ある日の台北日記2019その1(9)豊原日帰り

1月23日(水)
呉三連紀念館

昨日王さんと話している中でも出てきたのだが、戦後台湾人たちが中国大陸から台湾へ引き上げる際には、大変な困難があった。天津の場合は、同郷会会長の呉三連という人物が相当の尽力をして、アメリカの船を引っ張ってきて、台湾人を乗せて帰った、という話が印象に残った。

 

この呉三連という人物、どこかで聞いたことがある名前だと思っていたら、台湾に戻った後、初代の台北市長に任じられた大物であった。そして亡くなった後も、呉三連基金会が彼の遺志を継ぎ、様々な歴史、文化支援を行っているという。彼と天津との繋がり、また当時のことなど、基金会に何かエピソードが残っているのではないかと思い、南京東路にあるオフィスに向かった。

 

ビルの11階に到着すると、そこは如何にも改修中だった。一応仮オフィスがあり、そこの人に聞くと、5月に再オープンするという。ここには元々図書館があり、多くの資料が保管されている。そして時々講演会なども開催され、歴史などについて学ぶ機会もあるという。黄さんから紹介されていた方を探し、話を聞く。

 

『実は呉三連の天津時代の資料はもともと少なく、更には資料の散逸もあり、現在では殆どわかっていない』というから、ちょっと驚いた。呉氏の自伝のようなものを見ても、あまり細かい内容は書かれていないようだ。やはり何か書きにくい、歴史に残しにくい内容があるのだろう。それはあの混乱の中でギリギリの交渉を行い、同胞を救ったからには人に言えない苦労はあったはずだ。

 

呉氏のインタビュー音源なども残されているというが、現在は改修工事の関係で、引っ張り出すことは難しい。『5月以降、再度連絡して欲しい』と言われる。この基金会、呉氏のことは勿論、それ以外の様々な資料が眠っている可能性がある。お茶に直接関係なくても、台湾の現代史は頭に入れておく必要があるので、再オープン後にゆっくり訪ねてみることにした。

 

部屋に帰るとテニスの全豪オープンが見られた。準々決勝で錦織圭とジョコビッチが試合をしていたが、錦織は序盤から明らかにスタミナ切れとなっており、2セット目に棄権してしまった。これまでフルセットの戦いが多かったこともあるとは思うが、やはり29歳、もう若くはない。大阪なおみは順調に勝ち進んでいる。

 

1月24日(木)
豊原日帰り

ホーチミンの張さんが旧正月で一時帰国したと連絡があった。昨年10月に会ったばかりだが、ちょっと会いたくなり、彼の故郷、豊原へ向かう。朝10時の自強号に乗ると、12時には豊原に着く。駅には張さんとお父さんが迎えに来てくれ、車で流行りの食堂に連れて行ってくれた。

 

そこは平日の昼間から、満員盛況で、週末は席がないという店だった。我々の席もすぐに相席となる。確かに蒸した鶏肉などが美味しい。今日は天気がよいが、鍋なども出ている。さすがに正月が近いからか、数人のグループで来て、わいわい食べている。地方都市にはこんな店が必ずある。

 

その後、街中に戻り、張さんも帰ると必ず行くという、泉芳茶荘へ向かう。私も何度も来ているが、ジョニーに連絡せずに、店を訪れたのは今回が初めてだ。お母さんも突然現れたので、驚いていたようだ。子供二人も正月休みで店に居り、思い切り走り回って遊んでいた。既に正月モード。更にはくるお客さんも皆常連さんで、年賀の挨拶の品を持ってやってくる。台湾の師走の光景なのだろうか。

 

そんな中、様々なお茶を飲みながら、話をする。私一人だとそこまでお茶に拘らないが、張さんはこだわるので、お母さんも色々なお茶を繰り出してくる。台湾各地の茶は勿論、中国茶、果てはハワイで作られたお茶まで出てきてビックリする。ここには本当に様々な茶が集まってくる。それが茶商の力なのかもしれない。

 

夕方、廟東市場へ出向く。ここの食べ物はなぜか他より美味しい。それは多くの人が認めているところであり、地元の張さんも当然のようにそこへ行く。肉圓と四神湯を注文する。うーん、やっぱりうまい。だがすぐに腹が一杯になってしまう。もう少し食べるかと言われたが、もう食べられない。

 

取り敢えず駅の方に向かって歩き出す。張さんが急に立ち止まり、一軒の店に入っていく。そこは張さん行きつけのパン屋だった。何だか珍しいものがあり、張さんは何個もまとめて買いこんでいる。ミルクパンとか、タケノコ・塩玉子パンとか、恐らくは張さんが豊原に帰ったら食べたい物なのだろう。勧められるまま、私も買って帰る。

 

予約した自強号までまだ時間があったので、駅のベンチに座り、茶の歴史について、色々と話し合う。何だか高校生みたいだが、こういう時の話の中に、色々と気づかせてくれる内容が含まれていて、貴重だ。1時間近くはあっという間に過ぎてしまい、タイムアップ。自強号に乗り、2時間かけて台北に帰る。

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