ある日の台北日記2019その3(7)三峡の花茶

10月30日(水)
カレー屋へ

今日はいつも会うSさんとカレー屋に行くことになった。私は全く知らなかったが、比較的宿泊先に近く、歩いていくことが出来る場所に人気のカレー店がオープンしていた。12時開店で予約はできないとのことで、少し早めに行ってみたが、既に店の外に行列が出来ており、その中にSさんも混ざっていた。まさかカレー屋がこんなに混んでいるとは思いもよらない。

 

何とか店に入ると、中は至ってシンプルな作りで、カウンター席が8つしかない。だから並ぶわけだ。そして多くの人がテイクアウトしていく。テイクアウトの場合は、料金はちょっと安い。合理的な経営方法だ。我々は豚と鶏のカレールーを半々でオーダーした。味噌汁と漬物が付いてくる。

 

お味は何とも濃厚でかなりうまい。聞けば日本のカレーが好きになり、自分たちで研究して作り出したというのだ。カウンターと店の人との距離が近く、何ともアットホームな雰囲気で面白い。ルーをちょっとだけお替りで乗せてくれるのもよい。セットメニューが230元、というのは、案外安いのかもしれない。また来よう、今度はテイクアウトで。

 

それから近くのカフェに入って話し込む。いつものパターンだ。このカフェの女性店主は日本語が少しできるようだった。コーヒー以外にも烏龍茶や紅茶なども用意されており、ちょっと面白そうだ。最低消費150元とあったが、腹一杯だと告げると、100元のアメリカンで勘弁してくれた。こちらもまた機会があれば来よう。

 

それにしても近所に色々な店があることに気づかされて驚く。一人で簡単に食べるとなると、どうしても決まったいくつかの店しか行かなくなるのが難点だ。やはり偶には人と会って、見識を広げる必要もある。因みに帰りに歩いていると、何とやはり近所に名古屋のコメダ珈琲まで出来ていた。目玉のモーニングもあるようなので、今度朝行ってみることにする。

 

10月31日(木)
三峡へ

何だか小雨が降っている。前回三峡を訪ねた時もそうだったと記憶している。何か行いが悪いのだろうか、それとも三峡は鬼門?取り敢えず地下鉄で新店駅まで向かう。そこで前回同様黄さんの車に乗せてもらい、軽い山越えをして、三峡に入る。本当に車で20分ぐらいの距離にあり、その近さが実感できる。100年以上前、この山道を農民が茶葉を担いで行く風景が何となく見える。

 

前回台湾緑茶の歴史を知るために訪れた場所にまた車を停める。だが今回訪ねたのは隣の家だった。同姓であり、親戚なのだろうが、花茶の歴史を知っているということで、今回は道路に面して店を構えている黄さんと会った。日本統治時代にはこの付近にも日本人が多く来ており、彼らとの交流もあったと語る。

 

光復後、三峡は外省人向けの緑茶、三峡龍井茶を生産していたが、その過程で、夏茶に花をつけたことはあるという。花茶というのは、下級の夏茶に付加価値を付けるために作られた、と考えられる。だが以前は花茶の製造法自体を知らなかったので、緑茶を原料として台北に送るだけだったらしい。1980年代、茶農家が直接茶葉販売をできるようになった際、製法を学んで自分たちでも作ったということだろうか。だがその期間は長くなかった。恐らくは中国などから大量に安価な花茶が流入したからだろう。

 

そして現在、夏茶で作るのは、価格が高い蜜香紅茶や東方美人になっている。そして最近高値で売れる桂花茶も作り出してはいるが、桂花を摘むのに手間がかかり過ぎ、また摘み手の高齢化などもあり、コスト面から言っても、決して安い花茶は出来ないという。この辺りは南港でも聞いた話だ。

 

帰りに裏の黄さんの所に寄ってみたが、寄り合いに出ているというので、会うことは出来なかった。一応『台湾緑茶の歴史』を書いた雑誌を奥さんに手渡して去る。日本語だから読めないだろうが、写真が掲載されているので、何となく分かるだろう。三峡には緑茶はあるが、花茶の歴史はあまりないことを確認して、車で新店駅に戻った。

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