スリランカ紅茶の買付茶旅2016(2)朝7時から始まる買付

4時頃には飽きてしまい、またレストランへ上がっていく。まだお掃除は完全に終わっておらず、おばさんが『また来たのか?』と嫌な顔をしたが、お構いなしに席に着いてしまった。そしてまたティバッグ紅茶を頼む。ボーっと1時間ぐらい座っていると、今度は腰が痛くなり、座っているのが辛くなる。そしてまた1階へ降りていく。そして到着ボードを何となく眺めると、なんと東京から来るランカエアーが1時間ほど遅延となっている。えー、まだ待たなければいけないのか。驚きで、ちょっと声も出ない。

その間にも中国や中東から続々とフライトが到着し始めた。今日正月休みで中国人がドーッと来るかと思っていたが、それほど多くは見受けられない。私の横に立っていたスリランカ人ガイドに聞いてみてみても『中国人の数はいつもと変わらないよ』という。その横にいた日本人が声を掛けてきた。旅行会社の人で誰かを探していたらしい。それは人違いだと日本語でいうと、さらにその向こうにいた女性が、急に私の名前を呼んだ。ここに知り合いなどいないのでビックリした。彼女は今回クマさんと一緒に茶園巡りをするのだと言い始めた。今回他に同行者がいることも全く知らなかった。これもまた私の茶旅らしくてよいかと思う。

思わず、『紅茶好きの方ですか?』と聞くと、曖昧に笑う。後でわかったことだが、このYさん、スリランカとは30年以上のかかわりがあり、日本スリランカ友好協会を仕切っている重鎮であるらしい。更にはスリランカ紅茶のお店も日本に持っており、紅茶好きどころか、スリランカをもっともよく知る、有名な日本人だったのだ。そんなことも何も知らずにとんでもなく、失礼してしまった。とにかく退屈だった時間が、Yさんの出現で、かなり楽しくなった。何しろ彼女のところへはガイドさんなどスリランカ人が何人も挨拶に来る。その情報から、『誰がいるスリランカに来るか』も分ってしまう。そして茶商兼今回のガイド、ルワンさんも何でも知っており、頼もしい限りだ。というより、私が知らないだけで、後の3人はスリランカと紅茶に非常に詳しいということだったのだ。

成田からのフライトは結局20分程度の遅れで飛んできた。有り難い。そして人が降りてきたが、クマさんはなかなか登場しない。その前に日本人の団体がやってきたが、女性たちがYさんの方に皆で挨拶に来る。日本紅茶協会の研修旅行らいしい。Yさんの顔の広さが出てきた。更にはランカエアーのCAまでがやってきた。日本語のできる彼女はよく東京線に搭乗していて仲良くなったという。この人は一体なにものなのだろうか、なんとも不思議だ。そんなことを考え始めた頃、ようやく重そうな荷物を押してクマさんが、苦笑いしながら出てきた。ここまで約7時間、やはり長かったが、まずは合流できて本当によかった。

2.キャンディ  車でキャンディへ

クマさんはルアンさんの先導で、そのまま荷物を押して車に乗り込んだ。さてどこへ行くんだろうか?私はある程度の予定はメールでもらっていたが、実はほとんど見ていなかった。全てをクマさんに任せるつもりでいた。それが楽だし、クマさんの仕事の邪魔にならないことを第一に考えていた。まあ、どこへ行こうと私にとって新鮮であることは間違いがない。今晩は空港からキャンディまで走り、そこで泊まるという。キャンディまでは3時間ぐらいだろうか。体調はたぶん問題ないとは思うが、一応心配ではあった。

午後8時半頃、レストランで夕飯を取ることになった。だがそこはかなり薄暗いバー。スリランカにもこんな店が増えているという。食事がなかなか出てこない。私は全く食べずに、ミルクティだけを注文したが、それもなかなか出てこない。それはそうだろう、バーでミルクティを頼む方がどうかしている、という感じだった。しかし仕方がない。出てきたティを啜ったが、味は今一つだった。

夜の暗い、うねった山道を車は走っていく。10時半過ぎには車が止まり、今晩のホテルに到着した。思ったよりはずいぶん早かった。どうやらキャンディ郊外の街道沿いのホテルのようだ。きれいな部屋に案内される。熱いシャワーを浴びる。さすがスリランカ、部屋にはちゃんとお茶を淹れるためにポットやカップが備えられていた。紅茶を淹れて飲むと落ち着いた。疲れはあったが、少し興奮状態で、寝にくい。PCとカメラの充電を行うために、アダプターを差そうとしたが、うまく入らない。仕方なく、スタッフに声を掛けて、差し込んでもらった。ネットは簡単に繋がっており、スマホでも繋がっていた。寝たのは午前1時ごろになっていた。

2月8日(月) キャンディの茶園

6時半にホテルをチェックアウトして、出発した。今回訪問する最初の茶園に朝7時15分には到着した。こんなに早い時間に行くとは思わなかったので、まずは驚く。買付とはこんなに朝が早いのか。そして更には行った場所にも驚いた。それは2年前、前回ご縁で行った茶園の帰りに何気なく寄ったパンレイのRAXAWAだったのだ。前回来た時は突然茶園に踏み込み、茶工場を見たいとお願いしたこともあり、その時の従業員の対応は今一つで、お茶も飲めず、正直あまり良い印象は持っていなかった。

だが今回は事前にアレンジされており、オーナーがちゃんと朝から待っていた。ここはプライベート企業であり、父親が始めた茶園を若い息子が継いでいる。そしてテースティングの準備として、数種類の茶葉が置かれ、茶が淹れられていく。そこにクマさんが次々にテースティングしていく。そのスピードは恐ろしく速い。口に含んでは吐いていく。それを数回繰り返し、『OK。分った』と言って、テースティングは呆気なく終了した。それからルワンさん、Yさん、そしてオーナーもテースティングし、どれがよいかを話している。

その間に私も飲ませてもらった。正直私がよいと思うものとクマさんがよいと言ったものは結構違っていた。やはり私には紅茶は分らないんだな、と思ってしまったが、後で聞くと、『紅茶が美味しいかどうかというより、売れるかどうかが決め手だ』という。当たり前と言えば当たり前のことだが、ようは商売でやる場合は、お客さんに好まれるかどうか、価格が妥当かどうか、どうやって飲ませるか、で決まるようだ。紅茶好きは商売ができない、とも言われているようだ。美味しい物だけを買ってきても在庫が増えるだけらしい。自己満足が一番よくないという。とても勉強になる話だ。ここでペコダストというのを初めて飲んだが、面白い味だった。この旅では、『ダスト』の美味さに気が付くことが多かった。これも自分の幅を広げる実によい機会だった。

この茶園は標高1500m近くにあると思われ、ミディアムグローンのキャンディというイメージからは少し遠い。CTCとリーフの両方を生産しており、プライベートらしく、独自色を出そうと試みている。オーナーの父も出てきて、様子を眺めている。実質的には彼がまだオーナーなのだろう。一代でこれだけの工場を開いたのだから、それはやり手なのだろうが、実に温和な笑顔が印象的だった。

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