シベリア鉄道で茶旅する2016(24)モスクワ滞在2時間半

 3月18日(金)
8.モスクワ
泊まらない

63時間の列車旅が終わり、午前4時台にモスクワのヤスラフスキー駅に降り立った。思ったほど寒くはない。やはり首都、飾り窓が見える立派な駅舎だった。雰囲気も完全にヨーロッパ。ようやくロシアに来た、という実感が沸いた。やはりシベリアはある種のアジアだった。乗客はそそくさと出口へ向かうが、我々はルーティーンである切符売り場を探した。それは2階にあったが、朝の5時前に切符を買う人などいる訳もなく、夜勤の若い女性が欠伸していた。

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S氏はすぐにそこに切り込み、サンクトぺテルブルク行きの切符の有無を聞き出す。相手は英語がほとんどできず、不慣れでもあったので手間取ったが、何と2時間半後の7時半発の切符があるという。だが、この窓口はクレジットカードが使えなかった。他の窓口には係員はいない。我々はルーブルを如何に調達するかで、色々と策を練っていた。私はキャプタで両替したルーブルがあるので使えるが、それで皆の分も払うと精算が面倒になるので、カードも併用してバランスをとっていた。

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Nさんが近くのATMに走り、キャッシングでルーブルを調達して、切符を購入した。何とこれでモスクワ滞在時間は2時間半となってしまう。63時間も乗ってきて、モスクワに泊まらない。私の旅では全く考えられないシナリオだったが、流れに任せるしかない。それが私のシナリオだった。しかし夜明け前のモスクワ、どこへ動くことも出来なかった。唯一の救いは、サンクト行の列車が出るレニングラード駅は、我々のいるヤスラフスキー駅の目の前にあることぐらいだった。サンクトの昔の名前はレニングラードだから、この駅発なのだろう。立派なドーム型の建物を抜けて外へ出た。

 

流石は首都、夜明け前でも車が走り、タクシーの運転手は盛んに声を掛けてきた。一応ライセンスを持っているようでそれを見せながらやってくるが、それほどしつこくはない。それにしても、向こうに見える駅のライトアップは実に見事だった。思わず写真を撮っていると、車にひかれそうになる。この光景もヨーロッパそのものの印象。これまで100時間も走ってきた、シベリアとは根本的に国が違っていた。

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レニングラード駅は既に人で混雑していた。サンクト行の列車は6時台から運行があり、かなりの頻度で走っていた。モスクワには駅が沢山あると言っても、この駅がモスクワの玄関口、という印象を受けた。取り敢えず2階に上がり、カフェを探す。きれいなカフェがあったので入ったが、シベリア駅前のカフェとは全く料金も異なり、置いてあるものも欧風だった。皆がコーヒーを飲み、おしゃれなパンやサンドイッチを食べている。私もそんな朝食を食べてみたが、シベリアでボルシチ、ピロシキを食べた時の、2倍の料金だった。このカフェではネットも繋がり、久しぶりにメールチェックなども行った。既に世の中から隔絶されており、孤島から生還したような気分だった。

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このカフェで休んだのち、駅の探検をした。63時間の列車の旅では疲れもあったが、何より運動不足だった。更にここから4時間、また列車に乗るのだから、少しは歩こうと考える。ただ私は荷物が重く、思うようには歩けない。Nさんはまず切符売場へ行き、サンクトから最終目的地、ムルマンスクまでの列車の有無を確認していた。これが一番大事。茶葉の道の終点はサンクトだが、我々の旅のゴールは、そのはるか先、北緯68度50分にあるムルマンスクという港町だったのだ。窓口の係員もさっきの不慣れな女性ではなく、ベテランだったのだが、なぜかムルマンスク行きの切符はない、というのだ。また暗雲が立ち込めるが、こうなればサンクトに行って聞くしかない。

 

駅の地下には、大きなコインロッカーがあった。これまでは荷物預け所で有人対応だったが、ここで無人に変わった。ロシア語しかないので、使い方には不安があったが、今回は使わなかったので、不便かどうかは分らない。ドリンクも自動販売機が設置されており、人件費が高いことを物語っていた。携帯シムの課金もしたかったが、ショップも見当たらず、どうしてよいか分らずに、そのままサンクトへ行き、考えることにした。

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7時前には改札を通り、ホームへ向かった。きちんとした荷物検査もあり、乗客が多いのでかなり混雑していた。ホームへ行くと、既に立派な車体の列車が入線していた。これはまさに新幹線だった。停まっていた列車は我々が乗る1台前のもので、少しして満員の乗客を乗せて出発していった。もう列車に乗るのはこりごりだ、と思っていた私だが、こんな列車なら乗ってみても良いかと思えるものだった。むしろ乗るのが楽しみになってきたと言ったら、怒られそうだったが、そんな気分転換がないと頭がおかしくなりそうだったのだろう。

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