ある日の台北日記2018その1(2)圓山と二二八事件

5月21日(月)
台湾大学

今度の宿泊先は台湾大学に結構近い。歩いて20分はかからないので、昼時にテクテク歩き出す。ちょうど大きな通りから少し入った場所に麺屋の看板が見えたので、入ってみた。ランチを食べる人で混んでいたが、何とか席を確保する。やはり目に付くのは牛肉麺、初めての店ではどうしてもこれを注文してしまう。麺がしっかりしていて、牛肉もチャンとのっかっており、満足。

 

それから台湾大学の裏門からキャンパスに入る。今日は何となく散歩したい気分で、前回も見た蓬莱米発祥の地が気になってしまい、その推進者であった磯永吉博士を説明する看板を見ているうちに、もっと知りたくなってしまった。ネット検索すると台湾大学内には磯永吉記念館が設置されているというので探してみたが、古い建物はあるものの、なぜか農学部周辺では見付けることが出来なかった。

 

仕方なくいつものように大学図書館に入り、資料を探すことにした。ここも一度登録してしまえば、パスポート持参で簡単に入ることができる。古い資料を見るには更に手続きがいるのだが、ここには寄贈本も沢山あり、探せばきりがないほどだった。時間の限り、本を探すが、一つを読みだすときりがない。一部をコピーして退散する。

 

5月22日(火)
台北歴史散歩 圓山から二二八事件

翌日は圓山へ向かう。実は昨晩資料を漁っていたら、茶商公会に興味を持ってしまった。1915年に改組された公会の理事長は陳朝駿という人だったが、この人がどんな歴史を辿ったのか、なかなか資料が見付からなかった。すると、圓山駅の横には2010年に開かれた花博の跡地があり、その向こうに台北故事館という建物があることが分かった。そしてそこがなんと陳朝駿の別荘だというので、早々に行ってみることにしたわけだ。

 

MRT圓山駅を降りると、日差しはかなり強かった。これは歩くのは大変だと直感したが、周囲に遮るものはない。花博会場を横目に、広場を歩いていく。広場を越えて大きな道路を地下道で渡り、何とか出てきたところに、その建物は忽然と現れた。何とも台湾には似合わない洋風な、小さな館。別荘という程広くはない。

 

入場料を払って中に入ると、1階に陳朝駿に関する簡単な説明があり、ここが往時外国商人などを招いてパーティーや商談をした、いわゆるゲストハウスだったことが分かった。ただ彼が南洋華僑で、財を為した人物だとは分ったが、茶葉貿易についてはほとんど触れられてはなかった。

 

入口の人に聞いてみたが、詳しいことは分からない、むしろ公会の方が知っているだろうという、堂々巡りな話だった。2階はチャイナドレスの展示が行われており、陳氏とは関係なかったが、昨今チーパオも流行りだということで、その歴史的な変遷を見た。それが終わると何か資料が売っていないか見て回り、昔の地図を購入して、見学は終了した。

 

圓山駅に戻る途中、広場の端から登る所が見え、ちょっと寄り道した。そこには昔の石灯篭があり、ちょっとした日本時代の建物が残されていた。そうか、ここは台湾神社の一角だったのだ。台湾神社と言えば、今の圓山大飯店の場所に建てられていたということだが、その敷地は広かったのかもしれない。意外なところに意外なものがあるものだ。

 

更に進むと寺が見えてくる。臨済護国禅寺、この寺もいかにも日本的だな、と眺めていると、説明書きに日本統治時代初期に児玉源太郎が僧侶を招聘して建てたとある。台湾に残る日本時代の木造寺院、この寺はどんな変遷を経て、今日に至ったのだろうか。柱や廊下に日本が見え隠れする。

 

MRTに乗り、台大医院駅で下車。二二八和平公園に入る。ここには台北二二八紀念館がある。1947年に起こったこの事件、実は関係者の一人に茶商がいた、と聞いたので、何か展示されていないか、見に来たのだ。紀念館の建物も古いなと思っていたら、ガイドブックには旧NHK台北支局、と書かれている。

 

中に入ると、かなり充実した展示になっており、二二八事件がまだそう遠くない歴史なのだと分かる。私が探した人物、王添灯氏は、何と事件発生後に、国民党政府と折衝した際のリーダーであり、拘束されて、生死すら分からなくなってしまった人であった。王氏は日本統治時代、満州へ茶葉を売り、商売を大きくしていったが、その一方で民主化活動などもしており、実に興味深い人物だった。

 

紀念館の人に、王添灯氏についてもっと知りたいのだが、というと、紀念館の出した本を勧めてくれ、更には王氏の子孫の方までご紹介頂いてしまった。驚くような展開ではあるが、これもまた茶縁だろうか。王氏一族について、そしてその茶業について、これから勉強してみたい。

 

二二八事件に関する紀念館は実はもう一つあった。折角なので、そこにも行ってみようと思い、またMRTに乗り、中正紀念堂で降りて歩く。今日はよく歩いたなあ。もう日が西に傾いている。総督府の昔の建物が二二八国家紀念館になっていた。非常に立派な建物だったが、展示物は先ほどよりは多くはなく、いやかなり広い範囲をカバーしている、と言う感じだった。ここで出されている関連本を買いたかったが、既に売切れだった。それでも今日一日で事件についてはかなり理解が深まった。

 

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