シベリア鉄道で茶旅する2016(19)エニセイ川の強風を肌で感じる

思い付きで、橋を渡ってみることにした。橋の袂では風はほとんど感じられず、日差しもあり、春の予感だったのだが、橋の上を歩き始めると、これは大きな間違いだったことを知る。ものすごい風が吹き荒れているのだ。Nさんが橋から乗り出して、写真を撮ろうとしていたが、あわや転落しそうに見えるぐらい、体が揺れていた。S氏はまっしぐらに歩いているが、その足元は完全に雪が融けており、水浸しだった。ここを歩いていくのはかなりの難儀。後悔したが、もう遅かった。しかもこの橋、かなり長い。2㎞近くあったのではないか。

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ここで初めて気が付く。茶葉を運んだブリヤート人は当然この風の強さも、春先の雪融けも全て頭に入っていた。彼らがなぜ冬を選んだのか、そしてなぜ川を使って運ぶことが少なかったのか。現場に立てば、何となく理解できることだが、机の上の資料を眺めても思いつくものではない。兎に角風を避け、水を避け、本当につらい思いをして、橋を渡った。橋を渡り終えるとまた橋がある。ここでちょうど2つの川が合流する。バスが沢山通っていく。歩いているのは我々だけ。

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シベリア街道

なんでこんな困難な散策をしたのか。それはS氏がネット検索で探してきた、シベリア街道という名の道を見てみようという気持ちだった。シベリア街道とは何か。しかとは分らないが、シベリア鉄道ができるまでのイルクーツクからモスクワへの道だったと思われ、ということは、それはすなわち茶葉の道、万路茶路だったのではないか、ということだ。基本的には囚人となったものがシベリアに流されるときに歩む道、という方が分りやすいのかもしれない。

 

橋を渡り切ると、道が2つに分かれていた。実に歩きにくいほど、雪が溶けており、水たまりに足を踏み込んでしまい、かなり濡れた。右の方に歩き出すと、小さな市場があり、その中には茶も売られていたが、殆どが紅茶のティバッグ。ほんの少しだけ、中国産の茶葉が売られていたが、漢方の生薬などと一緒に並んでいた。買う人がいるのだろうか。じゃがいもをバケツに詰めて売っている男性もいる。干した魚が並んでいるのは、シベリアらしい風景かもしれない。

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しかしシベリア街道がどこにあるのかは全くつかめなかった。手掛かりはS氏がプリントしてきたブログのコピー。そこにあるシベリア街道を記念するモニュメントを探すが、見付からない。道行く人に写真を示したが、全員が首を振る。中に『あっちかも』などと指を指す人がいたので、橋を渡ってきた道と反対の方まで歩いて見る。こちらは確かに直線で広い道であり、如何にもシベリア街道らしいが、どうみても最近作られた道にしか思えない。ただこの辺は川沿いに道があったから、このあたりを馬ぞりが走った可能性はある。兎に角文字が読めない、言葉が通じないと、本当に何もできない。

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疲れたのでお茶でも飲もうかと思ったが、カフェすらない。店があっても閉まっている。まだまだこの辺は冬なのだろうか、それとも経済低迷による影響なのだろうか。仕方なく、宿まで戻ろうと思ったが、今度はバスに乗ることができない。どれが駅まで行くのか分らず、その辺の乗客に聞いても要領を得ない。また歩いて橋を渡る悪夢は避けたいと思い、何とか白タクを探して、乗り込む。駅というロシア語はついにマスターしたようだ。

 

駅まで乗せてもらい、スーパーがあれば買い物をしたいと思ったが、これも見付からない。疲れたので、また駅前のカフェに入り、お茶を飲む。それから駅周辺を歩き、結局駅横の別のカフェで夕食をとろうということになる。カフェとバーが併設されており、S氏はバーで軽く飲んで食べたい、私は酒が要らない、など要望が分れていたので、食べ物を買って、部屋に戻って食べることにした。ロシアでは惣菜を買って、家で食べることも多いようだった。何だか久しぶりに豪華な食事をしている気分になる。やはり列車内ではなく、地面が揺れない場所で食べるのがよい。

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3月15日(火)
再び博物館へ

夜は暖かい部屋で緊張感もなく、眠ることができた。これは何よりだった。しかも今日も列車にならなくてよい、というだけで心が晴れてしまうのは、すでに心が病んでいるからだろうか。今朝はまず駅へ行き(すでに駅に泊まっているのだが)、携帯のシムカードの入金をしようと試みる。イルクーツクでは機械で入金でしたのだが、またすぐに停止してしまった。その原因を突き止めたいと思い、駅のショップで聞いてみたのだが、またもや言葉の厚い壁に跳ね返された。

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店員とは言葉は全く通じず、我々が知りたいことはおろか、入金したいという意思すら伝えるのが困難で、英語が片言出来る客がサポートしてくれ、何とか入金は出来た。ただそれもどこかに電話を掛けたり、携帯を何度もいじったりと、簡単なことではなかった。何がどうなっているのか全く分からない。なぜか1回に300㍔ずつ消えていく。

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