初めてのマニラをスイスイ歩く(3)フィリピ―ノに間違えられ

18年の時を隔てて

夜は国際機関にお勤めのFさんと再会。実は今回のマニラ訪問は直接的には昨年彼女とバンコックで劇的に再会したのがきっかけだったとも言える。バンコックでお知り合いのA師主催のヨーガ合宿に参加した際、マニラから参加の日本人女性が目を惹いた。彼女の名前に何となく見覚えがあった。実際会って元同業者であることを確認すると同時に「Fさん、18年前にこんな取引しましたね」と口をついて出てきた。そう、18年前同じ取引を一緒にした人だったのだ。その後彼女は海外の大学院にも行き、転職もして、今では国際機関で高い地位に着いている。その激務を癒すために、ヨーガをやっているという。国内にいるより余程条件の良い職場のようだ。   

だが彼女の口から出てくるのは、マニラやフィリピンの悪口が多い。昔の私も中国の悪口ばかり言っていたのを思い出す。現地で当事者になれば目の前の事態に対処せざるを得ず、ついついいい話にはならないもの。マニラには楽しみが無い、文化が無いという言葉が象徴的だった。それでも定年までマニラで働くと言っていたから、口で言うほど嫌いではないのかもしれない。

彼女が予約してくれた店はマカティで有名なフィリピン料理屋、ミルキウエー(http://cafe.milkywayrestaurant.com/)。カジュアルなカフェのように見えたのだが、それなりの料金を取る立派なお店でちょっと窮屈。マネージャーの女性がテキパキと我々の要望により、メニューを決めていく。

店は満員で、ここでもマニラの消費の高さを実感する。このビルの下には同じグループの経営による日本料理屋もあった。リトル東京とは違い、フィリピン人の富裕層がやって来るのかもしれない。日本の外食店にもビジネスチャンスは大いにありそうだが、どうなんだろうか。ともかくFさんとの再会で日本女性の活躍とそのストレスを見た。

4月6日(土)  モール巡り

翌日は疲れていたので、バスの旅をしてみることにした。昨日聞いたグリーンヒルというモールが面白そうだったので向かう。またホテルのフロントで行き方を聞き、ジプニーに乗る。「エクスポートバンク」の前で降りてSMメガモール行きのバスに乗れ、とのことだったので、従う。だが、ジプニーを降りる場所も分からない。運転手に聞くと「ここだ」というので、降りる。しかしバス停などは見付からない。そんな時、マニラは便利だ。英語が通じる。2-3人に聞くと、バス停などはなく、道路脇から適当に乗ることが分かる。言われたバスに乗り込む。

バスには運転手の他に車掌が乗っている。彼に行き先を告げて料金を払う仕組み。道が分からない者には便利だ。バスは観光バスタイプで乗り心地も悪くない。ただ人の乗り降りが非常に頻繁なのに驚く。マニラではやはり歩く人はいない。ちょっとの距離でもバスやジプニーに乗る。

少し乗っていると環状道路のような所へ出て、スムーズになる。電車もこの道路沿いに走っている。そしてメガモールに到着。ここもSMの経営。相変わらずデカい。モールの中身は他とさして変わらない。それならなぜこんなに同じようなモールがあるのか、不思議でならない。吉野家で牛丼を食べてみるが日本とはかなり違い、今一つ。フィリピン人は天ぷらが好き、とかで、弁当に天ぷらを入れ、天丼も出している。

メガモールからグリーンヒルまで歩いて行けるのかと思い、歩き始めたが、これはとんだ間違いだった。どこまで歩いても見えてこない。途中で人に聞くと「ジプニーに乗れ」と言われ、わざわざジプニーを停めてくれた。有難い。そこから5分で到着したが、かなり消耗した。

グリーンヒルの建物は低いが、敷地が広く、ゆったりとした感じがある。中に入るとバックや服などの安物を売っている。この雰囲気は東南アジアの市場だ。メイドインチャイナもあるが、タイあたりから流れてきている物も多い。値段は中国の方が安いかもしれない(売り子は中国製は良くないと言っていたが本当だろうか)。真珠のマーケットがある。女性はこれを目当てに来るらしい。売り子はミンダナオ出身が多いというから、その辺で採れるのだろう。

骨董屋もあり、PC関連の店も多い。これまでの高級モールと違い、何となく落ち着く雰囲気がそこにある。中庭にはレストランがいくつかあり、そこでパンケーキを食べた。沢山の人がモールに来ていたが、レストランは混んではいない。やはり料金が高いからだろう。

キアポ

次に行く宛がなかったが、ホテルに戻る方法も分からない。仕方なくグリーンヒルに来たバスに乗り込む。どうやらキアポという所へ行くらしい。終点までの切符を買う。少し渋滞したせいもあるが、このバス、なかなか目的地に着かない。途中でLRTの駅が見えたので降りようかと思ったが、そのまま進んでみることに。

1時間ぐらい乗って、ようやくキアポに到着。実に立派な教会があり、そこを起点に市場が形成されていた。門前町の雰囲気。ずっと歩いている内に、少し雰囲気が違うが所へ出た。そこはイスラム教徒の居住区だった。この辺りは貧しい。後で聞くと、この辺はマニラでも一番危ない場所、とされているらしい。確かにその雰囲気はあった。

何故かすぐ近くにマラカニアン宮殿があると聞き、行って見ることに。直ぐと言っても結構歩いたが、付近は下町風でとても宮殿があるとは思われない。ずーっと行くと、立派な門がある。ここはマラカニアン宮殿か、と門番に聞くと、そうだ、という。だが許可なく入ることは出来ないとも言う。「日本から態々来たんだ」と言ってみると、上官が出て来て、「写真は撮るな」といって見学は許してくれた。

中は住民が住む居住区だった。その一角に立派な建物があり、昔マルコスが住んでいたんだろうな、と思われたが、きっと言われなければ分からないような建物。イメージ先行で来てしまい、ちょっとビックリ。更に中へ入れば色々とあるかもしれないが、そこの門は固く閉ざされていた。

取り敢えずさっきバスを降りた教会までジプニーで戻る。流石に疲れた。外は本当に暑い。もうこれ以上は限界だと、ジプニーを探すが、良く分からないので適当に乗る。今度は本当にどこを走っているのか分からず、とうとう終点まで来たが、どこか分からない。直ぐ近くに動物園があり、位置を確認。再度ジプニーに乗り、何とかリベルタードへ。

そこで昨日も両替した両替所へ。ところが今日は両替できないという。実は昨日身分証の提示を求められた時に香港のIDカードを出していた。どうやらこれはダメだったらしく、断られる。困っているとおばあさんが「道の向こうにあるよ」というので行って見ると、確かに両替所があり、しかも身分証提示不要だった。どうなっているのか。

4月7日(日)  フィリピン人と間違えられる

マニラ最終日。何となく慣れ親しんだこの街、離れがたいが、疲れも相当に溜まる。今日は夜便なので時間を潰す必要がある。しかしもう歩く気力はない。午前中はホテルでゆっくりして、チェックアウト、荷物を預けて、ショッピングモールグリーンベルトへ。もうすでに行った場所だが、ここならホテルからも近く、何より涼しい。

先ずは腹ごしらえと、先日Fさんから勧められた地元のレストラン、Max’sへ行く。どこのモールにも大体あるようだが、このグリーンベルトのお店は大繁盛でお客が溢れていた。ちょっと待って店内へ案内される。普通は4-10人がけのテーブルだが、ちゃんと1-2人用シートがあり、便利。何だか幅広い顧客を念頭に入れているようだ。一番驚いたのは、ある意味でファーストフード店であるこの店で、テーブルごとに担当が決まっていたこと。私の所にも若い男の子がやって来て、「何かご用命があれば私に」と言って、オーダーを取って去って行く。不思議な感じもしたが、良いサービスだなと思えた。

その後先日シンガポールで取材したTWG(http://www.yyisland.com/yy/terakoyachina/item/5658)の店を探す。このTea Shopチェーンはアジア各地の一等地にのみ出店しており、お茶文化が無いマニラにも店を出していた。店内はお客で埋まっており、観光客を含めて多様な層を取り込んでいるように見えた。「フィリピン人も珈琲ばかり飲んでいるわけではない」との店長の言葉が印象的。茶畑が無いと言われるフィリピンで、お茶のブームは来るだろうか。

今回のマニラ滞在では暑い中、良く歩いた。結果自分でも分かるほどに顔が日焼けしてしまい、黒々としてきた。すると滞在3日目あたりから、道を歩いているとフィリピン人の女性から道を聞かれ、4日目にはショッピングモールで男性から店の場所を聞かれ、そして今日はグリーンベルトで3回も道を聞かれた。「私は外国人だから分からない」と英語で答えると、若い女性は目を大きく見開いて、黙って行ってしまったが、年配の女性は「あなたがフィリピン人出なくて誰がフィリピン人なの」という最上級の褒め言葉を頂き、更には別の女性からは「あなたは完璧なフィリピン人よ」とダメを押された。

今まで一度もフィリピン人に似ていると言われたことが無かっただけにこのマニラでの反応は意外だった。だが後日香港の居酒屋で日本人3人で飲み会をしている時に、ウエートレスが偶々フィリピン人だったので「この3人に中でフィリピン人に似ている者はいるか」と聞いてみると、彼女は真っ直ぐに私を見て「ユー アー フィリピーノ」というではないか。私のどこがそんなに似ているかはいまだに謎だが、これが危険な目に合わなかった最大の要因なら感謝しなければならない。

その後は疲れたのでスタバでネット。ここは本当に大繁盛で席を確保するのが大変だった。特に電源のある場所を見付けた時はホッとした。向かいに座ってフィリピン人が実に流暢な英語で話し掛けてきて、ひとしきり雑談していると、何と無料WIFIの時間が終了していて、結局あまり活用できずに終わる。しかしこれだけ混んでいると時間制限したくなる気持ちは分かる。

仕方なくホテルに戻り、荷物を持ってタクシーに乗り込む。運転手はまたもや陽気で誠実。何の問題もなく、30分で空港に到着、料金も250pだった。だが空港入り口は荷物検査があり、大混雑。急いでいる人は大変だろうと思うほど、待たされ、更にはチェックインカウンターも長蛇の列。何とかならないものだろうか。

そしてカフェでネットをやり、搭乗時間に合わせて搭乗口へ向かうと、何と突然のゲート変更。何のアナウンスもなく、走って新ゲートへ行く羽目に。これもまたフィリピン。兎に角無事にマニラを離れ、ホッとするやら、物足りないやら。




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