ある日の台北日記2019その1(4)東台湾の旅 瑞穂で

1月16日(水)
瑞穂で

夜中に雨が降っていた。朝、道路は濡れていたが、雨が上がったのは助かった。午前8時過ぎには鍵を置いて宿を出て、近所で朝ご飯。ハンバーガーを頬張る。それから舞鶴台地を登る。茶畑が見えてきたので、記念撮影。北回帰線の記念碑もあるので、そこにも立ち寄り、撮影。

 

2年ほど前に一度訪ねた嘉茗茶園を再訪する。ここは蜜香紅茶を発明した高さん、粘さん夫妻のお店。お嬢さんも結婚後、花蓮から戻ってきて、茶作り、販売を手伝っていた。トミーはここの農会に招かれ、講演したことがあるとのことで、先生の扱いを受ける。蜜香紅茶の歴史、そしてここ舞鶴茶の歴史について話しを聞く。

 

まあ、どちらかというと、話は蜜香紅茶の作り方、そして各茶のテースティング、如何にして販売するかと言ったマーケッティング戦略などの方に行ってしまうのは仕方がないことか。更には先日NHKの番組に取材され、放映されたビデオを見せられ、簡単な翻訳をする羽目にもなる。いいお茶を作るだけではなく、如何に売るかが、やはり焦点だと言える。

 

昼ごはんは高さんとお嬢さんが付き合ってくれ、地元のレストランに行く。レストランのお客さんも誰かは必ず高さんを知っている。彼は地元の有名人である。ここの料理はちょっと独特で、料理にフルーツのキウイが入っていたりして、とても面白い。美味しく頂く。ご馳走様でした。

 

午後は、葉さんの実家、富源茶荘に向かう。ここも過去2回ほど来ているので、葉さんの兄嫁などはすぐに私を認識してくれた。お母さんとも挨拶、お父さんは恐らくお昼寝の最中だろう。お兄さんも急いで会合から戻ってきて、話をしてくれた。この舞鶴台地に最初に茶を持ち込んだのは、ここの葉家であることは、昨年台中で会った、元農林庁で東部開発に携わった張さんも言っていたので、間違いはないだろう。1973年頃のことだ。

 

だがお兄さんによれば、『実は茶畑は日本時代からあったと聞いている』というではないか。それはどこにあったのか。一緒にその末裔を訪ねた。その店は何と北回帰線記念碑の横にあり、観光バスが停まると、観光客に土産物を売っており、忙しくしていた。一段落したところで話を聞くと、お爺さんが1940年頃茶樹を植えたらしい。ただそれが実る前に戦争になり、茶業は進まなかったという。

 

むしろここで面白かったのは、どのようにして、ここに移民してきたかという話だった。こちらの黄さんのお爺さんは新竹の出で、日本時代に新天地を求めて、兄弟一家で東部を目指したらしい。だが台北で仕事が見付かった者はそこに定住し、花蓮で見つかった者もそこに住み、残った者がここまでやってきたというのだ。だから今でも各地に親戚がいる。如何にも客家的な精神、興味深い。

 

最後に念のため、鶴岡紅茶を売るっているという場所に向かった。鶴岡紅茶も瑞穂の茶の歴史には必ず登場する。光復後、茶業が上手く行かずに、銀行が差し押さえ、その管理下で茶が作られたというユニークな歴史がある。だが最近は、あるお坊さんがこの紅茶を復活させ、宣伝していると聞いていた。

 

そこには、古い製茶機械などがあるということだったが、『製茶師がいないのでそれは見せられない』と言われる。鶴岡紅茶の歴史を聞いてみても、しきりに茶を勧められ、鶴岡紅茶を日本にも宣伝して欲しい、と担当の女性が言うので、ちょっと困ってしまった。ここは本当にお寺?お坊さんが経営しているのだろうか。そしてその歴史を尊重しているのだろうか。甚だ疑問な対応を受けて、すぐに立ち去る。

 

これで瑞穂の調査は終了。そのまま今晩の宿泊先、鹿野に移動した。約1時間半で到着。昨日に比べれば楽だ。今日の民宿はかなりきれいな作りで、居心地もよさそうだ。聞けば、今台湾人が東部に来ると、政府から補助が出るので安く泊まれるらしい。観光振興策、東部振興策だろうか。残念ながら外国人は対象外だそうだ。

 

ここに来る途中、茶工場の看板が出ていた。トミー達は知り合いであるここに行きたかったようで、すぐに連絡して訪問した。ここのオーナー林さんは、茶業を始めて僅か十数年。だが紅烏龍の品質向上、画期的な工場経営などが高く評価され、昨年神農賞を受賞した兵だ。確かにきれいな工場があり、生産は順調のように見えるが、話しぶりはかなり謙虚だった。

 

夕飯は林さんに連れられて、他のお客さんも一緒に牛肉麺を食べに行く。ここの料理人は台北で修行して戻った人で。味は本格的だった。夕飯だから大椀を頼め、と言われて頼んでみたが、あまりの大きさにビビってしまった。それでも美味しいので、ついに最後まで食べつくす。最近の食欲は一体どうなっているのだろうか。その後宿に戻り、シャワーを浴びてから寝る。トミー達は宿の向かいにも知り合いがいるらしく、夜遅くまでお茶を飲んでいたらしい。

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