールを飲んでいたので、日本酒は美味そうだった。

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そしてこのホテルの自家製酒に手を出すかどうか迷っていた。ここでは、隣の部屋で酒が作られている。密造酒?まあ、この田舎なら許されることだろう。しかしこのホテルでは酒を入れる容器がないのか、水を入れるのに使っているペットボトルに入れていたので、水と間違えて注いでしまったこともある。かなり強烈な酒の匂いがして驚いた。何とも紛らわしい。

 

部屋に帰ると、Sさんが『お茶飲みましょう』という。私がバッグを漁っていると、何と福建の大紅袍が飛び出してきた。何だか無償に飲みたくなり、淹れてもらう。Uさんも誘って飲み始める。正直ベトナムの渋いや青臭い緑茶を飲んできたので、この濃厚な香り、深い味わいに圧倒される。大紅袍って、こんなに美味かったのか、中国茶は奥が深いなと堪能した。

 

10月29日(木)

朝から釜炒り

翌朝も早く起きる。いつもの朝食を済ませると、SさんとUさんの姿が見えなくなる。厨房の方に探しに行くと、2人とも既に厨房内で何かを始めていた。Sさんは昨日干していた茶葉を使い、中華鍋を探し、釜炒りをしようとしている。Uさんも手伝って、茶葉を鍋に投入。慣れた手つきで釜炒りが始まる。

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よく見ると従業員の女性たちは朝からインスタント麺を食べている。我々もパンと卵焼きばかりでなく、フォーぐらい食べたい、と後でガイドに訴え出る。実はガイドと運転手も麺を食べていた。何で我々だけ、いつも同じ食事なんだ。あまりにも工夫がない。これはアレンジした旅行会社の怠慢だろう。

 

そんな雰囲気を察したのか、従業員の女性がUさんに『麺食べる?』と聞いてきてくれた。美味そうな麺が湯気を立てていた。SさんとUさんは言葉も通じていないのに、本当にこの厨房に馴染んでいた。Uさんには是非『アジアの厨房から』というテーマで、各地の宿の厨房に入り込んでレポートしてもらいたいと思う。

 

Sさんは釜炒りを終了。それからどうするのか、と見ていると、何と横にあった電子レンジに茶葉を突っ込み、乾燥を行っている。この手法、確か昔、入間に行った時、小学校の授業でやっていると聞いた記憶がある。このベトナムの山奥で、電子レンジを使う、何とも柔軟な発想だ。

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