シベリア鉄道で茶旅する2016(23)モスクワまでの長い道のり

 夜中にエカテリンブルグという大きな駅を通過したが気が付かなかった。昔はここから東はシベリアだったという。午前7時頃、ペルミという駅に停まった頃には、ぼっと起きだして、アップルジュースを飲む。地球の歩き方を買って来たのだが、何と大ボケで、ロシア全般編を買ってしまっていた。これにはイルクーツクもバイカル湖も載っておらず、シベリアでは使えなかった。なぜだろうかと悩んでいると、何ともう一つシベリア編『シベリア&シベリア鉄道とサハリン』があるとわかったが、後の祭り。今回買った物はモスクワ以降で活躍してもらおう。それにしてもなんだかな。中身も見ずに買ってしまうとは。

 

外は雪だった。これぞシベリア鉄道、雪の白樺並木、だった。ぽつぽつと家が見えてくる。恐らくはウラル山脈を越えて、モスクワに近づいている。気持ちが少し高鳴る。だがその家も雪に埋もれていた。ウラルを越えればヨーロッパだというが、その雰囲気はみじんもない。この辺ではモスクワとの時差が2時間に縮小していた。

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シベリア鉄道には3つのルートがあるらしい。モスクワ – ウラジオストクを結ぶ本線の他、先日乗ってきた北京からモンゴル経由のルートをモンゴル鉄道、そして中国東北部を経由する東清鉄道もある。更には第2シベリア鉄道として、バイカル-アムール鉄道(バム鉄道)というのまであり、今回シベリア鉄道に乗ったと自慢しても、その一部に過ぎないことに愕然とする。正直鉄道オタクでもない私にもう次回はない、と思いたい。

 

昼に近い朝ご飯は買っておいたパンを食べる。このパン、中味は甘かった。それに加えてビスケット。ロシアはビスケットが美味しい。これと紅茶で充実した朝食になる。午前11時頃、バレジノ駅に停まり、少しずつ乗客が降りていく。駅でもパンなどを持って売っている売り子が出てきた。段々モスクワが近くなってきているような気がするが、実際にはもう一晩寝なければならい。きつい。

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昼過ぎに、どうしても一度は食堂車でご飯を食べて、その写真を撮ろうということになり、昨日と同様、重い扉を押し開けて、食堂車に向かった。相変わらず、端っこにあるこの車両にお客はいなかった。そしてメニューは高かった。しかもシベリア鉄道らしいメニューを何とか探して注文するも、できないものが多かった。このお客の数では仕方がない。材料の調達も出来ていないのだろう。

 

結局バイカル湖の魚など、一人が一品ずつ注文してみたが、出てきた料理の量の少なさに愕然とした。味は悪くはなかったが、これでは誰も食べない訳だ。皆で適当につつきながら、かなりわびしい食事となってしまった。夏の観光シーズンなら、もう少し何とかなるのだろうが、それでも腹一杯食べたら、いくらかかるのだろうか。まあ食堂車で優雅に食事をするのは金持ちだけなのだろう。我々は退散せざるを得ない存在なのだ。

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午後はもう呆けて暮らすしかなかった。何もする気にはなれないし、寝ることさえ、苦痛だった。兎に角早く前へ進み、モスクワに着いてほしい、と願うだけだった。窓の外を見ると、家が多く見えるところがあり、もう都市が近いかなと思うと、また雪の大草原になる。そんなことの繰り返しだった。午後3時頃、キーロフ駅に停まる。夕方にはコンパートメントのドアを閉めて、S氏とNさんはちびりちびり始める。周囲のロシア人はもう出来上がっている人もいた。既にスマホもチャージ不足で使用できなくなっており、私にはやることが全くなかった。

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暗くなった頃、どこかの駅に着き、久しぶりにホームへ降りる。駅舎内にカフェがあったので、何か温かいものでも食べられるかと思ったが、ピロシキなどパンを売っているだけだった。結局夕飯は車内で、残りものを中心に食べる。何といっても明日の早朝にはモスクワに着く。そうすれば、シャワーも浴びられるし、食事も自由に取れるのだ。

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だがS氏は『モスクワはホテルも高いし、何しろ分り難い街だ』という。駅も主要なものだけで8つもあるらしい。『まあ、モスクワはいいかな』というので、私は初めてのモスクワなので、赤の広場ぐらいは行きたい、と主張してみたが、『ムルマンスクからの帰りをモスクワ経由にして、観光すればよい』という話になり、何だか雲行きが怪しくなる。

 

そして何となくもやもやして気分のまま、だらだらと寝入る。時差も分らなくなっており、目覚ましもかけられない。車掌がいるし、終点なので、降りられないことはないだろう、と荷造りもせずに寝る。すると明け方、ガタットいう音がして列車が停まった。車掌が突然、降りろ、という感じでやってくる。何ともあっけなくモスクワに到着した。

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