奈良、吉野、熊野、堺茶旅2020(3)吉野 天日干し番茶の里へ

お店は不定期開店のようだったが、事前に連絡していたので、快く迎え入れられた。泊めてもらっているN夫妻も誘っていたが、『営業中』に表示がなかったので、中に入って来られなかったようで申し訳ない。このN夫妻もこちらには初めてきたようだが、この業界の人間であり、お互いのことは既に知っており、紹介する必要もなかった。

それからとても心地よい店内で、何種類ものお茶を出して頂き、中国の茶旅など、取り留めなく話し続けた。Y夫妻も中国留学組であり、中国関係の話、そして中国茶のディープな話に際限はなかった。話はポンポン飛んでいき、N夫妻は目を白黒させていたに違いない。今度夫妻でゆっくりお店を再訪して、陶芸の話などをしてもらいたい。

コロナでイベントなども出来ず、お客さんの往来も少ないというが、既に確固たる地盤を築き、良質の茶を提供しているので、被害は少ないかもしれない。私もこの春、心樹庵セレクトのお茶を初めて注文し、配布を受けた。その多彩な、個性的な茶を一体どのようにして探してくるのか興味があり、今日具体的な話を聞いてみた。その一端を理解したが、その努力は他人にはとても難しい領域だと言わざるを得ない。まさにオンリーワン。

あっという間に3時間ほどが過ぎ、話し足りないと思いながらお別れした。Nさんの車でおうちに帰り、今日も泊めて頂いた。夜は京都から戻ったUさんも合流し、近所の温泉でゆっくりお湯に浸かった。そしてそこの夕飯、名物海鮮丼を食べた。奈良の山の中で美味しい海鮮丼、素晴らしい。

一度家に帰ったが今日はまだ終わらない。水を汲みに行くというので、また車で出掛けた。やはりお茶にはよい水が必要。近所の山中に『弘法の霊水』と書かれた水汲み場があった。そこはまた大阪の夜景が見えるスポットにもなっており、思いの外車が停まっていて驚いた。デートスポットらしい。家へ戻ると昨晩の反省を踏まえて早めに就寝する。

10月13日(火)吉野の天日干し番茶へ

朝、Uさんが京都で買ってきてくれたお団子を食べた。デザートはメロン。朝から満腹で出発する。いよいよ今日は吉野に向かう。奈良には何度か来たと言っても、吉野に行くのは初めてで、歴史好きにはちょっとワクワクする。先ずは近くの駅でMさんと待ち合わせ。Mさんとは大阪セミナーのお知り合いでお誘いしたのだが、Yさん、Uさん共にお茶イベントで既に顔見知りとか。やはりこの世界はかなり狭い。

私はMさんの車に乗せてもらい、吉野へ向かった。途中の話題は昨年来の客家についてとなる。昨年12月Mさんの導きで客家専門家に会うことができ、特に台湾客家への関心は高まっていた。またMさんの今後の事業計画、コロナ禍の対応などを聞いていると、とても面白い。初めは高速道路のようなところをスピーディに進み、そこから山道に入っていく。1時間ちょっとで目的地付近に到着した。

吉野郡大淀町、そこは山間の村で、何軒かの家が見えた。Mさんは急な狭い坂を難なく上り、皆に驚かれる。彼は昔配送ドライバーをしており、このような状況には慣れているというのだが、実に器用な人だ。登りきると目の前にかなり立派な家があった。今日は嘉兵衛本舗というお店を訪ねることになっていたが、お店というよりご自宅に行ってしまった。最近建て替えたとのことで、とても豪華な家で天日干し番茶を頂く。

こちらはお父さんと三姉妹が運営しているとのことで、今回ご連絡を取った広報担当の次女の方が丁寧に対応してくれた。天日干し番茶、今では作られることも少ない伝統的なお茶に惹かれてここまで来た。約170年前、森本嘉兵衛という人が作り始めて6代が経っているという。最盛期は300軒あった茶農家も現在は5軒が残るのみとなったと聞くとやはり寂しい。

お茶の話だけではなく、過疎化による地域の活性化などにも話題が及ぶ。Mさんなどは真剣に過疎地域への転居を考えており、話が弾む。お茶を通じてこのような交流が実際に行われるのを見ると、色々と展望が開けていくような気がした。

例年であればちょうど今頃、茶葉を天日干しする番茶作りの作業が行われているというが、今年は天候の関係で、天気は良かったのにまだ始まっておらず、結局見ることはできなかった。代わりに茶畑に案内してもらい、見学する。周囲を木々に囲まれた狭い土地に茶樹が植わっており、茶葉が元気に伸びていた。また工場の製茶機械なども拝見した。昔の日本の山中はどこでも番茶を作っていたのだろうと思わせる風景だった。

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