NHKテレビで中国語コラム『アジアで中国語を使ってみた』2013年9月号第6回『インド』

第6回『インド』

アジアで中国と並ぶ大国と言われ、人口が10億人を超える国インド。以前はバックパッカーが旅する国という印象がありましたが、近年はタージマハールなどを訪れる一般観光客がどんどん増えています。首都ニューデリーの中心街、コンノートプレースを歩いていると、お客を探すインド人ガイドなどがあの手この手で近づいてきます。筆者は日本人より中国人に見えるらしく、中国語で話しかけられることが多く、中国人観光客も着実に増えていることを実感します。

ニューデリーにはクラシックなタクシーが走っていて、思わず手を上げて乗り込みたくなる衝動に駆られます。実際に乗ってみるとインド人運転手がいきなり“你好!”と中国語で話しかけてきて、驚きました。聞けば「中国人もこういうタクシーに乗りたい人は多いが、英語が通じないので、こちらが中国語を勉強した」とのこと。彼が話せる中国語は「どこに行くのか」と、金額、そして“小心”(気をつけて)だけでしたが、十分に用が足りているようで、面白かったですね。ひげ面で大柄なオジサンが中国語を使うとどこかユーモラス。

中国人の観光客は増えていますが、実は「インドにはチャイナタウンがない」と言われています。デリーにもムンバイにも華人は多少住んでいますが、ひとかたまりとなって街を形成してはいません。唯一あると言われたコルカタ(旧カルカッタ)でも、街に漢字の看板はなかなか見つからず、ようやく見付けた郊外のタングラという街でも既に多くの華人が退去しており、ほとんど廃虚に見えました。

コルカタで生まれたある華人は「インドで商売するのは本当に難しいんだ。インド人と中国人はそもそも物の考え方がまるで違うし、歴史的に見ても隣国同士はいろいろあるから」と流ちょうな中国語で説明してくれました。近年、祖国の中国がこれだけ発展すれば、「インドで頑張らなくても」という気になるのもうなずけます。ただ、インドを逃げ出した華人が行く先は中国ではなく、同じ英連邦のオーストラリアやカナダ。そこで、インドで鍛えた商売手法で中国大陸からやって来る中国人移民相手に商売をする、と聞くと、「たくましいな」と思わず声を上げてしまいました。ちなみに「今の大陸中国人と我々華人はまったく考え方が違う。それはまるでインド人との違いのように大きい」とのことでした。

ところでインドの大都市には中国料理と書かれたレストランが多数存在しますが、その多くがインド人経営で華人の姿はあまり見られません。出てくる料理も野菜炒めがあんかけ風になっているなど、我々のイメージとちょっと違っていました。理由を聞くと「インド人はカレーのようにご飯に料理をかけて食べるのでドロッとした物が受け入れられやすい」のだとか。デリー在住日本人がよく行く日本料理店の人気メニューが「中華丼」であったことも笑ってしまいました。皆さんもインドでインド風中国料理にぜひトライされてはいかがでしょうか。

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