NHKテレビで中国語コラム『アジアで中国語を使ってみた』2014年1月号第10回『プーケット』

第10回『プーケット』

アジア屈指のビーチリゾート、タイのプーケット。島の西側を中心にいくつものビーチが並び、欧米やオーストラリア、アジア各地から多くの観光客を惹ひきつけています。最近はロシア人、韓国人、そして中国人観光客が大挙して押し寄せており、空港は満杯状態が続いています。今回はそんなプーケットの華人の歴史に迫ってみました。

プーケットの中心街、プーケットタウン。その中でもオールドタウンと呼ばれる一角は、華人が多く暮らす場所です。ただ100年を超えるその建物群は中華の雰囲気に洋風がミックスされた独特の建物でした。なぜこのような建物が建てられたのでしょうか。

プーケットに華人が本格的に移住してきたのは、19世紀。豊富な鉱物資源、特に錫すずの採掘を行う労働者として、主にマレーシア・ペナン島の福建系華人がやって来たといいます。鉱山経営に乗り出し、成功する華人も現れました。そ
して英国領だったペナン風の建築が作られたそうです。何となくここはタイではなくマレーシアかと思ってしまう謎が解けました。この辺りの歴史はオールドタウンにある泰華博物館で見ることができます。

オールドタウンには漢字の看板も多くみられ、また中国系の顔をした人々がたくさんいますが、実は意外なほどに中国語が通じません。レストランを営む、どう見ても中国系の60代の経営者に中国語で話しかけると流暢な英語が返ってきました。「私は既に第4世代で、先祖の故郷が福建省のどこにあるのかすら知りませんし、興味もありません。私はプーケット人です」とのこと。そこにいた若い店員は、一生懸命勉強しました、といったようなたどたどしい中国語で注文を取ってくれました。

最も有名なパトンビーチへ行くと、レストランの若者がやはり中国語で「最近は中国人観光客が多く、英語ができない人も多いため、こちらが中国語を覚えて対応している。中国人はたくさんお金を使ってくれるからありがたい」とビジネス上のメリットを強調していました。

「中国語話せます」と書かれた看板を出す薬屋で、女性が流暢な中国語を話していました。彼女は第3世代でしたが、両親はペナン出身で幼い頃から中国語を習っていました。「プーケットに住む華人で中国語が話せるのは2~3割でしょう。家では福建語を話している人もいますが、世代が下がるにつれて、タイ語になっています」と解説してくれました。彼女は薬屋のほか、得意の語学を生かして旅行案内業も始めたようです。

プーケットタウンで朝早くから繁盛しているお店がありました。74歳になるオーナーは、原籍が広東省の第4世代。第5世代の息子さんと「点心」を出すレストランを経営していました。「プーケットには多くの血が混ざっているんだ。も
う華人だなんて関係ないよ」とひと言。出てきた点心も味は良いのですが、そのスタイルは既に中国を離れていました。皆さんもビーチリゾートばかりではなく、情緒漂うプーケットタウンで過ごしてみてはいかがでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です