NHKテレビで中国語コラム『香港現地レポート』2012年8月号第5回『香港島暮らし』

第5回『香港島暮らし』

香港というと香港島と九龍半島先端の高層ビル群、そして煌びやかな夜景を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。確かに凝縮された近代都市というイメージが相応しいかもしれませんが、実は香港には230余りの島があり、自然豊かで昔ながらの生活がそこにはあるのです。

筆者は駐在員時代、香港島に住んでいましたが、今回の滞在ではこれまでと違う体験ができることもあり、敢えて香港島から25分フェリーに乗るラマ島に住んでみました。ラマ島は人口約6,000人、ランタオ島、香港島に次ぎ香港で3番目に大きな島です。島に二つあるフェリーターミナルを結ぶ道はハイキングコースとなっており、週末ともなれば、運動不足解消、自然との触れ合いを求めて多くの人が島を訪れ、歩いた後は安くて新鮮な海鮮料理を楽しむ光景がよく見られます。

島の特徴の一つは何と言っても自然が多いこと。ここは香港かと思うほど、多様な亜熱帯の木々や草花があちこちに見られます。そして何とこの島には原則普通車が走っていません。救急車など緊急車両はありますが、住人は徒歩か、自転車となります。また荷物を運ぶ専用車としてVVと呼ばれる村の車が走るのがユニークです。

住人も多様です。自然環境を愛する欧米人も多く住んでいますし、インド系、アフリカ系など人種もいろいろです。島の店では「普通話」も英語も大抵の所で通じます。香港島より遥かに国際的と言えましょう。日本人も数十人住んでおり、何とその中に昔一緒の職場で働いた女性がいたのには、世間の狭さを感じました。

住んでいるのは人ばかりではありません。都会では飼いにくい犬や猫などペットも多く見かけます。自然の中で伸び伸びと散歩する犬を見ると幸せだなと思えます。そういえば、ペットも時々香港島へお出かけするらしく、フェリーの前方2列はペット優先席になっているほどです。

筆者が住んだ場所は、香港の古い友人が育った実家。フェリーターミナルから徒歩20分以上かかりますが、何と目の前はキレイなビーチ。夕暮れには実に優雅に陽が沈んでいきます。しかしビーチの向こうに見えるのは火力発電所。こんな光景は香港らしいかもしれません。

勿論いいことばかりではありません。自然が多ければ虫も多く、結構格闘したりします。また暑い日ざしの中、ターミナルまで往復50分のハイキングはかなり堪えます。夜お酒を飲んで島へ帰るとタクシーに乗りたくなります。でもこの島の生活はある意味、人間の本質を突いており、エコや節電などの要素が満載です。ご興味あれば、是非一度訪ねてみてください。

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