ある日の台北日記2019その2(12)久しぶりに彭園湘菜館

5月18日(土)
久しぶりに彭園本店へ

週末は原則外出しないのだが、今日は北京からTさんが、台北に正式赴任したというので、夕飯を一緒に食べることになった。ちょうど住まいも決まったということで、まずはそちらを訪ねる。場所は旧市街地にあり、昔は飲み屋などが多かったが、今はきれいなホテルが出来、そしてマンションも建っていて驚いた。台北の変化、というのは、実はこういうところに出ているように思う。

 

周辺をぐるぐると歩き回って食事の場所を物色した。確かにお店は沢山あるのだが、2人でゆっくり話すのに適した場所は意外と見付からない。5分ほど歩いて行くと、Tさんが『ここにしてみましょう』と言って、スタスタと2階に上がっていく。よくわからずに後をついて行く。

 

このレストラン、かなりきれいな中華、いや湖南料理と書かれている。ウエートレスは妙齢の女性で、日本語を話してくれる。相当改装されており、昔の面影はないが、何となく、ここに来た覚えはある。店名を見ると『彭園湘菜館』とある。そうだ、ここは30年前によく来た店で、15年前には家族の台湾旅行でも訪れ、いつもは食べ物に無頓着な長男が炒飯を食べて、美味いと言いながら涙を流したという、我が家では伝説?のレストランだったのだ。まさかこんなところにあったとは、最近の記憶の悪さが顔を覗かせる。

 

だが、いや当然ではあるが、この老舗レストランも様子は変わっていた。勿論内装はきれいになったが、その分料金は高くなっている。更には日本人客にはしきりに日本語で書かれたセットメニューを勧めてきて、その料金は一人1000元もする。これで飲み物を頼んだら、いくらするのだろう。

 

Tさんは北京でもこういうことには慣れており、セットメニューを断り、食べたい物だけを注文した。その竹筒スープ、炒飯の味には昔が感じられ、鶏肉、家常豆腐の濃い目の味付けは何とも好みだ。本来湖南料理は激辛だが、ここではそれを避けて食べるのがよいと思われる。Tさんと二人、香港時代に偶に行った、湖南ガーデンという中環の店を思い出していた。

 

酒を飲まない私は2次会に付き合うことはないのだが、今日はTさんから、お土産を買う手ごろなお茶屋さんを紹介してほしい、と言われ、歩いて行ける新純香を目指した。Tさんも新米駐在員としての情報仕入れにかかっている。このお店、その昔から林森北路付近にあり、先代のお母さんの時に何度も行ったのだが、娘さんが店主となってからは、数えるほどしか行っていない。

 

お店は昨年改装され、とてもきれいな、すっきりした空間となっていた。2代目店主の王さんと私は早々にお茶の歴史の話を始めてしまったが、Tさんは何と『引っ越したばかりでお茶も湯飲みすらない』と言いながら、店内にあった物品を物色して、早々に買い込んでいる。お土産ではなく自分用か。まあ、このお店は日本語が通じるし、試飲が気楽にできるし、値段も手ごろだから、お茶初心者、お土産用にはよいかもしれない。

 

それと、パイナップルケーキだけではなく、舞茸チップスなどのお茶請けが充実しているので、むしろこちらを買いに来る人たちもいるようだ。私の横では、台湾茶についてかなり突っ込んだ質問をしている60代の日本人夫婦がおり、その質問内容には、講座で参考になるものが多かった。つい横から口を挟んでしまい、ヒンシュクもの。王さんが『この人はお茶の歴史を勉強しているので』と取りなしてくれたが。

 

それにしても、日本の台湾茶商さんたち、台湾茶の歴史をどのように伝えているのだろうか、とふと思ってしまった。まあお茶を売るだけなら歴史など語らない方が無難なはずなのだが、どうしてもうんちくが必要なのだろうか。そうであれば、日本の中できちんと茶の歴史を学ぶ場が欲しい、と思うのは、私だけだろうか。なぞと考えながら、トボトボと帰路に就く。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です