NHKテレビで中国語コラム『香港現地レポート』2012年9月号第6回『香港のお茶』

第6回『香港のお茶』

香港のお茶というと皆さん何を思い浮かべるでしょうか。とても香りのよいジャスミン茶、それとも茶色が濃く味わいの深いプーアール茶でしょうか。中には午後いただくアフタヌーンティーの紅茶を思い出す方もいるでしょう。いやアフタヌーンティーの場合、香港でのメインはふんだんに出てくるスコーンやケーキになるかもしれません。香港では英国式紅茶が多く飲まれていると思いがちですが、紅茶専門店は殆どありません。

実は香港人がいつ頃からお茶を飲んでいたのか尋ねても答えが見当たりません。またどんなお茶が好まれていたのかも資料があまりないようです。茶葉を売る店舗を開いて50年以上になる茶荘のオーナーたちに、しかたなくヒアリングしてみました。すると意外にも……。

ちなみに日本人は飲茶をお昼に食べる物と思っている人が多いようですが、伝統的には朝いただきます。広東省ではヤムチャ(飲茶)を『早茶』と呼んでいるほどです。香港に旅行に行った外国人が飲茶を食べに行くと多くの場合、お店の人はジャスミン茶かプーアール茶を勧めます。

ところが横で食べている地元の人のカップには別のお茶が入っていることが多いのです。この白茶と呼ばれる緑茶に似た微発酵のお茶が好まれる理由は、すっきりした味わいであることと値段が安いことではないでしょうか。今度もし香港でヤムチャに行く機会があったら、白茶の一種である寿眉茶を注文してみてください。きっと一目置かれますよ。

また潮州系、福建系の人々には自宅でお茶を飲む習慣はありましたが、焙煎の利いた濃い目の鉄観音などが好まれていたようで、茶荘でもこの手のお茶が長く売られています。今でも潮州料理店などでは、工夫茶と呼ばれる、小さな茶杯に濃くて少し苦いお茶が出されますので、一度味わってみるのも面白いかもしれません。

香港ではこれらのお茶以外にもさまざまなお茶が飲まれてきました。お茶ひとつとっても歴史が感じられます。ただ現在ではアメリカ系コーヒー店がチェーン展開するなど、多くの香港人のコーヒーを飲んでいる姿が、お茶の存在を脅かしています。ちなみに10年ほど前まで、香港には日本にあるような喫茶店が殆どなく、コーヒーはホテルのコーヒーショップに行かなければ飲めないと言われたほどでしたので、この変化には驚かされます。変わっていく香港と変わらぬ香港、やはり香港は継続的に見ていかないとついていけませんね。

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