福州お茶の原点を訪ねる2012(4)台湾政策の最前線平潭島

倉山区

午後は雨模様。だが、強引に車を出してもらい、川向こうの倉山区へ向かう。昨日鄭さんが「そこに日本領事館もあったぞ。今あるのはアメリカ領事館あとぐらいかな」と言っていたので、どんなところか見て見たかった。

古い街は小高い丘の上に横たわっていた。車を途中で降り、後は歩きに。古い建物が崩れかかっていたりする。学校の跡もあったが、改修中。かなり雰囲気の良い洋風建築。さすがに潰すことはなく、改修するらしい。

それにしても旧アメリカ領事館の建物は見付からない。何となくこの辺かと言うあたりで道を入ると、近所のおじさんが「何してるんだ、こんな所で」で迫って来た。思わず、領事館探している、と告げると、「それはここだ。でも今は会社の社宅だ」というではないか。そうか、もう長い間、民間人が住んでいるようだ。写真を撮り、早々に引き上げる。

更に進んで行くと、旧ロシア領事館であったらしい建物も、見付かった。ただ中には入れない。お屋敷のような場所だった。福州は歴史的にはかなり重要な場所ではあるが、その歴史を保存しようという感覚はあまりないようだ。これは残念なことだが、中国は基本的に歴史を重視しない。仕方がない。

帰りに川沿いを見ると立派な教会が見える。その横には高層マンションも顔を出す。この辺りが1860年代に茶葉を輸出した港らしいが、その面影は見付からない。そして古めかしい建物の1階は土産物屋になっており、風情が殺がれる。

夜は一人で歩き回る。毛沢東の立派な像がライトアップされている。お寺もライトアップされている。一番いいなと思ったのは、小さな川沿いの小さなレストラン。

6.   6日目(19日)   平潭島

翌日午前中はお休み。常に旅行中の私はたまに休まないともたない。そして午後、魏さんが車を出してくれ、平潭島へ向かう。先日皆さんと食事をしていると「今平潭島の開発が凄い」との話が出る。それは何だと聞くと、「聞くぐらいなら行って見ろ」ということになり、向かうことに。

空港に向かう道をまっ直ぐ行き、空港を過ぎると「この付近が福清だ」と同乗した若者が言う。そうか、ここがあの福清か。ここは日本を含めて海外移住者を多数出している街。私の知り合いの中国人でも最も多いのは福清人。今回の旅も実は福清ネットワークで支えられている。

福清を過ぎると、大きな橋が架かっていた。これが平潭島へ繋がる橋。ここも規模が大きい。そして橋を渡ると海辺を埋め立て、非常に大きな開発が行われている様子がはっきりと分かる。そう、ここが温家宝首相が「一日一億元を投入して開発する」と宣伝した平潭島なのである。

元々漁村中心だった平潭島はここ数年、台湾政策の最前線基地として位置づけられ、台湾企業誘致、台湾人の誘致が盛んに行われている。開発区の管理をする役人に台湾人を登用するとの話もあり、台湾政府は警戒しているが、台湾人には話題になっている。市内でもマンション建設が盛んで台湾人が購入する場合には優遇措置があるとか。

市内から少し離れた場所にあるフェリーターミナル、ただの漁村だった浜辺に大規模なターミナルが建設され、異彩を放つ。そして既に台中線が運行されており、2時間半で台湾へ行けるという。やはり近いのだ、台湾は。こういった台湾政策をついでに見れることも茶旅の面白味だろう。

8.   8日目(21日)  琉球館

今日はとうとう福州最後の日。魏さん達は武夷山に出張に行ってしまい、何となく取り残される。私も武夷山についていければ良かったのだが、ちょうど香港に戻る日に当たってしまい断念。

さてどうするか、ある人から「福州に琉球館があるので見た方が良い」との情報を得ていたのを思い出し、行って見る。だが、タクシーに乗り、調べた所在地を探すが見付からない。福州のかなり昔風の町並みが心地よく、その辺を歩いて探す。

ようやく見つかった琉球館、「柔遠駅」が正式名称のようだが、琉球館の通称で呼ばれていたらしい。この付近は本当に昔の街そのもので良い。近所の人々が訝しげに私を見る。それは、何と今日は休館日、中へ入ることは出来なかった。ご縁が無かった。

この琉球館は、明代に創設され、20世紀初頭まで存在したという。基本的には日本による琉球統治に反対した亡命琉球人の拠点であったようだ。また貿易の拠点としても機能した。恐らくは日清戦争後、日本が台湾を統治下に置いた頃、ここも実質的な機能が止まったと思われる。

従来の建物は既になく、最近再建されたきれいな建物が存在するだけ。日中友好などの碑が置かれているが、琉球は一体誰の領土か、考えさせられる。

福州、さようなら

午後は街中をぶらつく。晴れた日の午後は、空も青い。建物も高層ビルがちらほらある程度で、落ち着きがある。茶葉市場を訪ねる。先日行った所とは違い、街のど真ん中にあるが、何故か建物の一部が火災か何か焼失しており、人気もまばら。通りでは地下鉄工事も行われており、何だか寂しい。

シャングリラホテルまで歩く。このホテルの周辺には立派な店構えのお茶屋さんが並ぶ。殆どが高級な土産物屋さん、そして地元の人が外部の人を連れてくるお店。正直、ホンワカした雰囲気でもなく、あまりなじめない。スタッフ募集の看板が出ていたが、「店長年収10万元」などと出ていると、お茶屋はただの儲け機関かと残念に思う。

福州の空港までリムジンバスに乗る。25元。1時間弱で着く。20分に一本程度出ているので便利。空港でチェックインしようとしたが、国際線は時間にならないとゲートが開かず、待つ。国際空港ではあるものの、便数はそれほど多くない。ようやく中へ入り、出国審査を通る。

その先に魏さんの元泰の出店がある。そこでゆっくりお茶でも飲んでと思ったが、どうしてもメールチェックが必要になり、隣の喫茶店に移動。中国の空港はどこでも計ったように同じ料金(58元)の飲み物を買い、パスワードを受け取る。これは本当に高い。

既に暗くなった福州を飛び立つ。今回は魏さんにお世話になり、実に様々な体験が出来た。福建省のお茶というと武夷山やアモイなどはよく聞かれるが、実は福州が重要だということがよく分かった。またも茶縁に導かれ、百聞は一見に如かず、だった。

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