スリランカご縁の旅2014(9)キャンディ ホロスコープ

占い師

夕方スマから声がかかる。オートリキシャ―がやってきたので乗り込む。ちょうど雨は上がってきた。どこへ行くのかと思うと隣の村あたりの民家。何とこの家は占い師の家だという。ホロスコープ、私とは遠い存在だと思っていたが、興味津々で門を潜る。

意外にも出てきた当主は若い男性だった。2歳ぐらいの男の子が付いてきた。今回の占いの対象はスマの寺で見かける12歳の少年。彼は何らかの事情で寺に入ることを希望し、今は時々スマの教えを乞うていたが、今回正式に剃髪することになった。その髪の毛を切る日時を決めるため、やってきたのだという。

お坊さんが占い、などというと、日本では違和感があるが、ホロスコープは古代インドから非常に重んじられてきた星占いだという。スマは手元から紙を取り出し何かを告げる。少年の生年月日、そして生まれた曜日と時刻だという。日本では生年月日で占うという話がよくあるが、ここスリランカでは生まれた時間までが実に重要な要素となる。その為、病院の産婦人科の一番の仕事は『赤ちゃんが生まれた時刻、何分何秒までを正確に測ること』だというのだから、驚きである。私は自分が生まれた時刻を正確に知らないので、この時点でホロスコープは出来ないと諦める。

占い師は情報を聞いて、何やら本を取り出し、熱心に眺めている。そして1つの結論が出ると、それを紙に書いて渡す。『7月13日5時53分』と書かれたその時刻に、少年は剃髪することになった。事の成否は分からないが、何やら荘厳な物を見てしまったような気がする。

夜は早めにシャワーを浴びる。前回はお湯を沸かしてもらい、そのお湯を丁寧に使いながら、その大切さを体験したが、今回は湯沸かし器が備えられていて、お湯は自動的に出る筈だった。ところが壊れているのか、使い方が間違っているのか、一向にお湯が出ない。面倒なので水シャワーを浴びる。まあ世の中はこんなものだろう。

スマからモデムを借りてネットを繋ぐ。前回は接続にすら苦労したが、今回はスピードも上がっており、確実に機能向上している。静かな僧院の夜が、少し騒がしくなった気がした。

4月8日(火)学校の映画

寺は山の中にあり、かなり涼しい。特に夜は涼しいので、蚊帳があったが使わなかった。ところが昨晩はなぜか蚊が多かったようで、朝起きるとかなり刺されていた。私は思わず、飛んでいる蚊を叩きたくなったが、ここは僧院。そのような殺生は原則許されない。蚊は手で追い払うだけである。

日曜学校の隣には正式な小学校がある。今日はそこで生徒が映画を見る会があるというので、出掛けてみる。講堂には既に沢山の生徒が集まっており、映画も始まっていた。当然教育的な、また仏教関連の映画を見るとばかり思っていたが、何と上映したのは子供が主人公のコメディだった。魔法が使えるようになった少年が親の目を盗んで冒険に出る、そんなストーリーだが1時間半ぐらいの間、子供たちはずーっと大声でゲラゲラ笑っていた。

今の日本の学校でこのような映画上映は殆どないだろう。教育的見地や指導といった建前が求められ、何故それを見せるのか、が問われるはずだが、この学校では少なくとも『子供が楽しむ』ことを基準に映画を選んだに違いない。内容は別にして、子供たちも集中して見入り、健康的に笑う。

学校の事務室に招かれ、お茶が出された。先生に映画のことを聞くと『今日で学校は終了し、夏休みに入るから』だそうだ。そして『夏休みに入って喜んでいるのは生徒よりむしろ先生だ』という。生徒は家にいるより、学校に来る方が楽しいが、先生の負担は相当に大きいらしい。どこの国でも教育問題の原点は生徒よりも先生にある、ということだろうか。

空港へ

そして寺でランチを食べ、午後4時前には出発した。名残惜しかったが、スマは相当に忙しく、今日もシンガポールから来た友人とコロンボで会うため、私のフライトは午前2時だったが、少し早めに寺を出た。まあ空港まで5時間ぐらいかかるので、ちょうど良い、ということになった。

今日は快調に車が走る。途中でスマがサモサなどを買ってくれる。晩御飯の代わりにしろ、ということらしい。今は街道沿いにファーストフード系の店などができ始め、様子がかなり変わりつつある。我々からするときれいな店が増え、物を買うのも簡単になってきたが、果たして実情はどうだろうか。

なぜか今日は渋滞もなく、事故もなく、何と3時間で空港に着いてしまった。だがもう空港にいる以外仕方がないので、用事のあるスマと別れた。相変わらずあっさりした別れだった。空港でチェックインしようにも早過ぎた。何しろまだ7時間もある。空港内を一巡したがすぐに飽きる。どうやら私と同様の境遇の韓国人や中国語人が手持無沙汰に、椅子に座っている。スリランカはまだ時間が読めない国なのだ。行ける時に行っておかないで万が一乗り遅れそうになっても救済手段がない。

さすがスリランカ、と思わせるような紅茶屋が一軒あった。土産を買うだけかと思いきや、空港職員もここで茶を買い、その場で飲んでいる。1杯100pは高いが、紅茶は不味くない。

それにしても7時間は長すぎた。ネットも繋がらない。椅子に根が生えたと思う頃、ようやくチェックイン。それから空港内で更に2時間以上待った。ある意味、疲労はピークに達していたが、一人で寝込む勇気はない。最終的に搭乗し、あの寒いキャセイの機内で、爆睡した。翌朝バンコックに着くと、タイの正月、ソンクラーンが始まろうとしていた。

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