シベリア鉄道で茶旅する2016(14)ナウシキのバザー

 実は教会と反対側の方には集合住宅も存在しており、やはり国境対策は行われていた。先ほど案内してくれた博物館の若者も、このあたりに住んでいるらしい。当然ここに住むからには政府からの補助なども出ているであろう。そのままこの付近で唯一のスーパーに入ってみる。S氏はすぐに酒コーナーに行き、ビールとウオッカを物色。つまみに加えて、明日の列車旅に備えて、パンやビスケット、カップ麺も購入していた。

 

私はお茶コーナーに行ってみたが、インドやスリランカ、ケニア産紅茶のティバッグばかりが目に付く。フレーバーティも多い。この辺も飲料習慣は既にロシアなのだった。その中に埋もれるように、中国産磚茶を発見した。そのパッケージはモンゴルで売られているものと全く同じだったが、あとで比較してみると、形体が若干違っていた。これが何を意味するのかは分からない。博物館で聞いた時も『今やキャプタで磚茶を飲む人などいない』と言われていたので、これは何のために売られており、誰が買うのか、実に興味深かったが、見張っている訳にも行かず、調査は断念した。

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そしてスーパーの横にある、この付近で唯一のカフェに入る。夕方5時台でまだ明るく、お客はいない。カフェのいいところは、食べ物を実際に見て、指さしで注文できることと聞いていたが、棚には食べ物がなく、ここではメニューを見て注文する形式になっていた。ところがメニューはロシア語のみで、全く読めない。いや、何とか想像して、ボルシチやピロシキを解読していく。ただ我々の知っているメニューなどたかが知れており、Nさんが中心となり、取り敢えず注文した。ボルシチは美味しかったので、お替りした。1杯、50㍔、75円は安い。それにパンが付いている。お茶はレモンティを頼む。

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夕暮れのキャプタを歩いて帰る。何ともいい雰囲気だった。そして3日ぶりの暑いシャワーをゆっくりと浴びる。寒いので特に汗などかいている訳ではないが、当然ながら気持ちがよい。夜もスペースにゆとりがあるので、各々気に入った場所でゆっくりと過ごす。周囲には全く音がなく、静けさが漂う。他に泊まり客がいるとも思えない。このままずっとここでリラックスしていたい、もう列車には乗りたくない、という衝動に駆られる。だが明日からはまた激しい列車旅になる。

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3月12日(土)
ナウシキへ

朝はゆっくり目覚める。そして散歩に出たが、やはりかなり寒いので、一応足ホカロンを使ってみたが、それでも長くは歩けなかった。家々があるあたりに行ってみたが、国境に近づける道は見付からなかった。各家で買われている犬がけたたましく吠えてくる。やはり最低限の防御態勢は整えられているということだろうか。反対にある茶貿易の跡の方にももう一度足を運んだが、こちらでも犬にほえられて逃げ出す。やはり暖かい室内が良いということで、宿へ帰った。

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宿でタクシーを呼んでくれるというので、午前11時にチェックアウトして車に乗り込んだ。運転手の顔立ちは中国系ではないかと思われたが、言葉は通じなかった。ここから駅のあるナウシキまで約30㎞、1時間あれば行けるらしい。料金は1000㍔。カフェの食事の値段からすればそれなりに高いが、円換算では決して高くはない。車はすぐに街を離れ、森林の中を走っていく。雪は道路脇に避けられているものの、舗装された道路はかなり凍結しており、またアップダウンもあり、その中を結構なスピードを出すので怖かった。車は殆ど走っていない。

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僅か30分ほどで、街が見えてきた。ここがナウシキらしい。本当に小さな街で、建物も多くはない。駅前で車を降りたが、列車が来るまでまだ2時間以上あった。まずは昼飯でも食べようかと思ったが、駅前に食堂などが全く見えない。中国なら必ず何かはあるはずなのだが、ここはロシアだった。荷物を預けて街を散策しようと思ったが、荷物預け所は開いていなかった。S氏は雪の中、荷物を持って歩き始めた。私は大きな荷物を引いて続くが、置いていかれる。雪と氷、そして所々氷が解けており、滑ることこの上ない。危険な逃避行のようだった。

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駅前のバザー

駅前の公園では馬が飼われていた。何となく冬のシベリアらしい雰囲気が出ていてよかったが、やはり寒さは厳しい。零下10度ぐらいだろうか。その公園の向こうでは何かが行われているのが見える。近づいていくと、そこは教会で、バザーが行われていた。家族が自宅で作ってきたクッキーやパン、ケーキなどをテーブルに並べて販売していた。何とも素朴な、パーティーのような会だった。そこに訳の分からない日本人が3人紛れ込んでしまったのだから、さぞや驚いたことだろうが、皆さん、実に温かく迎えてくれた。腹も減っていたので、売っている物を適当に買う。

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値段は15㍔とか20㍔とか極めて安価。私は50㍔札しか持っていなかったが、相手もお釣りがなく、50㍔分のお菓子をもらい、Nさんと分けて食べた。予想以上に美味しい。家庭の味だった。何よりもそこのお母さんと子供たちの笑顔が嬉しい。教会前にできたひな壇では即席合唱団の歌が始まった。寒いナウシキではあるが、何とも暖かいムードが流れていた。子供がチヤイを売っていたので注文した。ティバッグながらちゃんとミルクも淹れてくれた。サモワールのようなものが持ち込まれ、湯が沸かされていた。

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