NHKテレビで中国語コラム『香港現地レポート』2012年7月号第4回『香港の物価』

第4回『香港の物価』

「香港に住むのは大変でしょう、物価が高くて」、香港を知る多くの日本人からよくこんな言葉を掛けられますが、筆者の答えは「いえ、家賃さえなければ、それほど高くはありませんよ。食べ物などはむしろ日本より安いと感じます」と
いうものです。

広い広い中国大陸からみれば、まさに猫の額のような場所に700万人以上の人がひしめく街、香港。当然その不動産価格は高く、最近の統計では駐在員の家賃が世界一高い場所、にも輝いています。庶民は高層の古いアパートで、本当に狭い生活を余儀なくされています。家賃は東京よりも高く、住居の質も落ちる、というのが一般的な感覚です。

香港は世界の貿易港であり、国際金融センターの一つでもあり、投資マネーの往来も激しく、その不動産価格も世界情勢に左右される面があります。近年は中国経済の台頭によって、中国マネーが香港不動産にもドッと流れ込んできており、その価格を押し上げています。

実は為替レートが原因です。香港ドルは米ドルに実質的に連動するペッグ制を採用しています。最近は円高、ドル安が続いており、日本円は香港ドルに対してもここ3年で20〜30%高くなっていますので、日本円換算で考えると実際の値上がり感があまりありません。

同じことが中国大陸から来る人にも言えます。筆者が香港に駐在していた2000年代の前半、香港ドルは人民元より数%高かったのですが、現在では人民元の方が20%程度高い状況となってしまったのです。昔は香港に買い物に来る中国人と言えば、高級ブランド品を買う富裕層のイメージでしたが、今では日用雑貨が大陸より安く買えるケースもあり、広東省などから毎週、香港のスーパーへ日常の買い物に来る人が急増しています。

一方香港ドルで給料をもらう平均的な香港人の生活は物価上昇をまともに受け、厳しくなっています。以前は広東省にセカンドハウスを買い、週末はそこで過ごすなど、羨ましい生活を送っていた人たちが筆者の部下にもいましたが、今では「大陸は高くて、ほとんど行っていない」と答えています。

いずれにしても他のアジア諸国同様、香港の物価は上がっています。上がっていない国は日本ぐらいではないでしょうか。円高は悪い面ばかりではありません。香港への旅行を検討してみてはいかがでしょうか。ただ、ホテルは安くありませんが。

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