ある日の台北日記2018その3(5)豊原の旨い物

11月7日(水)
豊原へ

私は埔里滞在中から、一人でご飯を食べる場合は、一日二食を基本としている。そして午前10時過ぎに食べるブランチ、その多くはクラブサンドイッチにしている。特に意味はないが、好きなのだ。だが、台北に来てから近所にお気に入りの店が見付からない。作りが雑だったり、店員の愛想が悪かったり、とどうも通う気が起こらないのだ。

 

そこで活動範囲を広げてみた。かなり東の方まで歩いていくと、賑やかな繁華街があり、そこには市場もあった。朝から人も大勢歩いており、宿泊先の静かさとは対照的だ。何軒かの朝ご飯屋が存在しており、その中で目を惹くところがあった。炭火鉄板三明治、かなりそそられる。

 

小さなその店、飾りは可愛らしく女性的だが、思い切って入ってみる。店員の女性はかなり愛想がよく、好感が持てる。取り敢えず『当店のお勧め』である招牌サンドを注文してみる。この値段は普通に私が頼む物より、20元は高い。飲み物の紅茶を加えると100元にもなる。だが、やってきたそれは、それだけの価値が十分にあった。パンもちゃんと焼かれており、中にはカツまで挟み込まれている。上質なカツサンドともいえる一品だった。これには驚き、満足して去る。やはり台北は侮れない。ちゃんと探せば、そしてほんの少しコストをかければ、美味しいものはいくらでもありそうだ。

 

午後は台北駅に向かった。今日はこれから豊原に行く。台中なら迷わず高鐵に乗るが、豊原なら自強号かと思い、昨日切符を事前予約しておいた。万が一、満席だと2時間立って行くのは嫌だった。中国ほどではないが、台湾でも駅の窓口でチケットを取らないといけないのは、時間が読めずに困る。案の定、お婆さんが何度も同じことを聞いており、係員も困りながらも親切に対応している。その間、我々はずっと待っていなければならないのだが、まあ仕方がない。想定内だ。

 

何とかチケットをゲットして、自強号に乗り込む。毎回思うことだが、35年前、初めて台北に来て、台中まで自強号に乗ったあの日のことが蘇る。あまりに緊張して車両を間違えて座っていたこと、何時に着くのか一向に分らず、何度も隣の人に聞いた記憶もある。あれば私の初の海外、初の海外電車だった。車両は多少新しくなったかもしれないが、自強号は基本的にあの頃と変らない。豊原に着く時間もほぼ変わらない。

 

ところが豊原駅の方は大きく変わっていた。前から工事はしていたのだが、10か月ぶりに来てみると、新駅舎が完成しており、非常にきれいになっている。駅前も広々としており、これまでの裏口から出てきていたのが、すぐに正面に行ける。ただ駅前には沢山のU-bikeなどがあり、多くの学生がこちらに向かって自転車を漕いできて、その勢いに押される。

 

いつもとは別の路を歩き、いつもの泉芳茶荘に行く。ジョニーはまだ帰っておらず、お母さんにお茶を淹れてもらい、頂く。そして相変わらず、高山茶の歴史確認を行い、途中には当事者でもあるお父さんも登場して、作業が進む。とにかく、この一家と高山茶の繋がりはかなり深い。

 

ジョニーが帰ってきても、話はまだまだ続き、気が付くと8時近くになっている。その間に美味しい肉圓をご馳走になったが、廟東の夜市に行くタイミングを逸していた。さあ、どう切り上げようかと考えていると、突如お母さんが『これ食べて』と言って、カレー味の鴨肉入りパスタを出してくれた。

 

申し訳ないと思いながら食べてみると、これが実にうまい。うまいと言うと、今度はジョニーが『鴨肉がうまいぞ』と言って、煮込んだ鴨肉をご飯にかけて持ってきてくれた。これがまた飛び切り旨い。聞けば市場で鴨を買い、長い時間煮込んだ物だという。この家は普段からいいお茶を飲み、いいものを食べているに違いない。今晩は夜市に行く必要がなくなった。

 

夜も9時近くなり、宿を決めていないというとジョニーが慌ててホテルに電話してくれた。だがいつも泊まる宿は何と満室だと断られたという。何故だ?台中で今月から世界花博が開催されているとは知っていたが、実はその会場は台中ではなく、ここ豊原などにあったのだ。結局ジョニーが探してくれて、駅前のホテルに空きがあるというので行ってみる。

 

チェックインすると相当広い部屋で、浴室から外が見える、大きなベランダがあるなど、かなり豪華で私には不釣り合いだった。普通の部屋はやはり一杯だったようだ。偶にはこんな部屋に泊まるのも良いか、とは思ったが、広すぎてよく眠れない。いや、先ほど散々お茶を飲んだからだろうか。それともお茶の歴史の興奮が冷めていなかったからか。

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