ある日の台北日記2019その2(14)羊毛とおはな

6月3日(月)
永康街で

今日は久しぶりにSさんと会うことになった。彼もこの数か月で色々と変化があったようだが、それでも台湾に留まっている。やはり台湾が好き、ということだろうか。待ち合わせは永康街なので、散歩がてら歩いて向かう。Sさんが選んでくれたお店、初めてだと思って行って見たら、以前にも来たことがあった。今やちょっと前に行った場所はほぼ忘れてしまうらしい。

 

昔の台湾料理を出す店、という感じだったので、あまい味を絡めたレバーを注文してみる。野菜もシャキシャキしていて旨い。先日の潮州料理とは勿論違うのだが、美味いと思えるものを食べているのは幸せなことだ。料理人であるSさんに、潮州に行って食べ物を味わうべきだと強く勧めてしまった。

 

まだ時間があったので、どこかでお茶でも飲もうかと歩いていると小雨が降り出す。ちょうどそこに一軒のカフェがあった。実は以前もこの前を通ったのだが、ここがカフェだとは思わなかったのだ。店名は『羊毛とおはな』というので、毛糸屋さんかと勘違いしていた。だが今日、よく見てみるとポスターも貼られていた。それは私が数年前に見たテレビドラマのエンディングを歌っていた日本のアコースティックデュオではないのか。

 

Sさんによれば、メンバーの一人はここでライブをすることもあるらしい。このユニットを好きな台湾人がこの店を開いているともいう。思わず中に入るとかなり広い空間があり、昼下がりにスマホやPCをいじりながら、時間を過ごす若者たちがいた。こんな世界もあるのかと感心。メンバーの千葉はなさん、2015年36歳の若さで乳がんで亡くなっていた。

 

あれは2年程前か。私は「はだかのピエロ」という曲を初めて聞いた。WOWOWの連続ドラマW、東野圭吾作品『片想い』のエンディングテーマだった。歌っている人間が亡くなっているのに、曲が採用されるのは異例だろう。それほどにマッチした曲だった。私も珍しく、誰が歌っているのかと検索を掛けたほどだ。ドラマ自体はジェンダーを扱っており、かなり厳しい内容だったが、エンディングにこの曲が流れると、何となく癒されると言う毎回だった。

 

まさか台湾でも、このユニットがこれだけ知られているとは思いもしなかった。台湾人の日本好きは何とも奥が深い。むしろ日本人以上に日本の良い部分を知っている台湾人、有難いと言うばかりではなく、ここから学ぶことも多いはずだ。

 

茶商公会へ
カフェでSさんと色々と話し込み、そして別れた。今日は茶商公会に行くことになっていた。これまでも数回訪れて、色々と情報を頂いているが、今日もまた公会絡みの歴史のヒントをもらいに行く。総幹事の游さんはとても親切に相談に乗ってくれるので、何とも有り難い。

 

しかし茶商公会の歴史も光復前後の混乱期については、全く資料がないようだ。私は日本の茶業資産を本当に接収したのは誰なのか、について調べているが、どうにも確証がない。何故だろうか。代わりに游さんは『そういえば、先日郭春秧(最初の公会会長)の子孫がここに来たよ』というではないか。それは是非色々と教えてもらいたいとお願いすると、ご本人に連絡を取ってくれ、よくわかるテレビ番組を教えてもらった。

 

なるほど、と思うことが多い内容だった。やはり偶には公会にも顔を出して、こまめに情報収集することが大切だと分かる。世の中には実は様々な情報や資料が眠っているが、それを掘り起こせるかどうかは、運もあるが、何といっても熱意を持つことかと思う。研究者というのは、大変なことをしている人々だ、と思う所以である。

 

6月4日(火)
ユニークなお茶屋さんへ

天安門事件30周年!今日はいつもセミナーなどでお世話になっているMさんが台北に来ており、会うことになっていた。MRT龍山寺駅で待ち合わせ。ここの駅直結の場所にお茶屋があるというので付いていく。もう一人札幌からAさんが来ており、同行する。そのお茶屋は、これまでの茶荘とはちょっと違い、若者向けの店構えだったが、お茶は試飲させてくれる。

 

しかもその出てくるお茶はそれ相当なものなので、とても初心者向けとか、お土産を買う観光客向けではないのが、実にユニーク。更には一つずつの茶葉について、相当丁寧な解説がつく。試飲して気に入れば、その茶葉を買うこともできる。ただ人気の茶葉は数量がない場合もある。喫茶コーナーもあり、カフェのように座ってお茶を飲むこともできる。

 

お茶のパッケージは今風でおしゃれ。何だか、とてもいいとこ取りなお店だ。夜7時までらしいが、周囲の店はきちっと閉まっていた。正直あまり流行っていない商店街の中に敢えて作られているような印象もある。これからは、お茶が飲みたい人、買いたい人は、ここに連れて来よう。

 

夕飯は中正紀念堂近くの有名な魯肉飯屋さんへ行く。名前を聞いても行ったことはなさそうだったが、実際に店の前に行くと昔来たことがあると思い出す。いつも行列が出来ている店で、正直敬遠していた。でもさすがに皆さんが通うだけのことはあって、魯肉飯もスープもうまい。これからは偶には来よう。

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