ある日の台北日記2019その2(15)台中日帰りで

6月5日(水)
台中日帰り

今日は茶の歴史調査の一環で台中に行くことにしていた。ただ珍しく日帰りだ。私の調査も段々と進んでいき、大詰めが近づいているものもある。台北滞在期間も限られている。効率よく進まねばならない。資金と利便性を考えて、今日も高鐵ではなく、台鉄自強号で向かう。既にチケットは予約済みだ。

 

台北駅ではなぜか懐かしくなり、台鉄弁当を買う。伝統的な排骨弁当だ。35年前、初めて食べて以来、その美味しさ、安さ(コスパ)は変わらない。駅でトイレに行こうと思ったら、これがなかなか見つからない。駅員の言う通り行くと、その階段は通行止めになっている。最後に掃除のおばさんに聞くと、『通行止めだけど、トイレに行く人はいいんだよ』というではないか。こういうところが台湾的だ。

 

列車はいつものように進んでいく。平日の午前中でもそれなりに乗客がいるので、それなりの需要があるということだろう。途中で弁当を食べて、後は眠りこける。なぜか列車に揺られていると短時間でも深い眠りが得られ、目が覚めると爽快な気分になれる。目が疲れ、本が読みづらくなった今、列車の旅は寝るに限る。

 

昼に台中駅に到着する。ちょっと暑いが歩いて台中公園に向かった。台中には何度も来ているが、ここに来るのは初めてだった。公園内を見渡すと、人はほとんどいない。が、木陰に座ってランチを食べているのはインドネシア人の出稼ぎ者らしい。よく見ると、歩いている人々も女性はヒジャブを被っている人が多い。台中駅前も今やベトナム、インドネシアなどのレストランが並び、東南アジア街と化している。

 

公園から歩いて少し行くと張さんの家があった。午後1時の約束で、5分ほど遅刻すると、何と張さんは家の前に立って待っていてくれた。私が迷っていると思ったのだろうか。ここに来るには2回目だが、前回はトミーの車で来たので、スマホ頼りであり、時間が読めなかったのは事実だ。申し訳ない。

 

前回張さんからは、鹿谷の優良茶コンテストなど、貴重な話を沢山聞いた。政府側の証言として、光復後の茶の歴史はどう語られるのか、当然民間とは異なる視点になり、とても興味深く、参考になる。今回は特に台湾東部開発に関する話を重点的に聞いた。東部茶業に初期から関わり、何度も足を運んだ話は面白い。老茶を淹れて頂きながらでも、話には淀みがない。

 

また農林庁で上司であった、林復氏についても色々と聞いてみる。私が林氏に昨年会ったことを告げると『そうか、まだご存命か』と感慨深そうではあったが、やはり生きている人に関する話は、かなり選別され、思い出しても語られることはそう多くないと感じる。そこにはやはり外省人という意識が働いていただろうか。

 

まだまだ聞きたいことは沢山あったが、いくらお元気だとは言え、張さんも87歳のご高齢だから、2時間ほどで退散した。次回も色々と確認事項を持って訪ねて行こう。それから台中駅まで急いで戻った。これから豊原まで行くのだが、ちょうど自強号が2分遅れており、何とかそれに飛び乗った。

 

15分で豊原駅に着く。いつもは泉芳茶荘に向かうのだが、今日は華剛の方のオフィスに来て欲しいと言われていた。そこは私が初めてジョニーと会った場所だったが、それ以降行く機会はないままだった。あの時は何と北埔からタクシーで直接やってきたので、行き方もわからないが、今はスマホがあるので歩いて向かえる。豊原駅の裏側の道を初めて歩く。

 

ジョニーは最近春茶の製茶を終えて山から下りてきたので、とても忙しい。その中で対応してくれるのだから有り難い。オフィスも大きくは変わっていないが、商品はかなり増え、パッケージもおしゃれになり、歴史関連を紹介するものなどもあり、かなり充実してきていた。話を聞いている中でも、スタッフがどんどん仕事の話を持ってくる。作ったばかりの茶のテースティングも随時行われる。かなり臨場感のある現場だった。

 

今回私が聞きたかったのは、花蓮で光復後に茶作りをしようとした人の中に、豊原の杜という苗字が出てきたので、これはジョニーのところで聞けばわかるだろうと思ったのだ。だがジョニーはもちろん、お父さんでも『多分遠い親戚だろう』ぐらいしかわからないという。この狭い台湾で、豊原で、そうなのだろうか。なぜこの杜という人はまだ茶もない時期に瑞穂に向かったのか。なぞだ。

 

ジョニーも時間が無いので、車で駅まで送ってもらう途中、簡単に夕飯を食べた。肉の入った麺、こういうのが美味いのだ。列車時間ギリギリまで食べて駅に駆け込んだら、列車は遅れていた。大汗が出た。台鉄、遅れがひどいな。結局台北には夜の10時過ぎに到着。それでも日帰りでかなりの成果を得た。

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