梅ヶ島茶旅2015(2)古民家で囲炉裏を囲んで

古民家で囲炉裏を囲み

そして言われた通り、道路脇の小道を上がり、今日の宿を探す。古民家、と聞いていたが、それらしい家は見付からない。近所で聞いて何とか探し当てたが、そこは普通の、しかし大きな民家。庭が広く、車が何台も停まっていた。入口すらよく分からず、縁側から声を掛けた。玄関はかなりの年代物、開け方も分からない。中へ入ると、目の前には圧倒されるほどの高さの天井が。そして骨董品であると言える農作業の道具が一式、天井裏に放置されているのが丸見えだ。これは何とも迫力がある。凄い、一体ここは何だろうか。博物館のようにも見える。

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Sさんから紹介されたKさんが出てきて挨拶した。私はここがどんなところで、Kさんが誰かも全く分かっていなかった。Kさんも私が誰だから分からない。ただSさんから『土曜日はツアーに参加するには時間的に間に合わないので、古民家に混ざって泊まっておいて』と言われただけである。そんなご縁、これも茶縁で1泊する、実に興味深い出会いである。

 

混ざって泊まる、とはなにか?そこには梅ヶ島の魅力を映像化するためクリエーターの人々が数人、週末の活動として来て、ミーティングしていた。私は明日彼らの車で現場へ連れて行ってもらうことになっている。見ず知らずの人のお世話になる、海外ではよくあることだが、日本ではどうなんだろうか。まあ、いつものように流れに任せるしかないと素直に従う。

 

古民家では夕飯の準備が進んでいた。土間には実に大きな囲炉裏がある。この家は数十年前、長野から移築されたとのことだが、庄屋さんの家だったのだろうか。その後家主は、青少年の宿泊施設として、ここを使っていたという。確かに大きな家で、何と温泉まで引かれていた。何十人かが泊まれるようになっている。今は高齢となった家主の代わりに、東京在住のOさんがここを借り受け、月に1₋2回、やってくる。週末にKさんや知り合いもやって来て一緒に使っているのだという。何とも優雅な週末の過ごし方に見えるが、どうだろうか。

 

囲炉裏では女性が二人で、折り紙をしていた。何を織っているのか、と聞くと、箸置きとの答え。彼女たちは、週末をここで過ごそうとやってきたKさんの知り合いらしい。特に目的があってやってくるわけではなく、ここが気に入ったので、何となく時々フラフラと来るらしい。その気持ち、ここに座っていると少しずつ分かってきた。何ともゆったりとした時間が、ゆっくりと流れて行く。猟師だという中年男性がお子さんとやってきた。地元との交流もあるようだ。古時計が時刻を告げる。その音が実に大きい。昔自分の家にもあったな、と思い出す。

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若者が二人やってきた。胸板が非常に厚い。ラグビー部出身だそうで、一人は高校でラグビー部の監督をしているという。その二人はKさんに命じられ、囲炉裏で火を熾し始めた。これは決して簡単な作業ではない。この家の囲炉裏は巨大であり、今晩は大人数で夕飯を食べるため、三か所に火を熾している。種火を熾し、薪をくべる。焦りは禁物、じっくり時間を掛けて、吹いていく。少しずつ赤い火が見えてくると、何だかホンワカして来るのが分かる。

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囲炉裏を囲んで夕飯が始まった。BBQ!この付近でも鹿が多く、その被害に困っているようだ。先ほどの猟師さんが鹿を撃っているが、その後の処理に困っている。Oさんはその鹿肉を使い、ソーセージを作り始めたという。鹿肉ソーセージ、そして豚肉ソーセージ、鹿と豚を半々に入れたミックスの三種類が登場し、囲炉裏で焼いて食べた。どれが美味しかったかというと、鹿肉。さっぱりした感じが好評だった。ただ地元の人たちは、鹿臭い、と言って食べないそうだ。

 

この夕食を囲んでいるメンバーも実に多彩だった。一体何人いるんだろうか。こんなに大勢でワイワイやりながらご飯を食べたのは久しぶりだった。クリエーターメンバーは皆、それなりの経歴を持ち、活躍している人々だった。発想がユニーク、話も面白かった。週末だけここへやってくるという夫婦も、この梅ヶ島を愛しており、4年かけて自分で家を建てたという。

 

こんなに人が集まるのは、OさんやKさんの人柄だろうか。地元には色々としがらみがある。その辺を打開できるのは外部の人間、ということで、過疎化が進む地元と協力しながら、何かが前へ進みそうである。言葉で色々と発するより、ここへ来て、そこで触れて、何かをやってみること、それが大事だと教えられる。他人の目を気にすることは必要ではあるが、まずは自分のために何か行動を起こしてみれば、それが他にも連鎖するということ。

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宴会は延々と続く。私は眠くなってきたので寝る準備をする。古民家は寒い、と聞いていたのだが、囲炉裏のせいか、暖かい。私の部屋は2階に一人。ここは普段使っていないようで、何だかお化けが出そうな雰囲気だった。階段も急で怖い。夜中にトイレに起き、真っ暗な階段を降りていくのは何とも言えない恐ろしさ。皆さんは上から下へ布団を運んで、1階の広間で雑魚寝するらしい。それもまた面白そうだが。風呂に入る順番を待つうちに、何と寝込んでしまった。折角の温泉は次回に譲ることとなる。残念。だが寝心地は良かった。

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