高知茶旅2020(2)板垣退助から高知の紅茶へ

川の方へ出たので、板垣退助の屋敷跡などへ足を延ばしてみる。これも自転車のお陰で、行動範囲はグーンと広がる。今屋敷はなく、記念碑だけが建っている。そのまま川沿いを走っていくと、『板垣退助帰朝記念碑』などもある。これは1886年に板垣がヨーロッパ視察から帰国した際の記念に作られたものらしい。確かこの洋行の前に岐阜で襲われ、あの名台詞を吐いた?そしてこの洋行が自由民権運動の転機だったとどこかで読んだ記憶がある。土佐も実に様々な人材を輩出している。それにしても天気が良くて気持ちが良い。StayHomeだけでは、体に良くないとつくづく感じる。

街中に戻り、はりまや橋を過ぎる。その小川に沿って走ると、すぐに立志社の石碑に出くわす。立志社は1874年、板垣らによって作られた自由民権運動の中心的政治団体。ここで多くの若者が自由と人権のために立ち上がった。更に行くと、高野寺という寺の前に板垣退助生誕の地の碑がある。良くも悪くも高知は板垣退助が多い。

それから後藤象二郎生誕の地や武市瑞山殉節の地などを巡る。更に高知城の入り口付近を歩き、板垣退助像を見付ける。だがそれよりも、ひっそりと木の陰に隠れていた野村茂久馬という像が気に掛かる。全く知らない名前だが、吉田茂が文字を書いている。一体誰だろうか。

一まわりまわって疲れたので、案内所に自転車を返した。すると例の係員の女性が『平尾さんのお墓の場所も大体分かりました。ただ山の中で分かり難いです』と言って、ネットからコピーした資料を渡され、もう完全に脱帽だった。平尾喜寿については、『どんな字を書きますか』と全く知らない様子であったものが、『高知県出身者を知らないのは恥だ』といった案内所魂?に火を点けてしまったようで、自由民権運動記念館にも問い合わせてくれ、色々と説明してくれた。コロナで人が少なく、若干時間に余裕があったのかもしれないが、ここまでやってくれる案内所は初めてで、称賛に値する。

ようやく宿にチェックインして休む。何しろ運動不足に慣れない自転車を漕いだのだから、疲労は相当なものだった。前回来た時は無かった新しい宿で居心地は悪くない。それでも夕方また出掛けた。何と20年ぶりに知り合いのSさんと会うためだった。Sさんとは香港の時に一緒の時期に駐在員をしていた知り合い、その後も2-3度は会っていたが、21世紀に入って会うのは初めてだろう。

指定されたホテルのロビーで再会したSさん。貫禄は付いていたがすぐに分かった。長年勤めた会社を辞め、転職して高知に来たのだという。Sさんに伴われて、高知の美味しい魚介類を堪能し、すっかりご馳走になってしまった。何と二人ともお酒を飲まないので、ひたすら魚や貝を焼き、口に入れた。

昔の仲間の話題などもたくさん出てきて、楽しいひと時を過ごしたが、話の中で驚いたのは、さっき見た野村茂久馬が『土佐の交通王』と呼ばれた地元の名士で、何とSさんは彼が創業した会社で働いていたことだった。岩崎弥太郎は世界に飛び出したが、野村は高知のことだけを考えて、高知のために尽くした人だという。

10月22日(木)奇跡的に残っていた茶工場を発見

翌日起きると外は雨だった。昨日の晴天が嘘のようだ。今日はついに持木壮造の子孫の方に会うことになっていた。既にFBでは1年以上交流を続けてきたYさん。わざわざ雨の中、ホテルまで車で迎えに来てくれた。何とも申し訳ない。そして取り敢えず彼の勤める地元大学の研究室へ向かう。そこでYさんのお母様から預かったという貴重な写真などを見せて頂いた。中にはこんなものが残っていたのかと驚くような写真もあり、目の前がくらくらした。

Yさんの曽祖父、持木壮造さんは台湾中部の魚池でアッサム種紅茶を最初に作り始めた日本人の一人として、これまで調べてきたのだが、持木家については今日で一気に様々なことが氷解した。実際に魚池で茶作りの陣頭指揮を執ったのは壮造さんの長男で、Yさんのおじいさんに当たる持木亨さんだった。Yさん自身もその昔台湾に行き、先祖の偉業(921地震で倒壊する前の持木茶工場)を写真に収めている。

Yさんは台湾との繋がりを大切に思い、自らの学生にも高知と台湾の歴史を伝えたいと考えていた。そして今回、戦前は台湾で紅茶を作っていたおじいさんが戦後の引き揚げで最終的になぜ高知に来たのか、その理由に触れて驚いてしまっていた。何と森永紅茶はここ高知でも作られており、その指揮を執ったのはおじいさんだったという歴史があったのだ。

更に付け加えるならば、日本の国産紅茶発祥の地は、明治初期の高知(多田元吉によるインド風紅茶の製造)だったともいえるので、その辺を地元でもう少し認識してもらえたら、なぜ戦後高知で森永が紅茶を作ったのかが分かるだろう。

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