NHKテレビで中国語コラム『アジアで中国語を使ってみた』2013年10月号第7回『スリランカ』

第7回『スリランカ』

インドの南に浮かぶ島国、スリランカ。北海道より小さなこの島は2009年まで26年もの間、内戦が続いておりましたが、今は平和が戻ってきています。仏教遺跡、植民地時代の文化遺産、自然遺産など世界遺産を8つも抱えており、観光地としての魅力が満載で、主に欧米人に人気ですが、最近は日本人観光客も増えてきています。

スリランカ最大の都市コロンボを歩いていると、大きな中国料理のレストランを何軒も見かけ、中国人がたくさん来ていることが分かります。筆者がバンコクから乗ったフライトは実は北京から来ており、機内には中国人キャビンアテンダントも乗っていました。ただ中国から来る人は観光客ばかりではなく、最近急速に増えた中国政府の経済援助に伴って現地の工事現場に派遣される労働者などもおり、その中国語にも各地のなまりが感じられました。

コロンボで泊まった安宿には河南省からやって来た中国人商人が泊まっていました。彼らは英語がほとんどできないのに、果敢にも経済発展が見込まれる未開の市場へやってきました。スリランカはイギリス植民地時代の影響もあり、英語が話せる人はたくさんいますが、中国語は基本的に通じません。ホテルのロビーで偶然座っていた筆者、中国語が出来ると分かると、拝むように通訳の依頼をされ、ホテルとの交渉などに駆り出されてしまいました。まさかこんな所で中国語を使うとは。中国人商人のたくましさには脱帽でした。

市内の住宅街に「中国雑貨」と書かれた貼り紙が中国語で出ていたので寄ってみると、山東省からやって来た中国人女性が経営しており、中国食材などを売っていました。「コロンボに住む中国人はまだまだ多くはない。商売にはならないわ」と言いながら、遠い目で懐かしそうに中国語を使っていました。彼女は、故郷では日系企業に勤めていたといいます。

その彼女の紹介で訪れた近くの中国料理屋さん。コロンボに来て8年になる福建省出身の張さんが迎えてくれました。このお店には日本人駐在員もよく来るようですが、張さんは「日本人はギョーザとエビチリ、そしてチャーハンしか頼んでくれない。うちの店にはもっとうまいものがたくさんあるのに」と残念がり、数時間煮込んだ福建特製のスープなど、実においしい料理を出してくれ、筆者は大いに満足しました。

その張さん、中国語の会話の中になぜか時折、日本語の単語が混ざっていました。理由を聞くと、何と「1980年代の終わりごろは、東京浅草の天ぷら屋でバイトしていたんだ」と言うではありませんか。日本からはるかに離れたこのスリランカの地に、昔日本で働いていた中国人がレストランを経営している、これこそ中国人のダイナミズム、ではないでしょうか。

皆さんも一度スリランカへ世界遺産巡りの旅に出て、おいしいスリランカ料理を食べ、そしてそれに飽きたら当地の中国料理屋さんへ行ってみませんか。きっと日本では味わえないような深い趣のある中国料理に出会えることでしょう。

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