ある日の台北日記2019その3(10)松柏嶺へ

11月4日(月)
コメダで朝食を

前日の夜、いつもの麵屋が閉まっていたので、ちょっと歩いて、とてもきれいな新しい麵屋に入ってみた。だがこの麵屋も、先日のサンドイッチと一緒で、牛肉麺が240元もした。こんな高い麺を食べるなら、他の物を食べようかとも思ったが、物は試しにと頼んでみた。

 

どんなにすごい麺が出てくるのかと期待していたが、特に特徴もなく、スープも今一つ。そしてなんと、スープをすすったら、中からビニールまで出てきてしまった。さすがに高い料金を取って、これはないよなと思い、店員のおばさんに告げると、『いや、それは大変申し訳ない』と謝った上、お代もいらない、という。

 

そして『日本人に悪い印象を与えてしまったのは、大変残念だ』と頭を下げた。店は新しくても、おばさんは昔気質の人。きっと以前やっていた麵屋は、家賃高騰か再開発で追い出され、子供たちと一緒に新しい店でもやっているのだろう。台北は今、古い店がどんどん無くなり、その人情も薄れていく。

 

今朝はそんなことを考えながら、先日見付けたコメダへ向かう。名古屋に行ってもなかなか行かないコメダだが、折角近所にあるのだから、一度入ってみることにした。ここも店はきれいだ。店員は若者が多く、接客はかなり雑だった。お一人様用席がいくつもあり、よく見るとかなり奥まで席が続いていて、大きな店だった。

 

メニューは、ドリンクを頼むと無料でトーストなどが付いてくる、日本と全く同じだと思われる。コーヒーが110元だからその値段な訳で、日本より若干安いかもしれないが、台湾の朝ご飯より、明らかにボリュームはない。コーヒーの味は特に変わらない。ただ店は若者や主婦層でほぼ満員の盛況。落ち着いてPCなどを使う雰囲気もなく、早々に退散する。やはり残念ながら、私に向いているカフェではないということだろう。

 

11月5日(火)
松柏嶺へ

今日は朝から台中へ向かう。初めて外国人旅行者専用の高鐵割引チケットを購入してみる。700元が560元になるのだから安いのだが、自動改札を通れない。また帰りの時間が読めないので、行きしか買えない。この不便さはJR東海の『ぷらっとこだま』という商品を想起させる。

 

先月と同様、トミーが車で迎えてくれ、松柏嶺へ向かった。今回の目的は花茶の歴史を学ぶことだ。松柏嶺と言えば、低地でどんな茶でも作っていると言われる場所。ここにはどんな歴史があるのだろうか。などと考えているうちに、いつの間にか大地を登り、松柏嶺に入った。

 

まず行ったのは、先月の南投茶博でも会った陳さんの家。お父さんによれば、松柏嶺では1920年代に包種茶を作っていたらしい。陳家では光復後すぐに茶作りを始めたという。武夷や青心烏龍で発酵茶を作っていたが、その後四季春や金萱が中心になり、今日に至っている。花茶は、低級品ということもあり、特に作らなかったという。

 

陳さんが知り合いの茶農家に連れて行ってくれた。こちらではその昔は果物を作っていたが、1950年代に茶を作り始めた。そして70年代に花茶作りが始まった。花は彰化の花壇から取り寄せ、発酵茶と合わせて作った。花は茉莉花の他、樹蘭、黄枝などがあり、その用途に合わせて使った。

 

現在でも色々な花茶を作っており、飲ませてもらった。正直花茶を美味しいと思うことはあまりないのだが、こちらで作られた樹蘭四季春などの花茶は、実に味わいがあり、花の香りもしとやかで、私でも楽しめた。こういう花茶が台湾で作られているとは知らなかった。コストが高いので、値段も高いとは思うが、この商品はありだな。

 

我々が現在普通に口にしている花茶はどこで作られているのだろうか。台湾で売られている8-9割は外国産らしい。値段が安いものは先ず間違いなくベトナム産などだという。ヨーロッパではフレーバーティーはむしろ常道であり、何の問題もないと思われるが、台湾では自然な香りがよいだろう。

 

午後、陳さんの茶畑を見学に行く。仏手を植えているというので、興味を持つ。この品種、実はその由来が中国大陸でも30年ほど前に話題になり、専門家が論争を繰り広げたという。その中に日本に渡った品種、という話も出てくるので、出来ることなら、仏手の歴史を少し調べてみたいと思っている。

 

その後、焙煎を専門に行っている若者の工房を訪ねた。プレハブの簡易な建物だが、炭焙煎も行える設備を持ち、本格的だ。焙煎技術を師匠から習い、自分たちで色々と挑戦しているようだ。台湾茶の特色の一つはやはり焙煎だろうから、今後付加価値を付けていく有効手段ではないか。焙煎の歴史ももう一度洗い直したい。

 

トミーに台中駅まで車で送ってもらい、初めての宿に投宿する。何時も泊る所よりも随分と安い(朝食付きでない)が、寝るだけなら特に問題はない。しかも一人なのになぜか3人部屋で無駄に広い。この宿、団体客が多いから、このような作りになっているのだろうか。夜は少しお茶の歴史を整理しながら寝落ちる。

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