台湾南部ぶらり茶旅2015(5)天目茶碗展と突然の阿里山

天目茶碗展

ジャックが連れて行きたいところがあるという。何処かと思ったら、嘉義の博物館だった。何で、と思いながら見てみると、え、天目茶碗展が開かれている。駐車スペースがなくて、かなり探し回り、ようやく中へ入った。その一角に10月17日-12月13日の長い期間に渡り、8名の陶芸家の作品が展示されていた。その構成は、日本人が3名、台湾人2名、中国人2名、フランス人1名からなっていた。天目茶碗がこんなに国際的とは初めて知って驚く。

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こんなに多くの人が現在でも天目茶碗を作っていると。それもフランス人までが。会場の広々とした空間に、天目の展示がある。天目は中国が発祥、私は15年前に福建省武夷山郊外で、その天目の官窯跡を偶然見たことがあったが、当時はまだ昔の名残か、茶碗の破片、失敗作などが散乱しており、茶碗作りが実に生々しく感じられたのを覚えている。その時も、電炉で現代の天目を作っている工房に行ったことはあったが、それは土産物程度のしろものだった。

 

ところが今、目の前に展示されているそれは、大きさも様々、色彩にも凝っており、その鮮やかさは何とも素晴らしい。日本からも林恭助(美濃焼)、桶谷寧(宇治)、木村盛康(清水焼)、という3名の工芸家の名前がみえる。中でも木村の作品に目を惹かれた。渋い感じではあるが、茶碗の大きさもちょうど良い。

 

正直茶には興味があっても飲む道具には、ほとんど興味のない私が、なぜか目を奪われてしまった。しかも聞くと、彼は既に80歳、それでいて、大胆な構図、斬新なデザイン、色使い。全く新しいと感じさせるのはすごい!ジャックが付き合いのある嘉義出身の羅森豪の作品は、大きな茶碗の中に森羅万象が表現されるなど、独特の宇宙観を持っていた。また茶葉をモチーフにした、自然を感じさせる作品にも不思議な感覚があった。今度はもう少し天目茶話に注目しよう。

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途中から博物館の学芸員が入ってきて、ジャックと話をはじめた、聞いていると、学芸員の方がジャックに一方的に沢山の質問をしており、彼はそれに1つずつ丁寧に答えていた。それで分かったのは、この展示会が、ジャック主導で開催されたものであること、一般の学芸員には、天目に対する見識はなく、お客さんに説明するため、急ごしらえで知識を蓄えているようだった。

 3.隙頂

突然阿里山へ

博物館を出ると、ジャックが『行こう』という。どこへ行くのと聞くと『あんたの話を聞いていると、いる場所はここではなく、阿里山だろう』というのだ。これから車で連れて行ってくれるのだと。阿里山には既に5年は上っていない。しかも過去に行った場所はいつも同じところであり、ちょっとは新しい展開に期待して、折角なので、お願いすることにした。

 

まずは少し郊外にある彼の自宅に立ち寄った。実に静かでゆったりとした一角に、立派な家があり、更には別棟に、お茶を飲むための彼の部屋まで作られていた。私と違って彼がリタイア―したのは、これだけの資産を持ち、安泰の上での道楽への道であることも分かってきた。次回はここを訪ねて、もっとゆっくり、彼の考え方、生き方について聞いてみたいと思う。

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道端で急に車が停まり、ジャックが日本で言う、天津甘栗を買った。こちらでもなぜか『天津糖炒栗子』と天津が付いている。天津に甘栗はない、と昔から言われており、これは日本からの受け売りらしい。因みに売っていた女性はジャックによれば、『大陸から嫁に来たのだろう』とのこと。言葉の発音ですぐに分かるらしい。私には福建あたりの人の発音は区別できないこともあるが。

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それから懐かしい阿里山への道を上って行った。以前はいつも駅前からバスに乗り、1時間半かけて石棹というところまで行っていたが、今回はどこへ行くのだろう。ジャックの車はスーッと上って行き、1時間ぐらいで到着して、さっさとお茶屋へ入っていく。お馴染のようで、おばさんが迎えてくれ、土産の天津甘栗を出す。ここは一体どこは、なんだろうか?

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30分ぐらい話していたジャックが『じゃあ、俺は帰るよ。明日はバスで帰るといい』と言い残して、何ともあっさり去ってしまった。何と私はここに置いていかれ、1泊することになった。有難いのだが、この急展開、どうなんだろうか、などと考えても仕方がない。このお茶屋さん、もちろんお茶農家で、製茶機械などもある。2階は、簡易な宿泊施設になっており、民宿である。ただ最近は知り合いなどにしか、開放していないので、看板などは出していないらしい。

 

まあ茶旅的には、こんな旅もあってよい。道端を見ると、下に茶畑が広がっていたので、早々に散歩に出た。表示を見て、ここが隙頂という地名であること、海抜が1200-1300m程度であることなどが分かる。とても気持ち良い茶畑に沿って下って行ったが、それ以上、特に何もないので引き返してきた。

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