ある日の台北日記2019その1(5)東台湾の旅 鹿野で

1月17日(木)
鹿野にて

朝ちょっと早く目覚める。今日は鹿野一帯を訪ねるのだが、お茶と関係ない場所に行く余裕はないだろうと思い、一人で宿を抜け出し、鹿野神社を参拝する。実は鹿野にも3年近く前に一度来たことがあり、その際、日本移民100周年記念で再建された真新しい神社を見ていたのだ。鹿野の街は日本時代にきれいに区割りされて開拓されたため、道に迷うこともない。雨も上がっており、散歩にはちょうどよい。古い建物がチラホラ見える。

 

朝ご飯はリビングで頂く。大きな肉まんとサラダ、フルーツ。健康的な朝飯だ。平日なのに満室だったようで、他のグループも食べていて、賑やか。台湾も60代、リタイア世代が元気で旅している光景をよく見かける。トミー達、若者には少し物足りない食事だったかもしれない。

 

今日はまず、トミーの知り合い、博雅斎という茶荘?骨董屋?に伺う。ここは紅烏龍茶などを作り、販売しているという。ご主人が、お父さんが残したという本を見せてくれた。驚いたことに日本時代の写真が沢山入った、『東台湾展望』というこの地域に関するものだった。当時お茶はなく、お茶の歴史ではないが、相当に興味深い写真が多く、しばし見入る。それにしても昨晩もそう思ったが、紅烏龍茶は数年前よりかなり美味しくなっていると感じる。

 

車で高台に上がる。福鹿山、日本語の『高台』をそのまま使っているところが面白い。ここからは鹿野が一望でき、きれいに区割りされた街もよく分かる。こういうところが、『日本は凄い』と台湾人が思うところだろう。気球を飛ばす場所もあるが、今はお客さんがいないのか、何もやってはいない。

 

続いて、紅茶産業文化館に向かう。ここも数年前にちょっと訪れた。そのとき案内してくれた3代目が覚えていてくれた。だが歴史となるとお父さん、2代目が登場し、かなり細かな歴史について、説明してくれた。鹿野に移住して、茶業を始めたのは1960年代だから、瑞穂よりは早い。こちらも新竹から移住した客家だった。文化館の後ろには古い機会が残る茶工場があり、歴史を感じさせた。

 

お昼は地元民が行くレストランに連れて行ってもらい、お腹いっぱい食べた。地元の野菜や鶏は実にうまい。食べるなと思っても自然と手が伸びてしまうのを抑えることは出来ない。困ったものだ、体が重い。

 

午後は茶業改良場台東分場に行く予定になっていたが、時間調整が必要となり、コーヒーを飲むため、何と刑務所へ。その中にカフェが併設されており、地元産のコーヒーが提供されていた。刑務所内に入れるだけで、ちょっと驚く。刑務所の管理棟はちょっとおしゃれな洋風で更にビックリ。コーヒーは普通に美味い。

 

更には刑務所内には茶畑まであった。こちらは特別に入れて頂いた訳だが、作業が行われている中、自由に写真を撮らせてもらった。この茶畑で採れる茶葉も紅烏龍の原料になるのだという。野菜など色々なものが植えられており、これも作業の一環という。日本にはこのような刑務所、あるのだろうか。

 

改良場の分場にも以前偶然にも来たことがあり、その時の場長にはお世話になった。ちょうど場長は交代しており、新任が文山から来ていた。台東の茶の歴史を知りたいというと、すぐに改良場内の検討会の資料をくれ、色々と説明もしてくれた。何とも有り難いことで、今回の旅はある意味でここに来れば完結したのかもしれない。

 

話しているうちに新場長は宜蘭の方で、文山の前は魚池にいたと分かる。その時、突然ひらめいた。7年前、私が初めて魚池分場を訪ねた時、対応してくれたのは、この簫さんだったのだと。何よりも、新井耕吉郎さんと一緒に働いた最後の台湾人、楊さんのところに連れて行ってくれたのも簫さんだった。何という再会だろうか。さすがにお互い驚くが、お茶の世界ではよくあることだ。

 

話が弾んでしまい、広大な試験茶園を見る余裕もなく、分場を後にした。何しろこれから私は台南へ、彼らは台中まで帰るのだから大変だ。台湾一周、最近の言い方では2泊3日の環島、はかなりきつい。午後4時半に鹿野を出て、台東から屏東を回り、高雄を経て台南へ。暗い道を4時間ほどかかっただろうか。

 

台南駅前で降ろしてもらい、今日の宿へ一人で向かう。前回も泊まった駅前ホテル。何と窓なしの部屋なら、1泊2000円もしない。夕飯を食べていなかったので腹が減ったが、駅付近にはご飯を食べられるところがなかった。仕方なく、モスバーガーに入る。疲れていたので1階の席に座ろうとすると、掃除するから2階へ行けと言われ、2階で30分待ったが注文したものは出てこない。

 

掃除している若いスタッフに聞いたら、彼は掃除に夢中で商品をデリバリーしていなかった。腹も減っていたので、ちょっとムカつく。その帰り、怒ると腹が減るらしく、セブンでサンドイッチを買い、温めてくれと告げたが、スタッフの若者は自分のおにぎりに夢中で、サンドイッチを2分も温めてしまい、パンはへなへなになってしまった。これは台湾の問題か、それとも若者の問題か、いや私の運が悪いだけだろうか。

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