シベリア鉄道で茶旅する(33)ようやくたどり着いたホテルでスイートルームへ

 次に何とかたどり着いた宿は完全なバックパッカー宿だった。ビルの3階、聞かなければ絶対に分らない場所にあった。入っていくと気持ちの良い若者が、きれいな英語で対応してくれた。お客もヨーロッパの若者ばかりだった。リビングで皆が楽しそうにネットをしている。ここならいいな、と思ったが、空いているはずの3人部屋はあまりにも小さく我々おじさん3人が泊まるのは無理だった。

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それからだいぶ歩いた。歩き始めてから2時間も放浪しただろうか。私はもう疲れ果て、どこでもいいから泊まりましょうよ、という気分だったが、2人は慣れているので、何のことはない、という風情で次に向かって行った。暖かいとは言っても零下のモスクワの夜10時に、おじさん3人が荷物を持ってフラフラしている、周囲からどう見られただろうか。

 

もうどこをどう歩いたのか分らない。大きな通りへ出て、ビルの中の宿を探す。そもそもモスクワのアパートは1階に鍵がかかっており、住人以外は入れない仕組みが多い。そこを入っていく人に付いて入っていくのだから怖い。そしてS氏は3階だ、と言ってエレベーターで昇ったが、すぐに降りてきた。『駄目だ、文字が読めないので、どの部屋か分らない』またすごすごと出ていく。私はもうこの作業が限界であることを悟っていた。だがNさんは『バックパッカーは1ドル下げるために3時間歩くのは当たり前です』と言って意に介さない。

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私はそんなことは正直したこともないので、もうご免被りたい。何とか立派そうなホテルを見付けてそこへ入る。だがやはりツインしかない。しかもルームレートは5000㍔。2部屋取って税さを込みにすると10000㍔を越えた。私はもうそれでもいいと言ったが、Nさんはここでネットを接続して、また一人で探しに行った。そして戻ってきて、『あまりに汚いので諦めた』という。S氏が『そろそろ決めようか』というので、それならいっそ明日のアポに都合が良い場所へ移動してそこのホテルにしましょうと言ってみる。

 

流石に夜も11時、タクシーで移動した。ワルシャワホテルはオクチャープリスカヤ駅の角にあった。かなり古いホテルだった。祈るような気持でフロントへ行ったが、残念ながら、先ほどのホテルと状況はあまり変わらなかった。しかしもう動く気はない。他の2人も同意してくれたので、今晩の宿はここに決まった。何とモスクワの空港に着いてから5時間以上が経過していた。

 

今回は明日チェックアウトするNさんを一人部屋、私とS氏が同じ部屋となった。部屋はそれほど広くはない。シャワーを浴びて、さっさと寝たかったが、夕飯すら食べていなので、夜中の12時に外へ出た。閉まっている店も多かったが、1軒のカフェが開いていた。食べたい物はなかったが、なぜかセブンアップが飲みたくなる。疲れはある意味でピークに来ていた。食欲はなく、水分だけを欲しがった。ここで頼んだ紅茶はロシアで初めて、ティバッグではなくリーフがポットに入ってやってきた。やはりモスクワ、シベリアとは違う。

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3月22日(火)
スイートルームに移動

翌朝は朝食が付いていたので、ホテルで取る。天井が高く、なんとも立派な食堂だった。ジュースを飲んで、焼いたパンと目玉焼きを食べ、コーヒーで締める、いわゆるホテルのビュッフェの朝食であるが、何だかそれが嬉しい。パンとサラミだけだと腹はくちるが、どうしても寂しさが残る。人間、気持ちの問題は大きいということだ。

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食後、フロントへ行き、今日の部屋の有無を尋ねると、『昨晩より安い部屋はある』とのことで部屋を移動することにしたが、念のためネットで確認するとネット予約の方が更に安かったので、一度部屋に帰って予約してから、またフロントへ行く。フロントの若い男性は親切にも、『朝でもチェックインできますよ』と言ってくれたので、新しい部屋の鍵をもらい、すぐに荷物を移動させた。

 

確かに昨晩の部屋より狭かったが、なぜか入り口以外にドアがあり、そこが開いていた。覗いてみると、それは続きの部屋に繋がっており、かなり大きな居間のようだった。奥に机があり、ソファーもあった。インスタントコーヒーと電気ポットの用意まである。恐らくは客室担当が閉め忘れたのだろう。S氏は『取り敢えず開いているから使ってみよう』と言い、奥の机で原稿を書き始めた。これは完全にスイートルーム状態だった。確かこのホテル、各階にお茶が飲める部屋が1つずつあったが、この部屋は元々それではないのか。何かの都合で外のドアではなく、内側のドアを開けていたために、我々の部屋と繋がったのだろう。

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