ボルネオ探検記2019(4)ついにサンダカンへ

サンダカンへ

バス停はあるのだろうか。サバティーガーデン入り口の看板のある場所に、日差しを避けられる場所があった。そこで待つ。まさかもう通り過ぎてはいないと思うが、10分ぐらいすると不安になる。そこへ先住民と思われる家族が軽トラでやって来た。男はすぐに林に分け入り、枝を落としている。子供たちは私のすぐ脇でそれを見ながら遊んでいる。枝が落ちると女たちがその枝から何かを取っていた。こんな山の中で、たった一人でバスを待っていたら、心が落ち着かなかったはずだが、横に人がいるということは何と心強いことか。

 

さっきの門番のおじさんがやってきて、バスはあと10分ぐらいで来るよ、と教えてくれたが、それでも来なかった。ただ来るよ、という言葉に勇気づけられる。そして待つこと40分、ついに大型バスが姿を現す。私は車道に飛び出して大きく手を振り、バスを止めた。運転手にサンダカン、というと、大きく首を振り、荷物を入れてくれた。30MR。

 

車内はそれほど混んでいなかった。エアコンがかなり効いていて寒いくらいだ。乗客は殆どがマレー人に見えた。それも子供連れの女性が多い。車内では映画が上映され、それが終わると音楽が流れ、ちょっとうるさい。それでもバスに乗れた幸せで、あまり気にならなかった。

 

バスは山道を走り続けた。道は悪くないので、ミニバンより広い車内は快適だった。2時間半ぐらい行くと平地に出て、それから更に1時間経って、サンダカン郊外にバスは停車した。ここがバスターミナルとは思えない、郊外住宅の空いた場所。降りるとタクシーの勧誘があるが、バスで市内へ行きたいと告げると『バスはない』と言い放つ。段々面倒になり、その内の一台に乗る。運転手はゲームに夢中で仕事をする気がなかったのが良かった。15MRで市内へ。

 

取り敢えず行き先はサンダカンホテルにした。最近は『その街の名前が付いたホテルに泊まる』ということをやっており、料金が合理的であれば、そこに泊まることにしている。大体はちょっと古いが一応設備が整っており、その割に料金は高くない、というコンセプトになっている。ここサンダカンホテルもまさにそうだった。1泊110MR、朝食付き。部屋はコンパクトだが使い心地は悪くない。ただやはりWi-Fiは弱かったが。

 

既に時刻は午後2時半。何となく腹が減り、外へ出るとホテルの向かいに食堂があった。何人か食べていたのでそこへ飛び込む。ウエートレスとは言葉が通じないが、メニューを指して注文。ミー・ゴレン スペシャルだな、と店主のインド系が確認に来た。何がスペシャルかと思っていると、目玉焼きが上に載っていた。腹が減っていたこともあったが、この甘い感じのソースが好きだ。あっという間に平らげる。

 

街の輪郭を掴むため、散策する。観光案内所は日曜日で休み。その横にある博物館も休みかと思っていたが、2階の展示場を見ることは出来た。ここサンダカンは19世紀後半、イギリスが開いた街で、そこへ労働者として中国系が流れ込んだ歴史が書かれている。第2次大戦では日本軍に占領され、1945年には連合軍の空爆で街は灰燼に帰す。戦後はサバ州の中心がコタキナバルに移り、静かな街になっているようだ。

 

博物館前の広場には、この街を創設したイギリス人、プレーヤーの記念碑が建っている。1879年のことだとある。その横にはここで亡くなった人の碑、反対側には第2次大戦終結により解放された記念碑があり、中国語でも書かれている。日本軍占領期間中、ここでも華人迫害などがあったのだろうか。

 

一度ホテルで休息し、夕方また出掛ける。海までは歩いてすぐ。快晴でいい景色が広がっている。ここはフィリピン南端の島とかなり近いと聞く。街は小さくまとまっており、歩きやすい。中国寺院があったが閉まっており参拝できず、古い教会へ行って見たが、まだ日は高いのにやはり閉まっていた。

 

実は私はスマホを持ちながらも、ずっとデジカメで写真を撮っていた。ところが持ち歩いていたカードリーダーが反応しなくなってしまった。確かにこれも数年前に買ったもので劣化したのだろう。買い換えようと街で探したが、何と、どこにも売っていなかった。スマホ関連の店は沢山あるのに、デジカメは時代遅れだ、という顔をされる。親切な店員が、『明日カメラ屋に行けば』と言ってくれた。そういう時代なのか、私もスマホで写真を撮るべきなのだろうか。

 

日曜日の夜、小さな店はかなり閉まっていた。先ほどランチを食べた店にまた入り、鶏肉とローティーを注文する。卵入りローティーはその場で作ってくれるので美味し。鶏肉とたれをそれにつけると何とも言えない。アイスレモンティーを入れてもこれで10MRちょっと。日本では考えられないコスパがここにある。

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