遥かハバロフスクに茶旅する2019(4)ハバロフスクを一人彷徨う

3月16日(土)
一人散策

本日は昨日ポボロツキーさんからもらったハバロフスク案内を参照しながら、一人で街を歩いてみることにした。相変わらず表示される気温は低いのだが、なぜかそれほど寒く感じない。メインストリートに出て、昨日聞いた話を復習しながら、もう一度いくつかの建物を眺めてみる。

 

それから音楽堂の横にあるハバロフスク極東美術館を訪れた。なぜここに来たのかというと、ポボロツキーさんから『ここには土産に良いものが売っているので、一度覗いてみたら』と言われたからではなく、街中で見たポスターがあまりに衝撃だったからだ。実はここでは今『日本の春画展』が開催されていたのだ。

 

確か一昨年東京で初めて春画展が開かれ、大いに話題になったばかりだ。『春画はエロでタブーから、江戸浮世絵の芸術作品へ』と評価が変わったように思う。それがこの極東の街で堂々とポスターが張られ、展示されているというのだから、まさに興味本位で見に行ってみたわけだ。

 

美術館も抑留者が建てたらしい。立派な作りだ。常設展はパスして、春画展だけのチケットを買う。250ルーブルは安いのか高いのか。3階まですごく優雅な階段を上って行く。その一室に春画がズラッと展示されていた。かなり露骨な描写も含まれるので、一応18歳未満は入室禁止だが、参観者は殆どいなかった。江戸だけではなく、明治期の春画もある。生で春画を見たのは初めて、ちょっとビックリだ。

 

中国物と思われるものも2-3点あったが、日本の春画のレベルは高いと感じられた。ロシア人夫婦が興味津々で、絵をじっと見ている。どういう感想か聞きたいところだが、言葉は通じそうにない。1階に戻り、英語の出来る係員の女性に聞いてみたら、『春画は非常に素晴らしい美術品だと皆が言っている』とほめていたが、あれはお世辞だろうか。この春画展のパンフレットはないかと聞くと、『パンフは作っていない。カメラでの撮影は禁止だが、スマホ撮影はOKだから、もう一度3階に上がって撮って来れば』と言われ、何と再度見学する。何故スマホはOKなのか、その理由は分からない。

 

それから昨日は行かなかった先の道に進んでみる。冒険だな。今は少なくなったという木造の家が見えた。可愛らしい教会もあった。スマホ地図が使えるので、取り敢えずハバロフスク駅に行って見ようと歩き出すが、何と道を間違えてとんでもない方へ行ってしまっていた。お陰で、一般市民が住んでいる団地などはよく見え、郊外にはそれなりに木造住宅もあることは分かったが、相当に疲れた。

 

何とか歩いて鉄道駅まで辿り着いた。駅はそれほど大きくはないが、それなりに列車は走っている。私は3年前のシベリア鉄道のトラウマ?でロシアの列車に乗りたいとは思わない。でもなんとなく懐かしいので、駅中のカフェで昼食を取りながら、その頃のことを思い出す。

 

駅前の大きな道を進んでいくと見覚えのあるところへ出た。何と昨日来た市場だった。もう一度歩いてみると、店をやっている人間の中に中国人が何人もおり、店員、お客とも中国人なのか、中国語が時々聞こえてきた。今は港も閉まっているが、夏になれば多くの中国観光客が買い物に来るのだろうか。

 

更に屋内に入ると茶を売っている店があったが、そこではベトナムコーヒーも一緒に売られていた。彼はベトナム人でその昔にロシアへやってきて商売しているという。確かに社会主義繋がりであり、90年代の混乱期にここに留学などしていて残ったのではないだろうか。愛想はとてもいい。パン売り場のおばさんが何度も『このパンは美味しいよ』と言っているようで、中身も分からずつい買ってしまった。これも一つの交流か。

 

またメインストリートに戻り、その両側の建物の写真を撮り続けた。1つ1つに謂れはあるのだが、正直覚えきれない。中にはハバロフスク初の女学校跡もあった。120年の歴史、ここへは日本人女子も通ったのだろうか。100年前はホテルだったという建物も何軒かある。メインストリートは高くなった場所にあり、両側に下る道を歩きたかったが、疲れがピークで明日にした。

 

一度ホテルで休み、夕方外へ出た。すぐ近くのハンバーガー屋に入ってみる。今日は土曜日だから、家族連れ、若者たちが大勢食べていて、盛況だった。料金的には日本のマックと同じようなものだが、例えばポテトにつけるケチャップは有料で、3つの種類から選択するなど、ちょっとした違いがあった。

 

そのまま日が暮れようとしているアムール川へ出てみる。陽はゆっくりと落ちていき、なかなか沈まない。家族連れが凍った川面で走り回り、おじさんは穴をあけて釣りをしている。何とものどかな、絵画に出てくるような風景だった。可徳乾三もこの夕陽をここで見ただろうか。思わずライトアップがきれいな街中に戻り、またカメラを向け続ける。

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