トルコの茶畑を訪ねて2012(10)トラブゾン 魚の美味い街

6. トラブゾン2  夕飯

トラブゾンの街に帰って来た。今日は本当に充実した茶旅が出来た一日であり、満足した。これも全てご縁であり、Kさんのお蔭であった。Kさんはトルコに来てわずか11か月だというが、既に相当のトルコ語を話しており、驚く。「周囲に日本人が一人もいない環境がそうさせた」とのことだが、それにしても凄い。

ホテル近くにKさん行きつけの店がある。地元の人が行く小さな店だが、そういう所が美味い。夕方5時過ぎだというのに客が続々と入ってくる。入り口には生の魚が並べられ、客は魚と野菜を選ぶようになっているが、常連が多いようで、一声かけて席に着く。

Kさんが「ここには美味いスープがあるが、すぐに売り切れる」というので注文すると幸いあった。レモンを絞り、香菜に似た物を入れるせいか、非常にさっぱりした味で、飲み易く、そして何故か後に惹く。魚ベースだったろうか。実は後日もう一度このスープが飲みたくてやって来たが、その時は6時前でも売り切れていた。

魚は豪快に焼かれ、どーんと出てくる。ここトラブゾンが元々漁港であり、魚を食べることに慣れていることが分かる。塩味で新鮮な魚を焼いただけ、と言えるが、その鮮度からしても美味である。玉ねぎとししとうを混ぜて食べると良い。食べ放題のパンを入れると直ぐに腹が一杯になる。

食後は街を散策。夕暮れ時、多くの人々が歩いている。きれいなお店も増えているようだ。一軒のカフェに入り、トルココーヒーを頼んでみた。ドロッとしており、かなり濃い味で、決して飲み易いとは言えない。それでも若者などはコーヒーを飲んでいる者もいる。一つのファッションだろうか。

Kさんと私、年齢も現在の境遇も違うが、お互いに日本から飛び出した人間として、様々な話で盛り上がる。それにしてもKさん、定年退職後、未知の国トルコへやって来ただけでもすごいが、そこでその生活をエンジョイしていることが羨ましい。一つの理想的な形ではないだろうか。

9月29日(土)  スメラ修道院

翌朝はKさんが是非行った方が良いと言って、わざわざツアーを予約してくれたスメラ修道院へ行く。トラブゾンには観光地が殆どなく、皆必ず行く場所と言われたが、一体どんなところだろうか。

10時前に指定された旅行社前に行って見たが、バスは見当たらない。数人外国人がいたので、同様に待っていると、時間ちょうどにミニバスがやって来て、観光客を収容する。半数は欧米系、後は中東系とアジア系、アジア系と言っても何人か分からない。日本人ぽい人は一人乗っているだけ。料金はスメラ往復で20リラ。これはKさんの予約で5リラの割引があったらしい。感謝。

バスはマチカという街を通り過ぎ、かなり深い山に入る。急な上り坂をグルグルと上り、トラブゾンから小1時間ほどで修道院が見えた。このスメラ修道院、断崖絶壁にはへばり付く建物、という表現が妥当なほど、切り立った山の斜面に建っている。一体誰が何のためにこんな建物を建てたのだろうか。高所恐怖症の私には信じられない。

1時間の自由行動で、各自思い思い、坂を上り、修道院へのアプローチを開始する。観光客、特に女性が多いので、写真を撮りながらゆるゆると歩いて行く。15分ほど歩くと、修道院の前に到着。だがここからさらに厳しい階段を登らなければならない。4世紀の建てられたとも言われるこの建物、作業には途方もない時間が掛かっただろう。

中はいくつもの洞窟があるが、今は殆ど開放されていない。カッパドキアと同じような宗教壁画が描かれており、その後の破壊の爪痕を見ることができる。修行の場として作られたという修道院だが、こんな山の中に敢えて作る必要があったのか、やはりこれは迫害を逃れた人々がいたということだろうか。どうも歴史はよく分かっていないらしい。非常に興味深いのだが。

建物を一通り見学すると、後は待ち合わせ場所である下の駐車場まで降りていく。この下りの道は本当に林に囲まれ、静寂の中を歩く。目を瞑って木々の声を聴こうとしても何も反応しない。それ程に深い山の道である。まさに思い思いに降りていく。時折写真を撮ってくれと依頼すされるほかは、一人の空間に浸る。

駐車場に降りつくと軽い疲労を覚える。小川のせせらぎの中、木の椅子に腰掛ける。向こうの男性がIpadを触っており、日本人だと分かり声を掛ける。彼は1年半ほど、バックパッカー生活を送っており、アジアのみならず広範囲に旅を続けている。会社を辞め、また社会の戻るための道を探しているのだろうか。彼からスリランカの情報を得たが、これはのちに役に立った。生の情報は非常に貴重であり、また重要だ。

帰りが元来た道を淡々と戻る。午後2時ごろトラブゾンに着いたが、空腹感もなく、そのままホテルに帰って昼寝する。夜はベッドから這い出し、昨日の食堂で別の魚を食べ、満足する。既にトルコに入って10日、疲れが出て来ていた。

9月30日(日)   トラブゾン空港

翌日は午後の便でイスタンブールへ戻ることになっていた。疲れも出ていたので、休息を前提に街をぶらつく。トルコの街の良いところはどんなところでも街頭にテーブルがでており、誰かがチャイを飲んでいること。私もつられて腰を下ろし、チャイを頼む。この雰囲気は実によい。チャイを飲んでいると皆が笑顔で話し掛けてくる。

空港へはタクシーで行けるが、敢えてミニバスに乗ってみる。ホテルからほど近い広場の裏道にバス乗り場があった。特に空港行きのバスは無く、昨日行ったリゼの方面へ向かうバスに乗り込む。トラブゾンも土地が狭いため、黒海沿いに住居が広がっている。

昨日空港までアイファンさんを送っており、空港の風景も分かっているので、安心して乗っていたが、乗客はどんどん降りていき、なかなか辿り着かないので、ちょっと不安になった頃、ようやく海沿いの空港が見えた。バスは道路沿いに停まり、後は歩いて道を渡り、空港へ入る。空港の端から端まで歩くと結構な広さであることが分かる。この地で飛行機に乗る人々は殆どが車で来るのだろう。

ターミナルは新しく、きれいで広々しているが乗客の姿は殆どない。バスの時間が読めない為相当早く出て来たので、時間が余る。ラウンジに入れてもらうが、誰一人おらず、スタッフもまだ営業前といったムード。国内線のラウンジであり、パンやお菓子程度しかないが、それで昼ごはんとする。

何とこのラウンジに人が集まり始めたのは、出発時刻の30分前。普通ならラウンジに寄らず搭乗口へ行く時間だが。出発時刻の20分前になると突然、滑走路に面したドアを開け、乗客が歩き出した。ラウンジから直接飛行機に向かうシステムだった。タラップを上り機内へ。トルコでも最近いくつかのLCCが出来ているようで、色々な飛行機が駐機しているのが面白い。

機内での1時間ちょっとはあっという間だった。何しろこれまでのバスの旅は5-11時間、飛行機が如何に速いかを実感したが、同時に味気なさも残った。私はトルコのバスの旅に何故か強く魅了されていた。




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