九州で茶旅2014(5)佐賀 嬉野の無農薬茶作り

9月24日(水)

3.嬉野

無農薬のお茶作り

翌朝はいい目覚めだった。外は曇りだが、暑くなくてよい。ホテルで簡単な朝食が付いていると言われたが、パンと卵、コーヒー本当に簡単だった。でもそれで十分、最近、特に九州では明らかな食べ過ぎだ。このホテル、実に面白いのが部屋に入るための電子カードに『日時、部屋代と名前』が記載され、『領収致しました』と書かれている。このカードは領収書か?チェックアウト時には回収されたが。

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Oさんが佐賀から今日も迎えに来てくれた。有難い。今日は佐賀の嬉野へ行く。私はOさんの佐賀市内のお店へも寄りたいと思っていたが、彼は茶畑、まっしぐら。当方の希望を全力で叶えようとしてくれた。凄い。八女から嬉野へ。車で1時間ほど行く。

 

本日はOさんと紅茶でお付き合いのある太田さん(http://www.sagaryo.co.jp/)のお宅を訪ねた。太田さんは30年に渡って、無農薬で紅茶を作っている、嬉野でも稀な存在。自身が農薬散布により何度か農薬中毒になった体験から、『必要最小限の肥料、そして無農薬』で茶作りをしているという。

 

嬉野と言えば釜炒り茶、というイメージのあった私だが、『嬉野で釜炒りは殆ど作られていない』という衝撃の事実を知った。嬉野は伝統的に『蒸製玉緑茶(グリ茶)』を生産している。水色もきれいな山吹色で、味わいがあった。太田さんは釜炒りも復活させた。『最近は釜炒りが欲しいという人が出てきた』というが生産量は非常に少ない。

 

太田さんは既に70歳、昔話を聞くと『昭和35年頃、アフガンやモロッコに茶を輸出した』とか、『モンゴルやソ連とも貿易した』など、まるで歴史の生き証人。嬉野茶の歴史をよく聞いておきたいと思った。町会議員として嬉野発展の為にも活躍した。今でも色々なまとめ役になっているようだ。息子の裕介さんが既に跡を継いでおり、後は日本の茶産業が発展してくれれば良い。

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大チャノキ

嬉野の大チャノキを見学する。推定樹齢350年、6株あるとのことだが、かなりの大きさだ。葉っぱは今も生き生きしている。嬉野茶の歴史を見ると、1504年に明の陶工、紅令民が嬉野の不動山に唐釜を持ち込み、釜炒り製茶法が伝わった。1657年に吉村新兵衛が縦釜で蒸す製法を編み出し、嬉野茶の茶祖となる。この大チャノキはその頃に植えられた物らしい。

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尚吉村新兵衛は法に触れ、一度は切腹と決まったが、藩主に助けられ、茶栽培にまい進したという。藩主が逝去した1657年に新兵衛も殉死を遂げている。この辺りが茶とどのような関わりになるのか、興味深いがよく分からない。ある人は『吉村新兵衛は永谷宗円とならぶ、日本茶の偉人だ』と書いていたが、新兵衛を知る日本人は殆どいない。

 

嬉野を車で走っていると実にきれいな棚田が目に入ってくる。日本にもこんな素晴らしい風景がまだあるんだな、としみじみ思う。よく見ると水田の合間に茶樹も見える。お茶だけでは生計が立てられない現実も少し垣間見える。日本の茶業はどうなるんだろうか、この美しい棚田でそんなことを思う必要ないのだが。

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茶業研修施設に立ち寄る。大きな釜が3つあった。聞けば『最近は釜炒り茶の作り方が分からない人が多く、経験のあるお年寄りが時々ここで伝授している』のだとか。本当に釜炒りは伝わっていないのだろう。横に工場があり、製茶機械が置かれていた。あまり使われることもないと言い、きれいなまま置かれていた。

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最後に太田さんの茶畑を見に行った。周囲がきれいに整備される中、雑草が生え、蜘蛛の巣が張っていた。太田さんは『人手が足りない、恥ずかしい』と言っていたが、これは私がインドのダージリンの大自然の茶園で見た光景とほぼ同じだった。無農薬で茶を作ることはものすごい労力がいる。こうして作られたお茶の価値が正当に評価されるとよいのだが。山の上から見ると実にいい霧が出ていた。嬉野が茶栽培に適している、と示しているようだった。

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温泉と湯豆腐

Oさんが予約してくれた嬉野温泉のビジネスホテルに入る。何だか懐かしいような部屋、きっと和室を洋室に改造したのだろう。部屋にも風呂は付いているが、ここまで来たら温泉へ。シーボルトの湯、という公共施設へ向かう。途中シーボルトの足湯、というのもあり、観光客に便宜を図っていた。

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このシーボルトの湯は入浴料400円。だがなかなかいい湯だった。地元の人も観光客も一緒に風呂に浸かっている。最近の強行軍で疲れた体を休めるには絶好の湯だった。2階には休息場があり、そこには嬉野茶に関する資料も置かれていて参考になった。またこの場所が以前は立派な旅館だったことを示す写真も掛けられており、歴史的建造物の保存の仕方にも色々あると分かる。

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大浦お慶、確かNHKの龍馬伝では余貴美子が演じていた女商人。幕末の志士を助けた軍資金は、何と嬉野茶をはじめとする九州の日本茶を海外に輸出して得た利益だった。大隈重信も佐賀の出だ。最後は騙されて財産を失うお慶、でもこんな豪快な人生、有だな。

 

湯を出て、目の前にある店で湯豆腐を食べる、という予定だったが、何と休業中。まあその辺を歩いていればどこかにあるだろうと思っていたが、甘かった。夜になると意外と寂しい温泉地帯。大きな旅館にはいる訳にもいかず、ちょうどあった居酒屋に入ってしまった。

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そこに湯豆腐があった。土鍋にアツアツの湯豆腐がやって来た。一口食べて、こりゃ美味い。隣にいたおばさんが『どうだ、美味いだろう』という。誰が食べても美味いだろう、これは。450円。そしてメニューを見ると中華カツ丼という面白そうな物があり、注文してみた。名前の通り、中華丼の餡をカツに掛けているだけ。でもこれがなかなかイケル。嬉野侮るなかれ。

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帰りにスーパーに入り、飲み物を買う。ちらっと見ると、何だか物価がとても安い。ペット飲料は70円ぐらいで売っている。東京のスーパーなら80円台ではないか。日本の田舎、物価が安くて美味いなら、住まない手はない、とちょっと思う。

 

9月25日(木)

翌朝は天気が良かった。ホテルの窓からは広々とした景色が見える。朝ごはんはホテルに頼んでいたが、宿泊客が殆どいないのか、8時に行ったら、もう私だけが取り残されていた。焼き魚、納豆、生卵、ご飯を沢山食べるように仕組まれた朝食、また腹が出てしまう。

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