ある日の台北日記2018その1(4)茶商の末裔2と炒飯

5月24日(木)
茶商の末裔2

お昼に大学の後輩、Sさんと会うために出掛けた。国父紀念館近くをちょっと歩くと、何と日本の本屋ジュンク堂があるではないか。それにしても目立たない場所にひっそりとあるな、と言う感じだ。中に入ると日本語の本も一杯売っていたが、残念ながらお客は殆どいなかった。それから飲茶屋に行き、Sさんと会い、とりとめのない話をして過ごす。

 

その後、一昨日行ったばかりのニニ八紀念館を再訪した。実は一昨日紀念館にいた人から、王添灯氏の末裔の方を紹介され、連絡を取ったところ、紀念館で会いましょう、ということになり、やってきたわけだ。その女性、黄さんは音楽家で、王氏の孫に当たるという。黄さんは王添灯氏の奥さん、黄氏の系譜らしいが、そこは台湾、複雑に閨閥が絡み合い、私などが一度聞いても理解できるものではない。

 

そしてこの紀念館の立ち上げに尽力され、資料提供など様々な援助をしてきた。というか、この二二八和平公園の敷地内には、黄氏の牌楼があるなど、そもそもこの地にゆかりが深いらしい。よく分からないが、この紀念館自体が、王氏と黄氏の支援によってできたのかもしれない。何しろ館内には、二二八事件の犠牲者の中で唯一、王添灯氏の像があるのだから。

 

黄さんからは、子供の頃に聞いた王添灯氏の話は勿論、その兄水柳氏、弟進益氏など、光復後も台湾茶業会で活躍した一族の話が多く出てきた。そしてその子孫もいるので紹介してくれるという。台湾において添灯氏は、二二八事件の犠牲者、という側面で語られるのみだが、日本時代の満州への茶の輸出などで大いに成功しており、進益氏は長い間大連で商売していたという。実に興味深い話なので、是非一度まとめてみたいと考える。

 

同時に黄さんの実家、黄家の方も、王氏と同じ新店付近の出であり、祖父が丁稚からのたたき上げで有名な日本企業の台湾社長をするなど、なかなかユニークな経歴になっているようだ。こちらは日本企業も含めて、何か繋げられないかと模索を始めることになった。台湾には日本時代の様々な遺品が残っており、これらをどうするのかも、意外と難しい課題だと知る。

 

5月25日(金)
懐かしの炒飯

埔里と違い、台北にいると、実に様々な歴史的な情報が入ってきて、そして実際に関係者、その末裔などに会えるケースもあり、かなり忙しい毎日になっている。資料をもらい、それを読み込むだけでも相当に時間がかかっている。まるで研究者のようだ、と勝手なことを思ってみるが、真似事に過ぎず、その調査の深さは遥かに及ばない。

 

今日はそんな作業を続けていき、夕方に出掛ける。シェフのSさんと夕飯を食べることになっていた。Sさんとは、先日烏山頭ダムに一緒に行ったばかりだが、台湾料理の成り立ちなど、興味深いテーマで話が弾み、また会って話すことになった。こういう繋がりは実に貴重だ。

 

Sさんに何が食べたいかと聞くと、『以前Yさんが食べたという炒飯が食べたい』と言われたが、何のことだか分からなかった。もう一度聞いてみると、何と4年も前に私とYさんが初めて会った時に行った四川料理屋の炒飯のことだと分かった。Yさんから話を聞いていたSさんは、是非一度食べてみたいと思っていたというから、その記憶力は凄い。私はそんなことはすっかり忘れてしまっていた。

 

その四川料理屋は台北駅前にあり、行ってみると幸いまだ営業していた。早めに行ったので席はあったが、6時を過ぎるとどんどん客が来て、すぐに席は埋まってしまった。人気店だったのだが、私はその後1度来たきりだった。やはりあまり食に興味がない人間だ、ということだろう。

 

メニューを見ると四川料理だから回鍋肉や麻婆豆腐などはあるのだが、肝心の炒飯はない。おばさんが『白飯食べるか』と聞いてきたのを断り、『炒飯あるか?』と聞いたところで、思い出した。4年前も全く同じ会話をしたのだ。Yさんにはちょっと面白いところがあり、ない、と言っても食べたいという人なのだ。そして聞いてみると『メニューにはないけどあるよ』という答えをもらえるタイプの人なのだ。

 

YさんがSさんに炒飯の話をしたのだから、よほど美味しかったか、何かが印象に残ったか、そして料理人であるSさんがそれを覚えている、Yさんの舌を信じている、ということだろう。ここの裏メニュー炒飯は色がいい。Sさんは一口食べると『これはラードですね』とその秘訣を解き明かす。そうか、ラードは美味しいのか。そんなことは全く知らない私にとってはいい勉強になる。

 

まだ時間も早かったので、場所を移して話すことにした。Sさんが行ってみたい場所があるというので、向かった先は台北駅の地下。そこにあったのはUCCの喫茶室。ちょっと居心地のよさそうな空間、金曜日の夜は、充電なども出来るので若者で満員だった。メニューを不思議なものがあり、和三蜜糖ミルク紅茶、というのを頼んでみる。甘さも適度で意外とイケる感じだ。Sさんとは色々と話が盛り上がるので、いつの間にか10時を過ぎ、閉店までいてしまった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です