ある日の埔里日記2017その5(5)突然坪林で製茶する

突然の坪林

黄さんに坪林の駅まで送ってもらい、台北へ引き返そうとしていた。台北駅では初めて台湾にやって来た静岡のS君と、台湾に仕事で来ているUさんとの待ち合わせがうまくいかずに悪戦苦闘していた。その様子をSNSでみていたので、何とか合流して、皆で南港へ行こうと考えた。

 

そこへ坪林の馮さんから連絡が入って来た。『今日は天気がいいので茶摘みが行われている。明日は雨の可能性もあるので、今日来てくれないか』というのだ。これには驚いた。確かにここ数日天気が悪く、お願いしていた製茶が出来るのか心配はしていた。だがまさかこんな展開になろうとは。

 

どうするか、今晩は茶工場に泊まりこむのにその用意は何もしていない。お土産は勿論、資料も全て部屋に置いて来てしまっている。これでも行くべきなのか。しかしもし明日茶摘みが無ければ製茶を見る、することは出来ない。結局製茶を優先するため、急いでUさんに連絡を入れ、S君も探して連れてきてもらうことにした。

 

新店から坪林へ行くバスは1時間に一本。ちょうど1時間待って彼らはなんとかやって来た。そしてバスに乗り込み、坪林へ向かう。Uさんの奥さんも一緒だが、何も持っていなのも一緒。申し訳ないが、何とも致し方ない。3時過ぎには坪林の祥泰茶荘に到着したが、やはり天気は良かった。

 

ところが馮君は悠々としている。茶作りするなら忙しい時間のはずだが、お茶など淹れてくれている。30分ぐらいして、どこからか連絡が入り、ようやく工場の方へ移動した。ここは以前、間違って製茶体験に参加してしまった場所なのでよく覚えている。我々が到着後、誰かが生葉を持ち込んできた。既に時刻は4時、日は西に傾き、日光萎凋のタイミングはギリギリだ。

 

いや、日光萎凋はなかった。そのまま室内に持ち込まれた茶葉は萎凋槽に放り込まれ、堆積されていく。それからは馮君の温度管理が始まり、いわゆる熱風萎凋が行われている。時々温度を見ながらかき混ぜている。S君も自分の機械を持ち込み、色々と調査をしている。2時間後には茶葉を笊に移す作業があった。この辺の手作業はかなりしんどい。ついでに攪拌作業も行われる。

 

夜7時ごろ、夕飯になる。労働の後の飯は旨い!と言っても私は殆ど何もしていない。麺と卵焼きだ。でもゆっくり食べている時間はない。かなり作業がせわしない。その後も断続的に攪拌、揺青が続き、かなり夜も更けていく。S君は『お茶を飲まないと眠れない』と言い、自分の茶を取り出して、台所で飲み始める。確かにお茶を飲むとホッとする。でも製茶している時に悠長にお茶を飲んでいる人などいるのだろうか。

 

一体どこで寝るのかと思っていると、何と茶作りをしているその部屋に寝袋が持ち込まれている。さすがにこの季節に寝袋かと思ったが、何と室内では空調が使われており、寝袋から出た頭が寒いのだ。風邪ひきそうだと思いながら、12時頃に一番乗りで寝入ったらしい。さすがやはり、どこでも寝られるタイプ。

 

10月26日(木)
製茶2日目

夜中12時に寝たのだが、午前3時に目覚ましが鳴る。ここでまた揺青の作業が始まる。茶葉を笊から揺青機に移し、機械を回したらまた茶葉を笊に戻すという何とも原始的な作業だ。ただ意外と力がいる。寝ぼけ眼でやる作業ではない。体がかなり温まる。そしてまた寝袋へ収まる。更に朝方トイレに起きる。その後はもう眠れなかった。でも6時にはまた作業が始まる。そういえばスマホの充電器だけはバックに入れておいたので、充電できてよかった。これからも何があるかわからないのだから、常に充電器は持ち歩くようにしよう。これがないと時間も分らず、連絡も取れず、大変なことになるのだ。

 

朝ご飯を食べ、バタバタ過ごしていると、馮君のお爺さんがやって来た。85歳、足が少し悪いので杖をついているが、元気だ。お爺さんはここに住んでいる。昔の話を聞くと、実に面白い。体の大きなその老人は、若い頃は自ら茶葉を担いで商売に精を出していたのだろうと見受けられた。

 

午前9時過ぎについに殺青が始まった。ここからは流れ作業で殺青された茶葉は揉捻され、その後乾燥する。この作業は人数がいた方がスムーズだった。結局3時間弱これが続き、一応の終息を見た。尚乾燥の機械はとてもユニークで子供の遊びのようで、リズミカルに茶葉を下へ落としていく。

 

軽く昼ご飯を頂いて作業は終了した。店に戻って、お茶を飲んでいると、トミーがやって来た。忙しい中、時間を作ってくれ、我々をもう一軒の茶工場に連れて行ってくれるというのだ。何とも有り難い。ただ近いと思っていたその場所は坪林の街から山道を車で20分以上入ったので驚いた。

 

こちらもちょうど夕方に茶葉が運び込まれ、熱風萎凋の最中だった。ここのオーナーも代替わりして、30歳ちょっとの若者兄弟が茶作りに励んでいた。機械設備はかなり新しく、量産する方向なのだろうか。最近いいお茶を作っていると評判だという。青農とも呼ばれる若手農業家、これからが楽しみだ。茶畑を見に行くと手で茶葉を摘んでいた。今やごく一部らしいが、機械摘みよりよい風景だ。

 

トミーの車で台北まで送ってもらった。取り敢えずS君の荷物を部屋に置き、4人で夕飯を食べに出る。腹が減っており、近くの餃子チェーン店に入った。S君は初の台湾で、昨日、今日とほぼ普通では味わえない体験をしており、今晩も焼き餃子中心。なかなか凄い台湾体験だ。

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