茶旅 静岡を歩く2022(2)登呂遺跡からヴォーリズ住宅へ

そこから緩い上り坂を10分ぐらい上ると、県立美術館前。道路脇が公園のようになっており小さな茶畑があった。ここにやぶきた生みの親、杉山彦三郎が選抜した13種の茶品種が植わっていた。近くにやぶきたの原木もあると聞いたが、それは見付けることができなかった。

その上に県立図書館があり、そこで茶業史関連の資料に当たる。さすが静岡、資料はたくさんあるが、調べるべき人物、事柄も無数にあるので、いくらやっても終わらない。今日はかなり歩いて疲れたので、適当なところでコピーを取り、引き揚げる。帰りは終点新静岡駅まで行き、そこから宿へ。

今日の宿泊先は、出来て2年も経っていないきれいなホテル。一言でいえばコロナ禍でスタートしており、最近人気がある宿のセールスポイントはほぼ取り入れている。中でも驚いたのは、夜の軽食として、カレーが無料で食べられたこと。歩き疲れて外へ出たくない私にとって、大浴場でゆったりと足を延ばし、そのまま夕飯を食べられるのは何とも有難い。

しかもそのカレー、具は殆どないが味は良く、ご飯は自分で盛るので十分な一食となる。サラダも付いている優れモノ。何だかインド山中の三食付き宿を思い出した。ドリンクもセルフサービスで飲み放題。ドーミーインも夜泣きラーメンではなく、夕飯ラーメンにしてほしいと思う。

3月15日(火)登呂遺跡からヴォーリズ住宅へ

朝起きるとまずは大浴場に浸かる。天気も良く、下界が良く見えるのも良い。何とも極楽。この宿を推薦してくれた人が『ここの朝食は並のレストランより良い』と言っていたが、確かに料理の内容は充実していて、これまで旅してきたホテルの食事より良いと感じられた。やはりこの宿、他のチェーンホテルの良いところを多く取り込み、その少し上を行き、それなりの料金を設定しているから、かなり人気がある。

今日は比較的余裕があるので、多く歩くことにした。天気予報は雨だったが、それは完全に外れた。ここ静岡には登呂遺跡があった。登呂遺跡といえば、私が小学校の教科書で出会った初めての弥生時代だ。その印象はかなり強かったが、静岡市内にあるとは思っていなかった。しかも宿から歩いて30₋40分なので、散歩にちょうど良かった。

ほぼ住宅街という道を歩き疲れた頃、登呂遺跡が見えてきた。思ったより規模はかなり小さい。高床式建築が見えたが、その数も多くない。ほとんどが何もない平原だ。博物館があると書かれていたが、分からず通り過ぎた。行きつ戻りつしてようやく中に入ったが、展示物もさほど多くはない。唯一気にかかったのは、木製道具。これはどうやって作ったのだろうか。今まで真剣に考えたことがなかったが、今は木地師を調べているからとても興味が沸く。

外では幼稚園児が運動会?に興じていた。その横を通り過ぎて、海の方に向かって歩いていく。ほぼ海まで出たところに、もう一つの目的地、旧マッケンジー邸があった。1918年にアーウィン商会日本支店に赴任し、日本茶のアメリカ向け輸出に尽力したダンカン・マッケンジーが1940年に建てた洋館が残っていた。

建築設計はあのメンソレータムを日本に持ち込んだウィリアム・メレル・ヴォーリズ。ヴォーリズは英語教師として滋賀の近江八幡に赴任したが、宣教師、実業家、建築家など多彩な顔を持つ男で、建築の分野でも日本各地で相当数の洋館を建てており、先日は京都の実業家邸宅がテレビで紹介されていた。ここに訪ねてくる人もヴォーリズ建築を見に来る人が多いという。

1940年といえば戦争前夜。なぜそんな時期に家を建てたのだろうか。戦争をして欲しくない、その願いからだろうか。結局1943年にマッケンジー夫妻はアメリカに強制送還されるが、戦後又この地に戻る。そしてダンカン亡き後も妻エミリーはここに留まり、赤十字など福祉活動に尽力し、静岡市の名誉市民になる。1972年彼女が日本を離れる際、この邸宅は市に寄贈され、今日まで維持されていた。その記念碑が庭にあった。

海風が強い場合、高波が来た場合など、どうするのかと思うほど、海に近い場所。そして反対側には富士山がきれいに見える。喘息持ちのダンカンがここを選んだらしいが、彼がどんな茶貿易をしていたのか、興味ある所だ。もう少し調べてみたいと思う。茶業者の邸宅なのに、有名なのは建築家と社会福祉家の妻というのは、ちょっと残念な気がしないでもない。

帰りも歩いて静岡駅を越え、また駿府城公園に行く。昨日見つけられなかった杉山彦三郎の像をどうしても見付けたくて寄り道した。今日は公園スタッフもいたので、場所はすぐに分かった。行ってみると4人の像が並んでおり、一番立派な髭の人が杉山であった。やぶきた生みの親、杉山彦三郎については、これから調べを開始したい。

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